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第10話 付き合ってからの朝は
「雪翔くん、ゆきとくーん」
「んん……」
「起きてー、朝だよー」
雪翔の身体をゆさゆさと揺らすと、彼はゆっくりと目を開いた。
「おはよう、雪翔くん」
「ん……んん……おはよ、ございます……」
「ふふ、寝癖すごいなあ。ほら、顔洗っておいで?」
やはり、寝起きの彼はひどく愛らしい。いつまでも子どものままだ。
「伊織さん……」
「ん?」
「おはようのキスはしてくれないんですか……?」
「ひぇ!?」
いきなり何を言い出すのだ。亡くなった孝仁ともそんなことはしてこなかった。あわあわと慌てていると、雪翔がそっと頬に触れてくる。
「伊織さんがおはようのキスしてくれたら、起きます」
子犬のような顔で見つめられて、伊織は逡巡した。
「〜〜っ」
恥じらいながら、雪翔の頬に口づけを落とす。伊織にはこれが精一杯だった。
「はい、起きて! 朝ごはん冷めちゃうよっ!」
「ほっぺかあ……」
雪翔は少し不満げな顔のまま起き上がる。五歳のころにサイダーで喜んでいた純粋な男の子はどこに行ってしまったのだろうか。
朝食を終えて、家を出る準備をしている雪翔に弁当を渡す。
「今日の晩ごはん、唐揚げでいい?」
「大好物です! めっちゃ食いたいです!」
「ふふっ、雪翔くんはいつも大盛りだもんね」
立っている襟を直して、ぽんぽんと肩を叩く。
「はい、いってらっしゃい」
「行ってきます。……あ、一個忘れ物」
「ん? 何忘れたの? 取ってこようか?」
「いや、ここに」
雪翔は伊織をぐいと引き寄せると、唇を奪った。
「ん、んんっ……!」
舌が入り込んできて、びくりと肩を震わせる。歯列をなぞられて、舌の先を吸われて、あまりの気持ちよさに腰が抜けてしまいそうだった。
「いってきますのキス、してなかったんで」
「そ、そういうのってもっと軽いのなんじゃないの……!? 朝からこんなっ……」
「だって雪翔さんが奥さんみたいにしてくれるから、我慢できなくって」
「奥さっ……!? かわいくて純粋な雪翔くんはどこに行っちゃったの!?」
「伊織さん、俺のこと未だに五歳児だと思ってるでしょ……」
雪翔はいつもと違う意地悪そうな笑みをこぼして、ちゅっと軽いキスをしてきた。
「もう俺、立派な大人なんで。伊織さんのことだって下心ありありで見てますよ」
「し、したごころ、って……」
「おかえりのキスは、伊織さんからしてくださいね? じゃ、行ってきます!」
雪翔は太陽のような笑みに戻って家を出ていった。
「ゆ、雪翔くん……ずるい……!」
伊織はへにゃへにゃと座り込んで、真っ赤になった顔を押さえるしかできなかった。
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