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第42話 くるまる時間
その日、コンビニから帰ると伊織がソファでブランケットに頭まですっぽりくるまっていた。まるで雪だるまのようだ。
「伊織さん?」
「あ、雪翔くんおかえりなさい」
「……何してるんですか?」
「えっとね、おくるみ」
「……おくるみ? って、赤ちゃんくるむやつですよね?」
「そう。僕、たまにこうやって何かに包まれたくなるんだ……そうしないと、なんか不安になっちゃうっていうか……」
ソファで丸まっている伊織は可愛らしい。雪翔は買ってきたものを置いて、隣に座った。
「このブランケット、ふわふわで包まれてると安心するんだあ……」
「……それ、ブランケットじゃないとダメだったりします?」
「へ?」
「俺がぎゅーって包むのは、ダメですか?」
そう言うと、伊織はきらきらと目を輝かせた。
「……いいの?」
「ええ、もちろん」
「……じゃあ、ぎゅーって……してほしい……」
少し照れている伊織が愛らしい。雪翔はふっと笑って、伊織を包み込んだ。
「はい、ぎゅーですよ」
「ん……ふふ、すっごい、落ち着くなあ……」
ぽんぽんと背中を撫でて、優しく彼を抱き締める。
「今までで一番、安心する……」
「そうですか? なら、くるまりたくなったらいつでも俺に言ってください」
どうして、こんなにも愛らしいのだろう。大切で、大事で、決して失いたくない人。雪翔の時間は、伊織と共にあるために存在する。
「……ねえ、雪翔くん」
「なんですか?」
「今わかったんだけど……僕、さみしかったのかも……」
伊織は照れながら腕の中で言葉を零す。
「さみしくて、人恋しくて……なんかにくるまってないと不安だったのかなあって……」
その言葉に、心臓を撃ち抜かれたような感覚を覚える。伊織の全てが可愛らしくて仕方がない。こんなにも雪翔に甘えてくれるなんて。
「伊織さん……かわいすぎです。かわいすぎるんで、ずっと閉じ込めてあげます」
ぎゅう、と力を強めて伊織を独占する。
「ふへへ……嬉しい……」
「ちなみに今ならオプションでキスもつきますけど、いかがですか?」
「いいの? じゃあ、いーっぱい、お願いします」
薄くて形のいい唇に、愛を捧げる。何度も、何度も角度を変えて深く、深く。
伊織の腕が首に回って、ふたりの距離がゼロになる。
「ゆきとくん、ゆきとくん」
「なんですか?」
「もっと、ぎゅーってして? 雪翔くんでいっぱいになりたい……」
「……伊織さんは、俺の人生狂わす天才ですね?」
決して離さぬよう、伊織を強く抱き締める。
伝わってくる伊織の体温が、何よりも大切な宝物だった。
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