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第40話 強引なのがお好き?
「雪翔くん……僕、目覚めちゃったかも……」
「目覚めた? 何にですか?」
伊織はリビングのソファで、クッションを抱き締めながら言葉を紡いだ。
「雪翔くんにいじわるされると、興奮する……かも……」
「はい?」
「この前の……ホテルの時の雪翔くんが、すごくかっこよくて……もっと、してほしいなあって思っちゃって……」
『駄目です、待ちません。俺は伊織さんに人生狂わされたんだから、伊織さんもおかしくなって?』
そう意地悪な笑顔で言われた時、脳が弾け飛ぶ感覚がした。あれはまさに──新しい扉が開いたといっていいだろう。
「えーと……Mに目覚めたってことですか?」
「え、Mっていうと変態ぽくてやだ!」
「いやでも……鞭で打たれたりとかしたいんじゃないんですか?」
「痛いのはやだ! そうじゃなくて、精神的に追い詰められて恥ずかしい気持ちになりたいの! どっちかっていうと縛られたりとかそっちの方!」
「どういう性癖ですか……お願いだから変な店行かないでくださいね?」
「違うのー! 雪翔くんわかってない!」
伊織はクッションを床に投げて、雪翔にぼすんと抱きついた。
「僕は誰にでもいじめられたいんじゃないの! 僕のこと大好きで優しい雪翔くんがいじめてくれないと意味ないの! 他の人に縛られたりしても嬉しくない!」
「……伊織さん、すげえ変態なこと言ってますけど自覚あります?」
「変態っていうのは全裸で外歩いたり首輪つけるやつだもん! 僕は変態じゃないもん!」
伊織の性癖は雪翔限定だ。決して、断じて変態などではない。
「普段優しくて王子様みたいな雪翔くんが、僕にいざって時だけいじわるなのが嬉しいの! 雪翔くんに全部奪われたいんだもん!」
「……この人すげえ告白してるのに気づいてない……」
雪翔はひとつ息を吐いて、優しく伊織をソファに押し倒した。
「それが伊織さんの性癖ってんなら、俺はいくらでも付き合います」
彼は伊織の両手を掴んで、頭の上で拘束する。
「こーやって、俺に主導権握られるのが好きってことでしょ?」
悪いことを教え込まれるように、耳元で囁かれる。優しい雪翔の、伊織だけが知っている顔。
「ひゃう……」
「あ、本当にこういうのがいいんですね」
「すごく好き……かっこいぃ……」
「ま、伊織さんの性癖歪めちゃった責任は取りますよ。その代わり、俺以外にいじめられないでくださいね?」
ちゅ、と唇を奪われて、伊織は頬を赤らめる。
「……本当に、雪翔くんのせいでおかしくなっちゃう……」
「へへ、それはもうお互い様ってことで」
雪翔はポメラニアンのような可愛らしい笑顔で、伊織を強く抱き締めた。
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