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第7話 男らしい一面
雪翔と一緒に暮らし始めてから数ヶ月が経ったある日。
「よいしょっと……」
部屋の片付けをしていた伊織は、段ボールに普段使わなさそうものをしまって持ち上げた。これでだいぶ床が見えてきた。
「あ、これダンベル……?」
床に置いてあったのは、どう見てもダンベルだった。雪翔がトレーニングに使っているのだろうか。
「よっ……と、あれ?」
持ち上げようとしても、床から離れてくれない。
「よいしょっ……んー、んー!」
どんなに力を入れても動かない。ダンベルとはこんなに重いものだったのか。
「はあ、はあ……」
「伊織さん、お茶でも……って、どうしました?」
「あ、雪翔くん……ダンベル、動かそうとしたんだけど持ち上がらなくて……」
「あ、重かったですか、すみません」
雪翔は何ともないように、ひょいとダンベルを持ち上げた。
「わ、すごい……! 雪翔くん筋肉あるんだねえ」
「まあ、一応鍛えてますから」
雪翔は軽くダンベルを動かしている。正直、羨ましい。
「筋肉、触ってもいい?」
「いいですよ、はい」
雪翔は腕をまくって筋肉を見せてくれた。ぺたぺたと触ると、しっかりと鍛えているのがわかる。
「ムキムキだね……すごいなあ……」
しっかりとした腕を見ていると、目の前の人が『男』なのだということがわかる。
「…………」
顔立ちは精悍に、身体は男らしく強くなって──。
──あ、れ?
とくん、と胸が高鳴る。おかしい。なんだこの胸のときめきは。
「伊織さん?」
「ご、ごめんっ! 触りすぎた!」
「別にいいですけど……顔赤くないですか?」
「えっ!? いや、大丈夫! なんでもないよっ!」
駄目だ。自分より七つも年下の男の子にときめいてしまうなんて大人としてありえない。
雪翔は可愛い従兄弟だ。あの時、サイダーをおいしそうに飲んでいた男の子のまま──。
「伊織さん、大丈夫ですか?」
そう思いたいのに、目の前にいるのは自分よりも背が高くなった、男の人で。
──駄目、駄目! 孝仁さん亡くなったばっかりだぞ!? それに、こんなおじさんに好きになられても雪翔くん困っちゃうだろうし……!
「大丈夫だよ、平気……」
「とりあえず水分摂った方がいいですよ、俺水持ってきます」
「あ、ありがとう……」
『いおりにいちゃん、おれとけっこんして!』
はるか昔の約束を思い出して、胸がいっそう高鳴る。
駄目だ、駄目だ。こんな気持ちは絶対に許されないのに。
今、確かに伊織は雪翔に心惹かれていた。
「ど、どうしよう……」
この気持ちがバレてはいけない。しばらく雪翔の顔が見れなさそうだと思いながら、伊織はぱたぱたと手で顔をあおいだ。
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