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命拾いしたな!③
促されるまま職員室を出る。志乃と佐々木は、もう少し詳しく事情を聞くために職員室に残るように言われていた。
「……っ、悔しい」
長く続く廊下の真ん中辺りで立ち止まり、眉を寄せてつぶやきを漏らす。気をつけていれば自分一人でも対抗できると考えていた。その浅はかさが今回のことを招いたのだ。もう二度と前世のような屈辱は受けないと、心に固く誓い決めていたのに、あっさりと志乃に敗北してしまった。それが地団駄を踏んで叫びまわりたいくらいに悔しくてたまらない。同時に、不安も襲ってくる。カンニングの噂は瞬く間に広がるだろう。そうなったとき、輝と都城は蓮斗の味方になってくれるのだろうか?
誰にも手を差し伸べてもらえずに孤独の内に亡くなってしまったアリステラ。その記憶が、心を臆病にさせる。
──あの二人のことなら信じられる。信頼してるから……。でも、もしも裏切られてしまったらどうしよう。
あるかもしれない『もしも』を想像して心が恐怖に染まっていく。平坦で穏やかな道を進もうとすればするほどに、崖や谷底が目の前に立ちはだかってくる。願いと現実はいつも真逆を進み、蓮斗を苦しめてきた。
(しっかりしろ蓮斗っ!)
いつものように自分に喝を入れる。前を向くんだ。嫌なことを想像すればするほどに、自分のことを苦しめてしまう。それに、このくらいマダムトーリーの怖さに比べたら屁でもない。だから、輝や都城と顔を合わせたら、いつもみたいに笑ってはしゃいでいればいい。
無理をしている。それでいい。平気なフリは得意だ。アリステラだってずっとそうやってきた。
今は耐えよう。我慢して、苦汁を飲みながら引き下がる。そうして最後には蓮斗が勝つのだから。
(ふん!命拾いしたな!)
職員室の方を睨みつける。挫けたりなどしない。先に心が折れたほうが負けてしまうから。
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