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第11話 ざまぁの代償
あの痛快な宴の席がどうやって幕を閉じたのか、実はあんまり覚えてない。
妃たちの悔しそうな顔を見てすっかり気をよくした俺は、運ばれてくる上質な酒をついぱかぱかと飲みすぎてしまった。
気がついたら、俺の身体は宵の体に抱かれて運ばれてた。
長い廊下を静かに進む規則的な振動が、お酒でふわふわになった脳裏に心地よく響く。
「ざまぁみろぉ……」
腕の中に収まったまま、俺はしまりのない顔で、ろれつの回らない文句を吐き出していた。
「おれ、なんも悪い事してないよらぁ……たら実家をたすけて、悠々自適なくらし、したかったらけらのにぃ……」
スープにガラスを入れられたこと。
女たちの嫌な視線。
お酒の勢いでぽろぽろと溢れ出す本音に、俺を抱き上げる宵の腕が、一瞬だけぴくん、と強張る。
宵は何も言わず、ただ俺の額に自らの額を小さくコツンと落としてきた。
自分の部屋に戻ると、宵の手で婚礼衣装が優しく緩められた。
そのまま肌着一枚の姿でベッドへ転がされる。
アルコールで頭の中がじんわりと温かく、身体がうまく動かない。
あー……めちゃくちゃ気分いいな。
「よいぃ……」
自分でも驚くほど甘ったるい声が出た。
その瞬間、シーツに長い指先が突き立てられ、俺の視界がぐらりと傾く。
「お酒、弱いんだね……なんて顔してんの……」
「うるへぇ……ぜんぶ、おまえが……わるいん、ろ……」
宵が、余裕のない顔をして俺の上に覆いかぶさってきた。
いつも綺麗に整えられている前髪が少し乱れ、見下ろしてくる眼が暗がりのなかで獣みたいにぎらぎらしてる。
ざまあみろ。
宵の首筋に手を回すと、そのまま宵が俺の後頭部を支えて、唇が触れる。
あー……、キス、久しぶりだ。
「ん、ふ……」
お酒のせいで感覚が敏感になっている身体に、宵の舌がじりじり融けるみたいに馴染んでく。
何度も角度を変えて深く貪られるたび、頭の芯が痺れていくみたい。
「ふふ、きもちよさそ」
「ん、ぅ……よいぃ……」
息が詰まるような深いキスの合間、鼻を抜ける自分の声が、やけに蕩けた音を立てている。
今の俺にはこの男の体温が、唇に吸い付く滑らかな舌の動きが、どうしようもないくらい心地いい。
宵は俺の唇を僅かに離すと、繋がった銀の糸を慈しむみたいに目で追った。
それから、熱を帯びた俺の額に自分の額を寄せてきた。
「……ねぇ、凪音」
耳元に届く声は酷く甘い。
「明日、目が覚めた後にお酒のせいだって言わないでね」
「……んー……しらねぇろぉ…」
やばいな、眠い。
限界に近い俺の反応に、宵は一瞬呆気にとられたようだったが、すぐにくす、と低く喉を鳴らして笑った。
「寝てていいよ、眠れるもんなら」
指先が俺の髪を優しく梳き、そのままゆっくりと頭を撫でてくれる。
その心地よさにいよいよ意識を手放しそうになった瞬間、おでことこめかみに、啄むような柔らかいキスが落とされた。
あったかい……。
前ほどいやじゃないな、なんか。
慣れるってこえぇな。
安心感に身を委ねようとした、その時だった。
「っ、あ……っ、」
不意に耳元へ熱い息が吹きかけられ、濡れた舌先が耳の中へと滑り込んでくる。
鼓膜を直接揺らすぴちゃ、と鳴る水音に、ぞくりと背筋が跳ね上がった。
眠気でとろけていた脳が、一気に快感に叩き起こされるみたいだ。
「ん、ぅ……ふ、よ……い……ぁ、」
「ん、きもちい?」
「……ぞくぞく……する……ぅっ」
さらに追い打ちをかけるように、肌着の隙間から滑り込んできた宵の指先が、胸の突起を捉えた。
「ぁ、ん……っんふ、ぅ……」
コリ、と爪の先で弾かれ、じっくりと捏ねるように圧をかけられる。
「寝てていいって言ったのに」
「ん、そんなこと……さぇ、て、たらぁ…ッ、ね、れない…っらろ…」
耳の奥を抉るように舐め上げられ、耳朶をちゅぅ、と吸い上げられながら乳首こねくり回されて。
頭はまだ夢の中にいるみたいにぼんやりしているのに、触れられる場所だけがじんじんと熱い。
「あ、ぅ……ん、……よ、ぁっ、い……」
「うん」
優しく応じる宵の声音とは裏腹に、服がどんどん脱がされていく。
下着まで完全に剥ぎ取られた俺の脚の間に、宵が割り込んでくる。
ぼんやりとした視界の先、宵の頭が、ゆっくりと俺の足元へと下がっていくのが見えた。
「ま……、まっ、へ、ろこ…っ、」
「ここ?」
太腿の内側にちゅう、と吸いつかれて、せり上がる熱に爪先が勝手に丸くなる。
直後、宵の唇が俺の緩く勃ち上がった場所をぱく、と咥え込んだ。
「ひぁ、つ……あ、んぅ……」
濡れた舌先で根元から先端までを一気に舐め上げられ、背中が勝手にしなる。
お酒のせいでただでさえ熱を帯びていたそこは、ずるりと宵の口内へと収められていく。
宵の口の中も酒のせいであちぃな。
ぴったりと密着する唇の圧と、喉の奥へと誘うような吸引が、脳の芯をがたがたに揺さぶった。
「よい……っ、あ、……や、ら……ふ……ッ」
「ひもひぃ?」
じゅぶ、ちゅぷと水音が静かな寝室に響くたび、頭の先まで快感が突き抜けた。
やばい、これ、無理だ。
気持ち良い。
身をよじろうとした瞬間、下腹部にぬるりと冷たい感触が走った。
いつの間にかローションを纏わせた宵の指がするりと滑り込んでくる。
「ひゃ、あく、……それ……やっあ…」
吸い上げられる強烈な快感と、後ろを内側から抉られる不慣れな刺激に、頭が飽和状態で。
全身がびくびくと大きく跳ね、シーツを掴む指先ががちがちに強張る。
「よい……っ、そえ、いッ、ちゃう、……らっ!」
逃がしてくれと宵の髪を掴んで引き剥がそうとしても、びくともしない。
さらに奥深くへと突き入れられ、後ろの指がこないだと同じ場所を捉える。
「あ、──っ、ふ、……んぅっ、……ひ、くぅ!!」
圧し潰されるみたいにそこを押された瞬間、限界を迎えた熱が、宵の口内へと吐き出される。
吐き出した熱の余韻で、俺の身体はただ、シーツの上でびくびくと勝手に震え続けた。
宵は顔を上げると、口元に溢れたそれを舌で綺麗に舐めとって、それから、くすりと笑った。
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