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第24話 夢を、見ていたかった
外に出ることは許されなかったけれど、その日から、部屋を整えるメイドが、部屋に野草を飾ってくれるようになった。
白くふわふわとした花をつけるナツユキソウ。
リュノが生まれた時にも、このナツユキソウが草原の周りを揺れていて、その様子から、母はリュノに、雪 の名前をくれた。
窓の外からは、五月にしては涼やかな風が吹き込んでいて、
この場所は、リュノが生まれた村のように、標高の高いところなのかもしれないと想像した。
あのあと、管理官は今までにわかっている事件のことを教えてくれて、
リュノがただの巻き込まれた捜査協力者と断定されたら、リュノがここから解放されることを教えてくれた。
レナウトが屋敷に火をつけたせいで証拠の多くが焼かれており、
またリュノがただ一人、想定外の男性被害者だったので、とりわけ慎重に捜査されているのだと言われた。
「あの日は。……次の仕事を探すために、子爵家のお屋敷を訪ねていたんです」
リュノがそう言うと、管理官は、なぜ今、次の仕事を探そうとしたのかを尋ねた。
もう日々の中で、ルベルに出くわしてしまう状況に耐えられなかったからだ。
だけど、ウルラとして番いの交渉を控えた今、自分と同じ男性のことを好きだから、とは言えなくて。
リュノは一瞬口をつぐんだ。
「——ウルラになれば。……私から、騎士団への恩返しができます。
恩を返せれば、あとは今の場所を、次なる子供に早く引き渡したくて……」
指を組み合わせて、親指をもじもじとすり合わせながら口にした理由に、管理官は少し黙って、それからゆっくりと頷いた。
「……なるほど。その理由は、騎士たちには言えないことですね」
確かに。
リュノがウルラになることは、公にできない事実だった。
「もう少し、現場での証拠固めを進めてもらいましょう。
いずれにせよ、バークレイさんは被害者だと目されていますが、
薬の密輸経路を考える参謀としてあまりに適格すぎますから、安易に無関係だと断じることもできないようなのですよ」
「——そんな」
犯人の逮捕にも協力したし、何よりレナウトと会ったのはただの偶然なのに。
まさか、自分の経歴が、こんなところで自分の自由を邪魔することになるとは思ってもいなくて、愕然とした。
「バークレイさんを救出してくれた騎士が、ずいぶん頑張って証拠固めをしてくれています。
捜査に協力しておられたのですね?」
「……はい……」
ルベルには、変に責任を感じてしまったりして欲しくなかったけれど、
でも、今はルベルだけが頼りでもあった。
それとも。
ルベルの番いになる未来なんて捨てて、ここで、自分の性的嗜好を打ち明けてしまおうか。
男が好きなたちだと知れれば、番いの話なんて、すぐに白紙に戻される。
恋心も、ルベルの番いという未来も、諦めて明け渡してしまえれば、
リュノは自由の身になって、気兼ねなく団を辞めることもできる。
それでも。
あと少し。
夢を見ていたかった。
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