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第3話 初めての朝
「ん……」
朝食の支度を終えてから雪翔を起こしに来ると、子どものようなあどけない寝顔があった。
「ふふ……可愛い……」
雪翔と出会ったのは彼が五歳の時。親戚の集まりで彼の子守りを頼まれた。ふたりで商店まで歩いて、サイダーを買ったのを覚えている。
出会った頃はあんなに小さかったのに、今はすっかり美青年に成長していた。
「寝顔はまだまだ子どもだね」
起こすのは忍びないが、もうアラームは鳴っている。伊織はゆさゆさと雪翔を揺り起こした。
「雪翔くん、ゆきとくーん」
「んん……」
「朝だよ、起きてー。朝ごはん冷めちゃうよー」
「ん……ん……いおり、さん……?」
「はい、おはよう。早く起きないと遅刻しちゃうよ?」
「……うわ、やべえっ! おはようございます!」
雪翔はがばりと起きてベッドから立ち上がった。
「ほら、着替えて顔も洗ってね」
「はいっ!」
伊織は可愛いなあ、と思いながら、慌てて着替える雪翔を見ていた。
「すっげえ……朝メシこんな豪華でいいんですか……?」
朝食は鮭の塩焼きに卵焼き、そして味噌汁と白米だった。
「豪華かなあ?」
「豪華ですよ! いつも俺、食パンかじってるだけでしたもん」
「それじゃお腹空いちゃうでしょ?」
「ええ、まあ……」
雪翔は大きな口でおいしそうに朝ごはんを食べてくれる。尽くす相手がいる喜びに、笑みが抑えられない。
「伊織さん、にこにこですね」
「うん? 雪翔くん、かわいいなあって」
「……俺、もう二十三ですよ」
「僕からしたらまだまだ子どもだよ。かわいい雪翔くんのまま」
「……子ども扱いだ」
雪翔はむう、と頬を膨らませた。その表情だって愛らしい。
「俺、ちゃんと一人前の男ですから! ごちそうさまですっ!」
拗ねてしまった雪翔は食器をシンクに運ぶ。鞄を持って玄関に向かった彼を、伊織は引き留めた。
「雪翔くん、待った」
立ってしまっている襟を直してやる。ついでにボタンも掛け違えていたのでそれも直した。
「身だしなみはちゃんとしないと、ね?」
「あ……ありがとうございます」
雪翔は頬を赤らめていた。恥ずかしかったのだろうか。
「今日の晩ごはんはハンバーグだからね。はい、お弁当も持って。気をつけていってらっしゃい」
「ハンバーグ!? うわ、俺大好物ですっ! 大盛り、大盛りでお願いします!」
「ふふ、はあい。じゃあおいしいの作るから、お仕事頑張って」
「はい、行ってきますっ!」
雪翔は満面の笑みで家を出て行った。さて、食器を片づけ終わったら次は掃除だ。
「僕もお仕事頑張ろうっと……」
伊織は腕を捲って、食器の山を片づけていった。
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