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第18話 シラフ
抱き起こされて、肩からするりと寝衣が滑り落ちる。
肩にも、鎖骨にも、噛み跡に似た赤い痣がぽつぽつと咲いていく。
「は……っあ、ぅ……」
「ね、凪音、俺のこと好き?」
「うる、さ……っ、しらな、あっ……」
そう問う宵の肌は風呂上りなのにひやりと冷たくて、火照った肌に心地いい。
ぴたりと寄せられた下腹部からだけ異常に熱を感じる事に思考が逸らせない。
宵の肩に凭れ掛かると宵が頭を撫でた。
肩、細いな。宵。
喘ぎをかみ殺すみたいにその細い肩に歯を立てる。
「ふふ、かわいい。きもちい?」
そう言いながら宵は背中を抱きとめる指をなぞる様に滑らせる。
耳元で聞こえる宵の息が荒い。
そのまま下着の縁を超えて、指先が後ろにぴた、とあてがわれた。
「ん、そこ……っ、や、だ」
「やだじゃないでしょ?」
くぷ、と音を立てて宵の長い指が中に入ってくる。
「あ、あ、ま……っ、や……」
「ねぇ?俺のこと好き?」
思わず顔を上げてぱちんとあった宵の目が柔らかくて。
睫毛、長いな。
宵にぐしゅぐしゅと後ろを攻め立てられながらどうでもいいことばっかり頭に浮かんで、消える。
「ん……っ、しつ、こ……っ」
「ねぇ何回も聞きたい」
宵の指が奥の気持ちいいとこばっか叩いて、頭の奥がじりじり痺れるみたいで。
宵の声だけが頭の中でぐらぐら反響してるみたい。
「……あっ、すき、だから……っ」
「だから?」
「ま、って、い、きそ…っ、」
「いきたい?もうちょっとこうされてたい?」
「あ、わかんな……っひぅ……っ」
一番気持ちいい所に触れられた瞬間、爪先まで力が入って、思わず宵にしがみついた。
俺しか抱いてないって言ったくせに。
嘘つき。
いや、違う。
嘘じゃないなら、それはそれでなんなんだよ。
「あ、ま、ってよい……っだめ、い……っ」
宵の指に翻弄されたまま、中が宵の指を飲み込むみたいにきゅう、と動くのが分かった。
「すきって、言って」
「ん……っ、すき、…っよい、……はぁ……あっ、よい……」
まだ身体が絶頂の波に支配されて視界がぼんやり滲む中、ぎゅう、と力を込めて抱きしめられた。
俺、いま、めっちゃ宵の名前呼んでたな。
「凪音。大丈夫?」
おでこにちゅ、とキスが何度も落ちて、ようやく焦点が定まる。
宵は見たことも無い顔でこっちを見てた。
さっき、俺の部屋に来た時とも、いつもの飄々とした笑顔とも違う顔。
「ん」
少しだけ力の入るようになった腕を宵の肩に回して、重い身体を起こして、唇でその唇に触れた。
「なんで、そんな顔してんの」
「ん?凪音かわいいなって思って」
嘘つけ。
だったらそんな泣きそうな顔すんじゃねぇよ。
「なぁ……、もう、挿れたい」
宵の零れ落ちる涙か汗か分かんない水滴を指先でぐい、と拭って。
挿れたい、なんてあんま思ってないけど。
お前のなら欲しいって、俺今多分そう思ってる。
自分が思ったよりずっと甘えるみたいな声が出て、ちょっと自分でびっくりしたけど。
それで宵の涙がとまったから、いいや。
「……凪音」
ず、と鼻を鳴らした宵があんまりにも子供っぽくて、思わず笑いそう。
それなのに顔だけがぐしゅぐしゅで。
ようやく見つけてもらえた迷子みたいな顔してる。
「ん」
これ以上甘やかすための言葉なんか知らないから、ちゅ、と音を立ててキスをして、そのまま舌を滑り込ませた。
宵の影が覆いかぶさって来て、後ろにぴたりと熱が当たる。
あぁ、なんか、ぞくぞくする。
キスで唇が塞がったまま、押し広げるみたいに宵が俺の中にじわじわと埋まっていく。
「――――ッ」
「……だいじょぶ?凪音?」
「……あ、…っ、く……」
心配そうに眉毛を下げる宵を見て、ぎゅ、と抱きついた腕に力を込めた。
大丈夫じゃない。
薬も無い、シラフでもない挿入って結構、きつい。
痛いのもだけど、何より恥ずかしい。
宵の視線が至近距離にあって、じいっとこっち見てるから。
「きつそう……、抜く?」
「あ……はぁ……い、いから……っう」
初めての時はあんなに強引に抱いたくせに今更そんな心配すんなよお前。
俺は足を宵の腰にきゅ、と巻きつけた。
「うご、い……っひ!」
動いていいよ、そう言おうとした俺の言葉を待たずに、巻きつけられた足だけで俺の意図を汲み取った。
ホント食えないな、お前は。
ゆっくり動き出す宵に溺れるみたいに勝手に空気を求めて、口から声と息が溢れ出す。
「凪音、痛くない?大丈夫?」
「い、っ、へー……きっ、はぁ、あ」
「かわいい……ほんと、もう……」
「うる、さ……っひ、あ、そこ……っん」
宵の睫毛は濡れたまま、ベッドに置き去りになった俺の両手をしっかりと握りしめる。
ほんと、なんでそんなボロボロ泣いてんのお前。
俺が男だからか。
跡継ぎがどうとか、妃がどうとか、そんなこと考えてんのかな。
……知らない。
今は知らないし、考えたくない。
「ね、知ってる?」
「ん……っ、なに、が……あッ…」
宵の腰が俺の一番奥のとこ、ごつん、てぶつかって、目の前がちかちかした。
「凪音は、いつもエッチの途中で意識飛んじゃうの」
そういえば。
薬の時も、酒の時も、そうだったかもな。
「かわいくて、大好き」
そう言われて宵のが奥を何度もごつごつと叩く。
「あ゛……っ、ま……ッや……――ッ」
「いきそうだね。凪音気持ち良くなると、目がうるうるする」
「しら……ッ、あ、ひ……ッまって……ッそこ、だめ……っ!」
奥を抉られるたびに身体の中からぐらぐらと熱が湧いて、意識がふわふわしてくる。
宵に“えっちの途中で意識が飛ぶ”なんて言われた手前、意地でも飛んでやるもんかと思うけど。
「あ……っ、だめ……おく……ッ」
「うん、気持ちいいね。一緒にいこっか」
「ん……っ、あ、はぁ……ッ、やだ、イ……ッ」
宵首筋に手を回して、何度も汗で滑る肩を抱きなおす。
宵の幸せそうな顔が、至近距離にあって。
なんか、あぁ、もう、いいやって思った。
「いくよ、凪音」
「……よ、い……っ、あ……――!」
あー、やばい、今までで一番気持ちいいかもしれないこれ。
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