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第41話 とある穏やかな夜

「ただいまです、伊織さん」 「おかえり、雪翔くん!」  帰ってきてくれた雪翔をぎゅう、と抱き締める。頬に口づけが落ちて、伊織は幸せに笑みを浮かべた。 「今日、会社の人が旅行の土産くれたんですよ」 「わ、お土産? いいね」 「はい、ガトーショコラと……あと、これも」  雪翔が出したのは、ホテルの名前が書いてあるサイダーの瓶だった。 「このホテル有名だよね! サイダー売ってるんだあ」 「俺、会社でもサイダー好き公言してるんで、買ってきてくれたんです。一緒に飲みませんか?」 「でも、雪翔くんサイダー大好きでしょ? 一本しかないなら、僕はいいよ」 「伊織さん」  雪翔はこつん、と額を合わせて、穏やかに笑った。 「俺のサイダーの思い出は、伊織さんがいないと意味がないんです。だから一緒に飲みましょ?」 「う……そうやってかっこいい顔するの、ずるい……」 「へへ、伊織さんってほんと俺の顔好きですよね」 「じゃあお風呂入ってごはん食べたら飲もうか」 「はいっ! 俺、手洗ってきます!」  雪翔はポメラニアンのような笑顔で、洗面台に向かった。  そして、夕飯も終わりサイダーを飲もうと言う時に、雪翔はベランダで飲まないかと提案してきた。伊織さんは待っててくださいと言われて、ベランダで夜の風を受ける。 「伊織さん、お待たせしました」  雪翔から氷の入ったグラスを受け取る。そこに、しゅわしゅわと音を鳴らしながらサイダーが注がれていった。 「俺、このしゅわしゅわって音好きなんですよね」 「ふふ、わかるなあ」  雪翔の分も注ぎ終わり、ふたりでこつんとグラスを鳴らす。夏の暑さの中で煽るサイダーは、命の水の味がした。 「おいし……」 「あーっ、うめえ……!」 「ねえ雪翔くん、サイダー作ってる工場見学できるって知ってる? 東京じゃないんだけどさ」 「え、工場見学!? すげえ、そんなんできるんですか!?」 「うん。お金貯まったら、雪翔くんに旅行プレゼントしようと思ってて。そこでいい?」 「伊織さん……」  雪翔はふるふると震えたあと、伊織をそっと抱き寄せる。 「俺、この世で一番最高な恋人と付き合ってます……」 「えへへ、雪翔くん褒めすぎだよ」 「なんなんすかもう……俺のことばっか考えてくれて……」 「だって、雪翔くんのこと大好きなんだもん」  一緒に笑って、生きていくのは雪翔がいい。雪翔でないと嫌だ。伊織のこれからの人生は、彼と一緒じゃなければ意味がない。 「……マジで、命かけて幸せにします」 「ふふ、ありがとう」  伊織は誰よりも愛しい人に、ひとつ口づけを落とした。

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