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第25話 そうはしたくない

 それから十日ほど経って、ようやくリュノは管理課から解放された。  レナウトの片腕として、薬の密輸経路を開拓していた人物が検挙されたのだという。  半月ほどを何もせずに過ごして、リュノはすっかり気が抜けてしまっていた。  久しぶりに出勤した日の朝、普段は忘れたことのないメガネを忘れてしまって、午前中はとにかく魔力の流れに翻弄されながら仕事をした。 「すみません、宿舎にメガネを取りに戻ります」 「うん。お昼ご飯もあっちで食べておいで。慌てなくていいから」  会議のために長官は不在で、ヒルデ先輩に見送られて本部を出る。  少しずつ暑くなってきた陽気を感じながら、リュノは宿舎への道のりを急いだ。 「——リュノ」 「ルベル……」  呼び止められて、足を止める。  しばらくぶりに見たルベルは、灰色の魔法騎士のマントを身につけて、青ざめた魔力の鎧を纏って、そこにいた。 「……本当に、ごめん」  絞り出すようなルベルの声に首を振る。 「ルベルのせいじゃない。俺が迂闊だったし、何より、悪いのはレナウトだ」 「それでも。……俺がリュノに協力を頼まなかったら、こんなことにはならなかっただろ」  その言葉に唇の内側を噛む。  ルベルがリュノに頼ってくれなかったら、  リュノは、色んなことを、知らないままだった。 「やめろよ。——全部、なかった方が良かったことにされるのは、やだ」  思ったよりも低い声が出て、俯いた。 「助けてくれてありがとう。それから、俺のために頑張ってくれたって聞いた。ありがとう」  一歩、小さく後ずさる。 「お礼を言いたかったから、会えて良かった。  ありがとう。でも、もう、気にしないで」 「リュノ」  青ざめた色の魔力がざわざわと広がって、一瞬リュノを包み込んで、霧散した。  踵を返して、歩き出す。  こんなことを言いたかったんじゃないのに。  指を拳に握り込みながら、足早に歩いて、その場を離れた。    早く、メガネが欲しかった。  

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