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第17話 心配してくれる人

 とある日、雪翔とソファで談笑していると、彼のスマートフォンが鳴った。 「あ、すみません。……なんだ、姉ちゃんか」 「由衣ちゃん?」 「はい。顔見てやるからビデオ通話してこいって」 「わ、僕も由衣ちゃんの顔見たい!」 「いいんですか? じゃあ、かけますね」  雪翔はスマートフォンを操作してビデオ通話を始める。すぐに通話は始まって、雪翔とよく似ている由衣の顔が写った。 『雪翔、と……伊織さん! きゃーっ! お久しぶりです!』 「由衣ちゃん久しぶり! 相変わらず美人さんだね」 『もう伊織さんったら! 雪翔のバカが迷惑かけてませんか?』 「ううん、雪翔くんのお陰で毎日楽しいよ。そっちはどう?」 『超楽しいですよ! ずーっと農業やりたかったし、念願叶ったって感じ!』 「姉ちゃん、なんで急にビデオ通話してこいって言ったの?」 『そりゃ伊織さんの顔見たかったからに決まってるでしょ! ふたりが同棲したって聞いて、ようやくかって思ったんだから!』 「ど、同棲って……」 『伊織さん、コイツ猪突猛進なバカなんで嫌だと思ったらちゃんとガツンと言ってくださいね!』 「誰が馬鹿だ!」  言い合いをしている雪翔と由衣はどこからどう見ても仲良しな姉弟だ。微笑ましくて、思わずくすりと笑みが零れる。 『そうだ雪翔、昨日沢山トマト採れたのよ。あとナスも。すぐに送るから、伊織さんに何か作ってもらいなさい』 「……ありがと」 「わあ、トマトにナス! いいね、何作ろうかなあ! 夏野菜カレーもいいし、ナス入りのボロネーゼなんかもおいしそうだよね! あっ、ピザもいいかも!」 「……伊織さん、全部うまそうなんで全部作ってください……」 『あはは、アンタ胃袋掴まれてんじゃない! まあそうじゃなくても雪翔は伊織さんにべた惚れだったけど』 「……そう、なの?」 『伊織さん知ってます? 雪翔、伊織さんが駆け落ちしたって聞いて、自分の髪バリカンで剃って角刈りにしたんですよ!』 「ちょっ、姉ちゃん! それ言うなよ馬鹿っ!」 『その上ショックで熱出して三日も寝込むし、ほーんと繊細すぎ!』 「姉ちゃん!」 「そ、そうだったんだ……」  伊織が駆け落ちをしたのはもう七年ほど前になる。雪翔は七年前も伊織を好きでいてくれたのだ。 「七年くらい前って、雪翔くん高校生だったのに……」 「だから言ってるじゃないですか、五歳の時から好きだったって」  ぐいと腰を引き寄せれられて、額に口づけが落ちる。 「わあっ! ゆ、由衣ちゃん見てるから駄目だよっ……!」 『あーはいはい、もう一生伊織さんの尻追っかけてな。伊織さん、バカな弟ですけど、よろしくお願いしますね。手綱握ってやってください』 「それはちょっと難しいかも……」 『じゃ、また色んなもの送るので!』  通話が切れて、雪翔は伊織の手を握ってきた。 「くそ、姉ちゃん恥ずかしい昔話しやがって……」 「……本当に角刈りにしてたの? アルバムとかに残ってる?」 「残ってるかもですけど、絶対見せません」 「……むう」  高校生の雪翔を見てみたかったのに、残念だ。雪翔は伊織を包み込んで、優しく唇を奪った。 「伊織さんは今の俺だけ見ててください。ね?」  そう言って笑う雪翔は、誰よりも格好よくて 。  伊織は顔を赤らめて、雪翔に身体を預けた。

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