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第16話 届いたコーヒーメーカー
「伊織さーん! コーヒーメーカー届きましたよ!」
雪翔の声がしてリビングに行くと、そこにはダンボール箱があった。雪翔はそこから、新品のコーヒーメーカーを取り出す。
「じゃーん!」
「わ、すごい!」
「早速飲みましょ! 伊織さん何がいいですか?」
「カフェオレがいいな。……あのさ、雪翔くん。僕、コーヒーに合うお菓子作ったんだけど、食べない?」
コーヒーメーカーが届くと聞いて、つい浮かれて朝から張り切って作ってしまったのだ。
「えっ、お菓子作ったんですか!? すげえ!」
「うん、簡単なやつなんだけど、チョコタルトを……」
「俺、タルト大好物ですっ! 食べます、めっちゃ食べますっ!」
「ふふ、じゃあ準備するね。飲み物は任せていい?」
「はいっ!」
伊織は冷蔵庫からチョコタルトを取り出し、ひとり分ずつに取り分ける。最後にホイップクリームをたっぷりのせれば完成だ。
「伊織さん、カフェオレ入りましたよ!」
「ありがとう、こっちも準備できたよ」
伊織は雪翔の目の前にチョコタルトを置く。ふわりとコーヒーの香ばしい香りが漂った。
「わ、すげえうまそうっ! これ本当に手作りですか!?」
「溶かして生地に入れるだけだから、すごく簡単だよ?」
「ぜってーそんなことないですよ! いただきますっ!」
雪翔は大きな口でぱくりとチョコタルトを食べてくれた。本当に、食べている姿はポメラニアンそっくりだ。彼はごくごくとコーヒーを飲んで、満面の笑みを浮かべる。
「〜〜っ、うめえっ! コーヒーにめちゃくちゃ合う! 世界で一番うまいです!」
「ふふ、雪翔くん言い過ぎだよ」
伊織もチョコタルトを食んで、カフェオレを口に含む。チョコの濃厚な味を、カフェオレのまろやかな苦味が包んでくれた。
「うん、雪翔くんがいれてくれたカフェオレ、すっごくおいしいよ」
「へへ……よかったです」
「これで、毎朝雪翔くんにコーヒーいれてあげられるんだなあ。ふふっ、楽しみ。明日は朝ご飯、クロックムッシュにしようか」
「伊織さん……」
雪翔は伊織を優しく抱き締めて、そっと唇を奪った。
「幸せすぎて死にそうです……」
「え、ええっ?」
「だって、伊織さんが俺の恋人ってだけで最高に幸せなのに、手作りのお菓子作ってくれて、こんな風に一緒に過ごせるなんて……」
「……僕、だって、こんな風に穏やかに過ごせるなんて、思ってなかったよ」
孝仁が死んだ時、自分の居場所はこの世に無くなってしまったと思っていた。そこから救い出してくれたのは、確かに雪翔だった。
「……俺、伊織さんのこと、幸せに出来てますか?」
幸せ。雪翔が隣にいて、笑って、一緒に食事を摂って。
ああ、これは──幸せ以外に、なんと呼べばいいのかわからない。
「……幸せだよ、すごく」
伊織が微笑むと、雪翔は心の底から嬉しそうに笑って、また唇に触れた。
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