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第21話 とある昼休み
「雪翔くん、前会社に保温ポットあるって言ってたよね?」
朝食を食べ終わり、玄関先で準備をしていると伊織がそんなことを聞いてきた。
「保温ポットっていうか、ウォーターサーバーですね。あったかいのも出ますよ。カップ麺食う人とかいるんで」
「そう、よかった」
伊織は微笑んで、いつもより膨らんでいる弁当が入っている巾着を差し出した。
「お昼、スープジャーの中にお湯入れてみて。お仕事頑張ってね」
「……? わかりました、行ってきます!」
どういう意味だろうかと疑問に思ったが、雪翔はそのまま家を出る。手を振ってくれる伊織は、まるで妻のようだった。
そしてお昼休み。雪翔がカバンからお弁当箱が入った巾着を取り出して開けると、そこにはスープジャーといつものお弁当箱が入っていた。お弁当はいつも通りとても美味しそうだった。唐揚げに卵焼き、ウインナーにブロッコリー、 お弁当の王道たるおかずたちが並んでいる。
「うわ、すっげーうまそう……」
雪翔は思わず素直な感想を口にこぼした。そしてもうひとつ、スープジャーだ。雪翔はウォーターサーバーの前に立ち、そこにお湯を入れてみる。 すると、 ふわりと味噌の香りが漂った。きっと伊織は味噌をスープジャーの中に入れておいてくれたのだ。これなら職場でも温かい味噌汁が食べられる。
「さすが伊織さん ……」
雪翔は心優しい恋人のことを思い出しながら席に戻った。
「いただきます!」
大きな声で両手を合わせる。伊織の唐揚げは冷めても美味しかった。そこに味噌汁をすすると、たまらないおいしさと安心感があった。
「うめぇ、うめぇ……!」
感動して食べていると、雪翔の同僚である山本が声をかけてきた。
「なぁ、お前の弁当いつも美味そうだよな。自作?弁当男子ってやつ?」
「いや、これは………恋人が作ってくれてる」
「はぁ? なんだそれ羨ましすぎるだろ。ひと口よこせ!」
「やだ! 絶対誰にもこれはやらん!」
雪翔は山本と軽口を叩き合いながら弁当を完食する。そして伊織にメッセージを送った。
『お弁当超うまかったです! 味噌汁も最高です!』
『よかった。今日のお夕飯は角煮だよ。今煮卵仕込み中』
ごくりと唾を飲み込む。今日の夕飯がひどく楽しみだ。愛しくて大好きな恋人が待っている家に早く帰りたくなってしまった。
『伊織さん、愛してます』
既読はついたのに、返信が返ってこない。どうしたのだろうかと思っていると、メッセージがひと言だけ。
『雪翔くんのずる!』
それだけで、顔を赤らめている伊織が容易に想像できた。こんなに雪翔を想ってくれて、ずるいのはどちらだ。
『おかえりのキス、期待してます!』
雪翔は微笑みながら、愛のこもったメッセージを送った。
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