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第15話 ふたりで買うもの
「うーん……」
ある日、雪翔がパソコンを触りながら悩んでいた。
「雪翔くん、どうしたの?」
「あ、いやちょっと悩みごとっていうか……買おうかどうか決めかねてるものがあって」
「欲しいものあるの?」
そう言うと、雪翔はパソコンの画面を見せてくれた。そこにあったのは、コーヒーメーカーたちだった。
「前から、コーヒーメーカーが欲しいなって思ってたんです。でもひとり暮らしには贅沢かなって、買えてなかったんです」
コーヒーメーカー。それがあったら、すぐに雪翔にコーヒーをいれてやれる。朝起きたらコーヒーをいれて、その香りが満たされた中で雪翔を起こして、一緒に朝食を食べて──。
「買うなら、僕もお金払う!」
「え?」
「僕、雪翔くんにコーヒーいれてあげたい! コーヒーの香りで目覚めるなんて、すっごく素敵な朝だよ!」
それだけじゃない。午後のおやつの時間にもコーヒーがあったら。伊織が作った菓子とコーヒーで、雪翔を癒せたら──。
「や、でも伊織さんの金使わせるわけには……」
「僕の好きなことに使っていいんでしょ? 一緒に使うものなんだから、僕にも払わせて」
幸い、雪翔からもらった給料にはまだあまり手をつけていない。コーヒーメーカーの値段の半分なら充分に出せる。
「おうちで、雪翔くんと一緒にコーヒーが飲めるのはきっと幸せだと思うんだ」
「……幸せ、なんて言われたら……俺、弱いですよ」
雪翔は照れながら、くしゃりと前髪を乱した。
「わかりました、じゃあ一緒に選んでくれますか?」
「うんっ!」
「俺、コーヒーだけじゃなくていろんなのいれられるやつがよくって。カフェオレとかキャラメルラテとか、抹茶ラテとかいれられるやつあるんですよ」
「わあ、僕抹茶ラテもカフェオレも大好き!」
「それで、悩んでるのがこれとこれで、メーカーが違うんですけど、こっちは手入れが楽なんです。で、こっちは見た目が部屋に合うかなって」
「手入れか見た目……僕だったら手入れ楽な方にしちゃうかな。毎日使うものだから」
「じゃあこっちですね。これ、カプセル使って色んな種類の飲み物作れるんですけど、何が飲みたいですか?」
「わあ……コーヒーにカフェオレ、ミルクティーまで!? すごいね! じゃあ僕、カフェオレと抹茶ラテがいいな!」
「俺、このチョコラテってやつ気になってるんですよ。あとミルクティーも買いましょうか。それと普通のコーヒーも……」
雪翔とふたり、パソコンを見ながら商品を選んでいく。それは、どうしようもなく幸せな時間だった。
「ふふ、楽しいなあ」
ふとそう零すと、雪翔は伊織の頬にそっと触れた。
「伊織さん、俺と一緒にいて、楽しいって思ってくれるんですか?」
「うん、だって雪翔くんの隣はすごく安心するもん」
「……昔のこと思い出して、辛くなったりとか、ないですか?」
きっと雪翔は亡くなった孝仁のことを言っているのだ。思い出さないわけではない。傷はまだ生傷のままだ。でも。
「雪翔くんが、いてくれるから。ちゃんと楽しいよ」
太陽のような彼が傍にいてくれたら、きっと大丈夫だ。
「……伊織さん」
雪翔は伊織をぎゅうと抱き締めた。慈しむように頭を撫でられて、心が安堵で満たされる。
「俺、今泣きそうです……」
「えっ、なんで!?」
伊織は鼻をすする雪翔の背中を、ぽんぽんと叩いてあやした。
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