44 / 52

第44話 伊織の変化

 愛し合った次の日、伊織はベッドの中で微睡んでいた。いつもは雪翔のために朝食を用意するので早く起きるのだが、愛し合った次の日は頼むから休んでいてくれと言われるのだ。 「伊織さん、身体辛くないですか?」 「大丈夫……けほ、けほっ」  喘ぎすぎたせいで喉が痛い。咳き込むと、雪翔は起き上がってベッドから出ようとした。 「水、取ってきます。待っててください」 「雪翔くん、待って……」  伊織は雪翔にぎゅう、と抱きついて、頬を擦り寄せた。 「行っちゃやだ。傍にいてぎゅーってして?」  今は雪翔と片時も離れたくない。甘えると、雪翔はベッドに戻って伊織を包み込んだ。 「はい、わかりました。最近伊織さん、いっぱいわがまま言ってくれるようになりましたよね」 「え、わがまま?」 「っていうか、甘えてくれる感じですけど」  確かに、最近雪翔に何かを要求することが多い。ほとんどは構ってほしい、愛してほしいという要望だが。 「えへへ……無意識だったかも。嫌?」 「嫌なわけないです。ちょー嬉しいですよ。どんどんわがまま言って、甘えてください」  雪翔は伊織の頭を撫でて、ぎゅうと抱き締めてくれる。それだけで、心が幸福で満たされていく。 「ふへへ……なんかね、雪翔くんはわがまま言っても僕のこと嫌いになったり、呆れたりしないって思ってるから、甘えちゃうのかも」 「……それ、最高の褒め言葉ですよ。俺のこと信頼してくれるってことですもんね」  ちゅ、ちゅ、と顔にキスが落ちる。だって雪翔は、伊織の存在ごと愛してくれているのだ。少しわがままを言ったくらいでその愛はなくなることがないと確信できる。 「ねえ、雪翔くんって何したら僕のこと嫌いになっちゃう? 気をつけるから教えて?」 「何しても嫌いになりませんよ。俺は一生、伊織さんの味方です」 「本当に? 何しても? 例えば僕が悪いことして捕まっちゃっても?」 「もちろんです。それくらいで俺の愛は揺らぎませんからね」 「……雪翔くん、僕のこと好きすぎだよ……」 「十八年ものの愛ですからね、世界がひっくり返っても無くなりませんよ」 「えへ、えへへ……」 「伊織さんもこんな重い男に好かれちゃって、大変ですね?」  雪翔は意地悪な顔でにやりと笑う。伊織はふっと笑い返して、雪翔の腕に首を回した。 「大変じゃないよ? すっごく、すーっごく嬉しい。僕だけの王子様だもん」 「じゃあ、大事なお姫様をいっぱい可愛がりますね?」  雪翔の愛に包まれて、穏やかな時間が流れていく。伊織は頬を緩ませながら、雪翔の唇に口づけた。

ともだちにシェアしよう!