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第36話 恋人に対する十の質問 雪翔編

「じゃあ、雪翔くんに質問してくね?」  伊織は雪翔に抱き締められながら、スマートフォンに映し出されている画像を見た。 「はい、お願いします」 「第一問、『恋人の紹介をしてください』だって」 「加古村伊織さん。三十歳で、家事代行と家政夫の仕事してます。超素敵なかわいい俺の恋人です!」 「褒めすぎだよ……二問目、『恋人の好きなところは?』」 「うーん……全部ですね」 「ぜ、ぜんぶ?」 「はい。優しいところも可愛いところも、意地っ張りなところもエロいところも、ぜーんぶ大好きなので」  まっすぐにそう言われてしまって、顔が赤くなる。愛されているとは思っていたが、伊織の全てが好きと言ってくれるなんて。 「え、ええと次……『恋人の嫌いなところは?』だって」 「ないです! ひとつも!」 「本当にひとつもないの……?」 「伊織さんだって嫌いなところないって言ってたでしょ?」 「そうなんだけど……じゃあ、『恋人に直してほしいところは?』」 「うーん……あ、あれだ。家出するのやめてほしいです」 「うぐっ……」  伊織は前に雪翔のところから飛び出して、放浪していたことがある。あの時はひどく心配をかけた。 「だって本当に危ないんで。事故に遭うかもだし、誘拐されるかもしれないし。お願いですから、家出するくらいなら引きこもってくださいね。ほんっとうに、お願いですから」  ぎゅう、と強く抱き締められて、雪翔の顔が近づく。 「ご、ごめんなさい……本当に反省してます……」 「あとガキ扱いもやめてください。俺もう大人なんで」 「それは無理かも……」 「……わかりました、今夜楽しみにしててください」 「ひえ……!」  一体なにをされてしまうのだろう。想像するだけで身体がずくりと疼きそうになった。 「つ、次! 『恋人を好きになったきっかけは?』」 「サイダーおごってもらったこと、ですね。あれが俺の人生最初で最後の恋です」 「ほ、本当に五歳の時に好きになったの……?」 「はい。それから十八年、ずーっと。だから重いですよ」  ちゅ、と頬に口づけが落ちる。あんなに小さかった子が、今はこうして伊織を包み込んで抱き締めているのが不思議だ。 「伊織さんに見合う男になるために、こんなにおっきくなったんですよ?」 「う……正直、すごく好みです……」 「へへ、やった!」 「次は……『恋人は物や概念で例えるとなに?』」 「お月様、ですね。綺麗だし、俺にとって唯一なので」 「なんか過大評価な気がする……」 「伊織さんが過小評価しすぎなんですよ」 「次……『恋人はどんな人?』」 「うーん……美人で危なっかしい人、ですね」 「あ、危なっかしいってなに!?」 「なんか色んなトラブルに巻き込まれそうで。ひとりにするとすぐナンパされるし」 「う、うう……次!『恋人の好きな部位を教えて』!」 「好きな部位か……まあ全部なんですけど、太ももですかね」 「な、なんでそんな際どいところ!?」 「キスすると、すっげえ可愛く反応してくれるから」 「っ……雪翔くんのすけべ! えっち!」 「ええ、えっちなんで今日もたっぷり愛しますよ」 「次! 『恋人に着てほしいコスチュームはある?』」 「メイド服がいいです! ミニじゃなくてロングのクラシカルなやつ! あと着物も!」 「やけに具体的だね……」 「それ着ながら乱れてる伊織さんとかサイコーなんで!」 「なんで全部えっちな方向に持っていくの! もう、次! 『恋人はかわいい? かっこいい?』」 「うーん……その二択ならかわいいなんですけど、それよりも綺麗って印象のが強いですね」 「三十のおじさんが綺麗なわけないよぅ……」 「伊織さんはいくつになっても美人で綺麗で、世界で一番かわいいですよ。そこは譲れません。わかってくれないなら何回でも言いますよ?」  耳元で囁かれて体温が上がる。雪翔はこういう仕草をしてくるからずるいのだ。 「最後……『恋人にひとこと』」 「愛してます。もうどこにも行かないで、ずっと傍にいてください」 「うん……」  伊織は雪翔の頬を包み込んで、ひとつ口づけを贈った。 「ずっと、雪翔くんの傍にいるよ。約束」 「……じゃあ、そのうち指輪用意するんで、受け取ってくれます?」 「いいよ。楽しみに待ってるね?」  伊織はふふっと笑って、雪翔に身体を預ける。  いつか番になるふたりは、いつまでも寄り添いあっていた。

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