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余韻03話 包み込まれるように
その後は、ゆっくりと、少し時間をかけて、リュノとルベルは番いになった。
二人浴室で汗を流し、身支度を整えたら、ルベルがそっと手を差し伸べて、リュノをソファに誘ってくれた。
「管理官、呼んでくるね。——座ってて」
「うん」
大人しくソファに腰を下ろしたリュノの頭に、ルベルの口付けが落とされる。
さっきまでもっと深いところまで触れ合っていたのに、
そんな口付け一つが、もう幸せだった。
「それでは、エミレットさんは浴室へ移動していただけますか」
部屋を訪れた管理官は、ルベルとリュノを一瞥して淡々と言い、手で浴室を示した。
「浴室ですか?」
「魔力譲渡を試していただきます。目視ではない場所から行う必要がありますので」
その言葉に、ルベルがリュノの顔を見て、リュノは安心させるように微笑んでみせた。
「大丈夫だよ。……わかってるでしょ?」
小声でルベルに伝えると、ルベルは少しだけリュノの顔を見つめて、それからまたリュノの頭に唇を押し当てた。
「我慢しないでね」
「……っ、うん」
管理官の前でも普段通りのルベルに、照れる暇もなかった。
ルベルが浴室へ移動して、管理官へ声をかける。
管理官は、浴室の方を見て、それからリュノを見て、口を開いた。
「バークレイさん。よろしいですか?」
「はい」
管理官の目を見て応え、首を縦に振る。
なんとなく、管理官の目が細まって、微笑んだ気がした。
「では、エミレットさん、はじめてください。一分計測します」
「はい」
二人のやり取りのあと。
すぐに。
リュノの体の周りを、ルベルのあたたかい色の魔力が取り巻いた。
思わず体を見下ろして、それから頭の上を見上げる。
ふわふわとしたルベルの魔力はどんどんと色を濃くして、リュノをすっかりと取り囲んでしまった。
まるで。
ルベルに抱きしめられている時のように。
「——わあ……」
思わずこぼれた声に、管理官がこちらを見て、リュノは口をつぐんだ。
それでも。
この魔力に、こんなふうに包み込まれるのはとても嬉しくて、幸せがリュノの胸の中を満たしてくれた。
「一分経過しました。エミレットさん、とめてください」
管理官の声とともに、ルベルの魔力はするすると縮んでいって、
やがてリュノの体の下の方を取り巻き、
——二人がつながったところに収束して、消えた。
「——っ」
——は……っずかしい……!!!
こ こ で繋がったことは、間違いないことで、管理官も知ってはいることだけれども。
こんなふうに、どこでつながっていたのかまで明白に見えるだなんて、思ってもみなかったから。
思わず口元を手で覆って、あがりそうになった声を抑え込んだ。
「バークレイさん。……どうかされましたか」
——ええ……!
どうもこうも。
耳元まで熱くなって、管理官の方を見られないでいると、
衣擦れの音がして管理官が体を前にかがめ、少しリュノの近くに寄った。
「どこか、——痛みや、苦しい、など、ありましたか」
その真剣な声音に、思わず顔を見上げる。
管理官の顔はよくわからないけれど、じっと見つめられていて、リュノは思わず首を振った。
「ちが……、違います。——え?その、俺が、……見 え る ことは、ご存知です、よね?」
管理官の真剣さに戸惑って声を上げると、管理官はぴくりと眉を上げて、それから体を起こした。
「……まさか……。それも、わかってしまうのですか……」
「あ、——え……」
うめくように呟いた管理官の言葉に、管理官にも、繋がったところまでは見えていないのだと、察した。
「うわ……。なんだ……、俺だけ、なんですね……」
変に恥ずかしがったりしたせいで、自分に何が見えてしまったのかを、管理官に自ら明かしてしまったようなものだった。
思わず顔を伏せて、両手で覆う。
「すみません……。聞かなかったことにしてください……」
「……はい。——承知いたしました……」
それっきり、管理官との間に沈黙が落ちて、それをルベルの控えめな声が破るまで、リュノはじっとしていた。
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