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ほおずきは灯る〜陰陽寮特殊霊異対策室〜 【R-18】第二十五話 応急処置 | 熊田萠音(クマダモネ)の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
ほおずきは灯る〜陰陽寮特殊...
【R-18】第二十五話 応急処置
作者:
熊田萠音(クマダモネ)
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【R-18】第二十五話 応急処置
三条
(
さんじょう
)
は目を覚まさなかった。 枕元に座って、もう二時間が経つ。呼吸はある。浅く速い呼吸。額に浮いた汗を拭いてやっても、すぐにまた噴き出す。身体にふれると熱い。普通の人間なら救急車を呼ぶ体温だが、三条は猫の妖怪で普通の人間じゃない。 胸の傷は変わっていなかった。中央の黒い痣が、じわじわと広がっているようにすら見える。
砂月
(
さつき
)
がぶつけたなにかが、三条の身体の中でまだ燃えているのだ。 俺にできることがなにもない。水を飲ませようとしたが、喉を通らなかった。冷たいタオルを額に当てても気休めだ。医者は呼べないし、俺じゃ
霊符
(
れいふ
)
は使えない。支給された端末から
久世
(
くぜ
)
さんに電話してみたが、早朝なので気付いてくれなかった。 三条が低い獣みたいな声でうめいた。身体が震えて、シーツを掴む指が白くなっている。 前にもこんなことがあった。 三条がうなされていた夜。高尾山の宿坊に泊まったときだ。三条が苦しそうにしているのに気づいて、なにも考えずに肩に手を置いた。そうしたら三条が嘘みたいに静かになった。 ふれただけだ。それだけで鎮まった。 偶然かもしれない。でも今は、それしか手がない。 俺は三条の手を握った。高熱が出たように熱い手。握り返す力はない。でもうめき声がわずかに小さくなった。 もう片方の手を額に当てた。それもひどく熱い。だが手を当てたまましばらく待つと、三条の呼吸が少しだけ穏やかになった。 効いているんだろう、たぶん。もっとさわったほうがいいのか。 三条のシャツをめくって、胸の傷を見た。黒い痣のまわりが赤く脈打っている。傷にふれないように、そっと胸に手のひらを当てた。三条がびくりとしたが、うめき声が止まる。 肌に直接手を添えたほうがいいらしい。 三条のシャツを脱がせた。ボタンを外して、腕を抜き、上半身を裸にする。 ——これは怪我人に対する応急処置だ。ほかに手立てが見つからない。 俺も覚悟を決めて自分のシャツを脱いだ。肌と肌を合わせたほうが効果があるかもしれない。根拠はないが、さっき手を当てただけで三条は鎮まった。密着すれば、もっと効くかもしれない。 ベッドに横になって、三条と向かい合う。三条の胸に自分の胸を押しつける。腕を回して抱き込んだ。今の三条の身体は、体温計でエラーが出るほど熱が高いだろう。 図体のでかい野郎同士が、ベッドで密着し合って寝転がっている。俺も自分から積極的にやっている意味がわからない。 三条は俺の相棒だし、短い付き合いでも俺を守って、俺だって三条を守ってきた。ここで死なせてたまるか。ただ、それだけだ。 傷に俺の肌があたった瞬間、黒い痣の端がかすかに退いた。 ——信じられないが、効いてる。 目に見える変化だった。ゆっくりだが、黒い痣の輪郭が縮んでいる。三条の呼吸も少しずつ深くなっていく。 俺はそのまま三条を抱えて、じっとしていた。うめき声が消えた。呼吸が穏やかになって、身体の震えも止まっている。 このまま寝てくれるか、そう安堵したのも束の間、三条がもぞりと動いた。 「おい、起きたのか」と声をかけようとしたが、俺は息を呑んだ。 三条の目が変わっている。瞳孔が縦に細く裂けて、虹彩が金色に光っていた。猫の目だ。暗い寝室の中で、金色のふたつの光が俺を見ている。 「三条——」 返事はなかった。 三条の手が俺の手首を掴んだ。鉄の防火扉をこじ開けた怪力だ、振りほどけない。 一瞬で上下が入れ替わった。背中がマットレスに沈み込んで、三条の身体がのしかかってくる。かなり重い。 俺よりも骨格のしっかりした男の全体重がかかっている。腰を浮かせようとしたが、三条の膝が俺の太腿を割って入り込んで、身体ごと押さえつけられた。 両手首を頭の上で掴まれている。片手で、二本まとめて。三条の手は俺より一回り大きくて、手首の骨に指が食い込んでいた。 猫の目が俺を見下ろしていた。犬歯がわずかに伸びている。はぁはぁと浅い息を繰り返し、理性の膜が剥がれた顔だ。 ——やられる。 そう思った瞬間、三条が俺の胸に顔を埋めて、震え始めた。のしかかった重さはそのままなのに、しがみつくというより、縋りついている。 「……にげ、ないで……」 掠れた声が胸元から聞こえた。 「おねがい、します……にげないで……」 すすり泣いていた。金色の猫目から涙がこぼれて、俺の胸を濡らしている。すべての体重で押さえつけられて、手首を握りつぶされそうなくらい強く掴まれているのに、こいつの声は怯えた子供のそれだった。 三条は懇願しながら、俺の胸の真ん中を舐める。 舌がざらついていた。人間の舌じゃない。猫の舌みたいに細かい突起が肌をこすって、汗を掻き取っていく。ぞわっと鳥肌が立った。 三条の喉がくるると鳴る。胸の痣がわずかに縮んだ。 「……もっと……ください……」 舌が首筋に這い上がった。耳の下を舐められた瞬間、背筋を電流が走る。 「っ——あっ——」 情けない声が出た。ざらついた舌が耳の下の薄い皮膚をこするたびに、ぞりぞりと音がする。痛くないが、ぞわぞわと腰の奥まで響く。 舌が鎖骨の窪みに降りて、溜まった汗を吸い上げられた。吸う力が強い。肌が引っ張られて、赤い跡が残る。泣きながらやっているのに、舌と唇だけが俺の身体の反応する場所を探り当てて、見つけたら執拗に繰り返した。 さらに下のほう、乳首を舌先で転がしてくる。 「——んっ、ちょっ」 変な声が出た。自分の声じゃないみたいだった。猫の舌で乳首をこすられる感覚は、なにかの拷問だ。三条が吸い上げて、歯先でかすかに引っ掻いて、また舌でぞりぞりと舐める。涙が俺の胸に落ちてくる。 「待て——なん、だ……さん、じょ……」 俺は力いっぱい抵抗したが、三条はびくりともしない。引き続き、舌が腹に降りた。肋骨をなぞり、臍のまわりを舐めて、腰骨の出っ張りに歯を立てる。 泣き顔のまま、俺の身体を隅々まで舐めていく。三条の広い胸板が俺の身体に押しつけられていて、汗で肌が滑る。逃げ場がない。三条の身体の下に完全に収められている。 舐められた場所が全部、ひりひりと熱い。心臓が早鐘を打っている。男に身体を舐められて反応するなんて、考えたこともなかった。なのに身体の芯がじわじわと熱くなっていく。 三条の手がベルトにかかった。泣きながら、震える指で。——なのにベルトを外す手つきだけは迷いがなく鮮やかだった。ズボンと下着を一緒に引き下ろされて、脚から抜かれる。 「おい——待ってくれ——!」 三条は顔を上げた。金色の目が涙で濡れて光っている。 「……ああ……おいしい……」 三条の顔が腰のあたりに降りてきた。内腿を舐められ、舌が柔らかい皮膚をこする。太腿のつけ根に鼻先がふれた。猫みたいににおいを嗅いでいる。それだけで腰の奥がぞくりと疼いた。 「っ——おい——」 三条がくわえた。一気に深く。 熱い口の中に収められて、頭が真っ白になる。三条は泣いていた。泣きながら俺を咥えている。涙がぼろぼろ零れているのに、口の中のざらついた舌が裏側を舐め上げた。 「——っあ、ま……て、やぁ、あっ!」 猫のぞりぞりした舌が、いちばん敏感な場所を直接こすっている。普通の舌でされるのとは刺激がまるで違う。頭の芯が痺れて、勝手に声が漏れた。 三条の頭がゆっくり上下する。深くくわえるたびに喉の奥が絞まって、引き抜くときにざらついた舌先が先端を撫でた。同時に喉がくるくると鳴っていて、その振動まで伝わってくる。 「あっ——待って——やばい——」 腰がうずいて勝手に動いてしまう。三条の大きな手が腰骨を掴んで押さえつけた。骨に指が食い込む。逃がさないとばかりに、その手で深く咥え直して、喉の奥まで。 「っ——あっ!」 出た。我慢できなかった。身体中の力が全部持っていかれる。三条は一滴も零さずに飲み込んだ。ごくりと喉が動くのが見える。 相棒の口の中へ射精するなんて、と俺は青ざめながらも胸の傷を見た。黒い痣が半分くらいまで縮んでいる。俺の身体から出たもので、三条の傷が治っていく。 三条が口を離して、俺の身体の上に這い上がってきた。金色の目がまだ濡れている。泣きやんでいない。でも瞳の中に、さっきまでとは違う光がある。肉食動物が飢えている光だ。 「……もっと……ほしい……あなたを、食べたい」 三条の手が俺の太腿を撫でた。まだ震えているが、手つきには迷いがない。 内腿をぐいっと開かれた。三条の大きな手が俺の膝を押し広げて、身体の間に入ってくる。三条の指が自分の唇に入り、唾液で濡らした。引き抜いた指が下に降りていく。 「え——ちょっ——そこ——」 三条の指が俺の後ろにふれた。一気に身体がこわばるが、指先は止まらずにゆっくり入ってくる。太い指だった。俺の指より一節ぶんくらい長い。 「——っあ、痛っ!」 三条の指が少し遅くなる。金色の目が不安そうに俺を見ていた。涙の跡が頬に光っている。 「……ごめん、なさい……でも……」 「……っ……」 三条の指が中でゆるやかに動いた。痛みを避けるように探って、角度を変えて、ある場所にふれた瞬間。 「——っう、ああ!」 なんだこれ、こんな感覚は知らない。声が止められなかった。身体の奥から快感が突き上げてきて、腰が浮いてしまう。 逃げようとした腰を、三条の空いた手が掴んで引き戻す。腰骨を鷲掴みにされて、そのまま中の指がその場所を押した。 「あ——っあ——待って——なに、これ——っ」 三条がそこを覚えた。俺がよがった場所を繰り返し擦る。指が一本増えた。太い指が二本、中で動くたびに身体が押し広げられていくのがわかる。痛みよりも快感のほうが勝っていて、自分の身体がどうなっているのかわからなくなっていく。さっき一度出したばかりなのに、もう腰の奥に熱が溜まっていた。 「あっ——あっ——だめ——!」 止まらない。三条の指が中で動くたびに、腰が勝手に揺れる。声が漏れる。普段の野太い声がとっくにどこかへ行ってしまって、自分でも聞いたことがないような喘ぎ声が漏れ出ている。 三条の指が抜かれた。 「……全部……ほしい……おねがい……」 三条がスラックスを脱いだ。下半身が俺の脚のあいだに入ってきた。 てらてらと先走りの液を漏らしながら、三条のものは暴力的に勃ち上がっている。目をそらそうとして、そらせない。まさか、それを挿れるのか。 「……む、むりだって! よせ!」 三条の大きな手が俺の腰を軽々と持ち上げる。すりっと穴の入口へ亀頭を押し付けた。ぬるりとした感触にぞくっとする。 「……にげないで……」 この状況で三条を殴って正気に戻すぐらいしか手がないだろう。 泣きながら懇願して俺の中に入ろうとしている男を、俺はなぜか拒絶できなかった。自信満々で無敵の陰陽師さまの姿じゃなくて、この捨て猫みたいに震えている三条こそが、きっと本来の姿なんだろうと思えてしまって。 三条のものが、ゆっくりと入ってきた。 指とはまるで違う。太くて熱い圧が身体の中をじわじわと押し広げていく。息ができなくなった。中を裂かれるような痛みと、そのもっと奥にある、身体が勝手に締めつけてしまう熱さが混ざって、頭がまともに動かない。 「——っ、ぁ……っ……」 根元まで入った。内臓を直接押し上げられるような圧迫感に、目の奥がちかちかする。三条の身体が俺の身体に完全に重なっていた。汗で滑る胸と胸が密着して、三条の心臓の鼓動が直接伝わってくる。 胸の痣がまた縮んだ。ふれている面積が増えるほど、治りが速くなる。 三条が動き始めた。泣きながら腰を動かしている。汗と涙が俺の胸に落ちてくる。腰を引いて、押し込んで——さっき指で見つけた場所を、奥から突き上げてくる。泣きべそかいているくせに、そこだけは迷わなかった。 「う……あっ、そこ——やば——ああ!」 声が止められない。三条の腰が動くたびに、あの場所を正確に擦られて、頭の芯から快感が弾ける。男に抱かれて気持ちいいなんて、どうかしてる。なのに身体が勝手に三条の動きに合わせて揺れている。 三条の大きな手が俺の腰を掴んで引き寄せた。角度が変わって、もっと深く入ってくる。 「ひ——っあ——」 もう自分の声じゃなかった。三条の腰が打ちつけられるたびに、ベッドが軋んで、汗で滑る肌がぶつかる音がして、俺の口からは止めようのない声が漏れ続けた。 三条が俺の首元に顔を埋めた。耳元で荒い息がかかる。くるくると喉が鳴っている。泣き声と喘ぎが混ざって、俺の耳元で溶けている。 「……にげないで……にげないで……」 ただそれだけを繰り返している。腰を動かしながら、泣きながら、ずっと。 三条の動きが深く速くなった。俺の腰を掴む手に力が入って、骨が軋む。この快楽から逃げられない。頭がおかしくなっている。腹の奥が痺れて、脳みそが溶けそうだ。 そのとき、三条の唇が動いた。 「……お慕い……申し上げて、おります……」 熱に浮かされた声だった。うわごとみたいに、途切れ途切れに。 「あなたを……ずっと……七百年前、から……待って、いました」 なんのことだ。考えようとした。三条の腰が深く入って、思考が吹っ飛んだ。 「……慕って……おります……ずっと……」 「なに——言って——」 返事にもなっていない。三条の動きがさらに速くなって、俺の中の熱がどうしようもなく膨れ上がって——。 白く、飛んだ。 気がついたら、天井を見ていた。 身体が重い。全身の力が抜けている。隣に三条の体温がある。三条の腕が俺の腰に回ったまま動かない。 三条の胸が見えた。 黒い痣が消えていた。跡形もなく。胸の肌がきれいに戻っている。 ……治ったのか。 三条の顔を覗き込んだ。目を閉じて、静かに呼吸している。苦しそうじゃないし、うなされてもいない。穏やかな顔だった。涙の跡が頬に残っている。 ぐっすりと、深く眠っている。いつもどこかに緊張を残している男が、完全に力を抜いて無防備に。何十年も、何百年も眠れなかった人間がようやく眠りについたみたいな顔だ。 起き上がろうとして違和感に気付く。腰が痛い……なんなら、全身が痛い。 三条の手が、俺の手首を掴んだ。 目は閉じたまま。寝ているのか起きているのかわからない。 「……一緒に、寝てください」 小さな声だった。さっきまでの
猫又
(
ねこまた
)
の気配はなくて、いつもの三条の声。 俺は黙ってベッドに戻った。三条の手が手首から腰に移って、ゆるく抱き寄せられた。 カーテンの隙間から光が差し込んでいる。もう昼近いかもしれない。 隣で三条が静かに眠っている。 俺は天井を見ながら、さっきの言葉を思い出していた。 『お慕い申し上げております。七百年前から』 意味がわからなかった。七百年前に俺は生まれてもいない。誰かと勘違いしているのだろう。 こんなひどい目に遭ったのに、なぜか胸がざわついた。 理由なんて考えられるほど、俺も頭がまわっていない。三条の体温が隣にあって、呼吸が穏やかで、俺はいつの間にか眠っていた。
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