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第29話 俺の太陽
番う前に、一度管理官を呼んで、認識阻害を外してほしいと願い出て、
赤らめたリュノの顔を見て管理官が何を思ったかはわからないけれど、
その場で、別の管理官が呼ばれて、認識阻害の解除が行われた。
ほんの一瞬。
管理官の魔力に体の表面を包まれて、
瞬きをするともう目の前に、ずっと会いたかったルベルが、いた。
「お手数をおかけしました」
「いえ。——我々にとって一番大切なのは、バークレイさんのご意志です。
そのために我々は存在しておりますから、どうかご負担に思わないでください」
そう言った管理官は、一礼して管理課への扉を開き、静かに部屋を去っていった。
「リュノ。……ちゃんと、顔を、見てもいい?」
かけられた言葉に振り向いて、顔を上げる。
リュノだって、もっとルベルの顔を見たかったから。
少し小走りに近づいて、ぶつかりそうな勢いでくっついて、正面からルベルの目を見上げた。
「この間は、ごめん」
「え」
管理課から解放された日、責任を感じて謝ってくれたルベルに、突き放すようなことを言った。
「ルベル、謝ってくれて……。俺のこと心配して言ってくれたのに。
なんか、ごめん。ルベルと、仲良くなったのがダメみたいに言われたら、いや、で——」
「いやがってくれたから、望みがあるって思えたよ」
そおっと、ルベルの腕が、魔力が、リュノを包み込んで、ルベルの顔が少し近くなった。
「なかったことにしたくないって、リュノが思ってくれたから、
俺、諦めきらないで、今日を待てた」
つんつんと、鼻先同士を触れ合わせてから、ルベルが言葉を続けた。
「俺だって、なかったことになんて、したくなかった。
……だから、リュ——」
ルベルの言葉の最後を奪って、唇を触れ合わせた。
そっと離れて、じっとその目を見上げる。
むずむずと、胸の内側から湧き上がる言葉を、
押さえ込むことができなかった。
「……好き」
もう一度、触れる。
「俺の太陽。——いなくなって平気だなんて、嘘」
もう一度。
離れようとした唇をルベルが追いかけて、少し深い口付けになった。
「俺も」
ルベルが短く応じて、それから、もう、言葉は必要なかった。
◇ ◇ ◇
妃殿下への報告
整理番号:八四一の一
件名:ルベル・エミレット/リュナス・バークレイ組み合わせ
当該組み合わせについて、以下の通り報告いたします。
一.交渉経過
四月十六日 相互顔合わせ
七月十六日 交渉実施、成立確認。なお双方本人申出により、認識阻害を解除
二.譲渡状況
非視認下・擬遠隔譲渡にて観察
譲渡量十分
受容耐性問題なし
即日より遠隔操作可能と判断
三.健康状態
疼痛・苦痛等の訴えなし
生命・精神活動に異常所見なし
以上をもって、当該組み合わせは制度上の手続きを完了し、安定運用可能と判断する。
魔力資源管理課
歴八四一年 七月十六日
セロ・ワーグナー
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