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第22話 もう二度と、離れたくなかった

「——ル……げほっ、ルベル!」 「しゃべんな。喉痛いだろ。もう大丈夫だから、安心して」  言いながらルベルは短剣を突き立てるように縄を切り落とすと、窓に向かって手を振り下ろした。  ガシャアンと大きな音を立てて砕け飛んだ窓から外の空気が入り込んで、室内の火がさらに燃え上がった。  その炎の明るさに身を縮めると、ルベルはリュノの体の下に腕を通して、「行くよ」とささやいた。  自由になったばかりの腕を、慌ててルベルの首に回して、しがみつく。  立ち上がりざま、ルベルは、そのまま窓に向かって駆け出し、叫んだ。   「どいてください!——降ります!」   「先に言え!」  下から怒鳴り声が聞こえて、誰かがいることがわかって。  それでも、ルベルにしがみつく腕の力を抜くことはできなかった。  浮遊感が、怖かったんじゃない。  ほっとして、安心できて、  自分を包み込んでくれるルベルの魔力から、  もう二度と、離れたくなかった。    それからしばらく。  リュノは管理課の預かりとなって、扉の先の「部屋」で療養することとなった。  リュノを捕えていたレナウトが、騎士団が追っていた失踪事件の黒幕であったこと。  家に火を放つ直前の、レナウトの笑みに嫌な予感を抱いたルベルだけが屋敷内の捜索にあたったことから、  リュノは火の手がまわりきるまで発見されず、ギリギリのところでようやく救助されたこと。    レナウトの証言から、失踪事件の捜査に協力してさえいなければ、変な誤解もなく、事件に巻き込まれることもなかっただろうことから、  本部はリュノの心の傷を案じ、療養の間は騎士たちに預けることを認めなかった。  あれきり、ルベルに会うこともなく、顔の見えない管理課の医務官、介助師に世話をされて、  事件から三日目には、リュノはもう飽き飽きとしていた。  確かに、煙を吸ったせいで喉は荒れていたし、飲まされた薬のせいで次の日は朦朧としていたけれど、体はすぐに元気になった。  ルベルに会わせてもらえなくて、お礼を言うこともできなくて、もどかしかった。    食事を運んできた介助師に、声をかける。 「俺は、この部屋を出られませんか?」  窓の外はいい天気で、初夏を迎えつつある外には花々の咲く草原が広がっていた。  介助師は少し黙って、それから管理官に聞いてみると請け負ってくれた。  一人部屋に残されて、トレイごと窓際に運んで、外を眺めながら食事をいただく。  見咎めるような人はどこにもいなくて、多少行儀が悪くてもかまわなかった。  

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