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第20話 かっこいいとかわいい
「伊織さんが毎回駅前のカフェで詰むのってサイズ頼む時じゃないですか」
ある日、雪翔は伊織を連れて駅前のカフェの前までやってきた。
「う、うん……なにがどのサイズなのか全然わかんない……」
「俺、それの対策考えたんですよ。元からサイズがわかってればいいのかなって」
「どういうこと……?」
「このカフェ、オリジナルのタンブラー売ってるんです。カップと同じサイズの。だからそれ買って、このサイズでお願いしますって言えばいいんじゃないかなって思ったんですよ」
「なるほど……!」
確かにタンブラーを見せれば店員はどのサイズかすぐにわかるだろう。それは名案だ。
「タンブラーってお店で買えるの?」
「買えますよ。店頭に置いてありますから、見ましょうか」
雪翔の後についてカフェに入る。店内はきらきらした雰囲気で、やはり気後れしてしまう。
「伊織さん、ほら、これ」
伊織が指さしたタンブラーは洗練されたデザインでとても格好よかった。
「種類ありますけどどれがいいですか?」
「この、ロゴが入ってるやつ素敵だなあって」
「じゃあこれにしましょうか。俺この青色のやつにしようっと」
「じゃあ買ってくるね……って、え?」
雪翔はタンブラーをふたつ持つと、レジに向かっていく。
「すみません、このタンブラーに入れてもらうことってできますか?」
「はい、可能ですよ」
「じゃあホワイトモカのホット、モカシロップ増量で。伊織さんは?」
「え、えっと、抹茶ラテのホットお願いします……」
「かしこまりました」
「じゃ、エルペイで決済お願いします」
伊織が財布を出す前に、雪翔はスマートフォンで支払いを済ませてしまった。
「雪翔くん! なんで僕の分まで払っちゃうの!」
「まあまあ、ほらあっちで受け取りましょうねー」
「お金! 払うから!」
「ダメです俺のおごりですー」
雪翔は結局、伊織に財布すら出させてくれなかった。
「…………」
「伊織さーん」
「…………」
「いおりさーん、機嫌直してくださーい」
伊織はぷい、とそっぽを向いた。ちゃんと自分で支払うつもりだったのに、安くないタンブラーをふたつも買ってしまうなんて。
「ほら、早く飲まないと冷めちゃいますよ」
「…………」
確かにそれもそうだ。伊織はタンブラーに口をつけて、抹茶ラテをすすった。
「ん、おいし……!」
「ぷっ」
前を向くと、雪翔が肩を震わせていた。
「あんな怒ってたのに……急に機嫌直った……マジ可愛い……」
「お、おいしいもの飲んだら誰でもそうなるでしょ!?」
「や、すみませんバカにしたわけじゃなくて……マジで可愛いなって思っただけです」
雪翔はあー笑った、と言ってドリンクに口をつける。
「かわいいのは雪翔くんでしょ。サイダー飲んだだけでニコニコになるんだから」
「いつまで五歳の時の話してるんですか……」
「それだけじゃないよ、ごはん食べる時もニコニコで食べてくれて、たくさんおかわりしてくれるのすっごくかわいい」
「伊織さんがそうやって可愛い子扱いしてくるから、頼れる大人の男として見てもらいたくて奢るんですよ」
確かにデートで支払いを持つのは大人だ。格好いいと思う。けれど、雪翔の格好良さは人の話を真摯に聞いてくれて、守って、支えてくれるところだ。
「……そんなことしなくても、雪翔くんかっこいいもん」
拗ねたように呟くと、雪翔の顔がかあっと赤くなった。彼は片手で顔を隠す。
「え、なんで照れるの?」
「……伊織さん、ずっりぃ……くそ、かっこつかねー……」
たったひとつの褒め言葉で照れる雪翔はやっぱり可愛くて。
「……よしよし」
伊織は手を伸ばして、雪翔の金に近い茶髪の髪を犬のように撫でた。
「ガキ扱いしないでください……」
格好よくて可愛い恋人は、いつまでも顔を赤らめていた。
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