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第22話 好きなもの、好きなところ
「伊織さんって、前から抱き締められるの好きですよね」
ソファに座って憩いの時間を楽しんでいると、雪翔がそんなことを言ってきた。
「え、えっと……うん、好きかな。どうして?」
「いつもセックスする時、前からじゃないですか」
「わーっ! わーっ!? いきなり何言うの!」
伊織は顔を真っ赤にする。昼間からなんて話題を出すのだ。
「や、だって何回かヤったけど、全部前からだったなーって思って。伊織さんが毎回正面から抱きついてくるから、自然とそうなってるよなって」
「う、うう……」
確かに伊織は正常位でするのが好きだ。雪翔に抱き締められながらの行為は、身体を全て明け渡している感覚になる。
「僕、その、全身を包まれる感覚、っていうのかな。それが好きで……。毛布とかにくるまるのも好きなんだ」
「ああ、確かによくブランケット羽織ってますね」
「だから、その……雪翔くんに全身ぎゅーってされるのが、好きで……」
「……前から思ってましたけど、伊織さん俺の身体大好きですよね」
「へ、変な言い方しないでよ!」
「だって鍛えてる時とか横からちらちら見てるし、腕とかよく触るし」
「う、うう……」
雪翔の身体つきは男らしい。筋肉の均衡がしっかりと取れているし、無駄な贅肉というものがない。
「でもなんかその言い方だと、雪翔くんの身体目当てみたいでやだ!」
「じゃあ身体以外でどこが好きですか?」
「え、えっと……ごはんいっぱい食べてくれるところと、いつも僕のこと考えてくれるところと、優しいところと……」
雪翔の好きなところは沢山ある。今まで一緒に暮らしてきて、雪翔を好ましいと思った回数は数えきれない。
「あと、その、えっと……」
口に出すのはすごく恥ずかしいが、大好きなところが、ひとつ。
「なんですか?」
「そ、その……デートの時とかに、手繋ごうって言ってくれるでしょ?」
「ああ、そうですね」
「あれが、その……王子様みたいで、かっこいいなあって……」
伊織をエスコートしてくれる姿は、まるで物語に出てくる王子様のようだと思う。雪翔は顔立ちも整っているし、まさにぴったりだ。
「……ふーん、じゃあ、伊織さんはお姫様ですね」
「さ、三十のおじさんがお姫様なわけないでしょ!?」
「でも俺がエスコートしたいのは伊織さんだけなんで。俺が王子だったら伊織さんは姫ですよ」
雪翔はそう言って、うやうやしく伊織の手の甲に口づけた。
「……する、なら……」
「ん?」
「キスするなら……手じゃなくて、口がいい……」
顔を赤くしながらそう言うと、雪翔はぐいと伊織の腰を抱き寄せた。
「伊織さん可愛すぎて、本当人生狂いそうです」
噛みつくように唇を奪われる。伊織は自分だけの王子様に囚われて、その口づけに溺れた。
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