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人質③
けれど、今日は大好きなウィンナーが一個しか入っていない。悲しくてしょぼくれていると、隣から可愛らしいタコやカニの形をしたウィンナーが、蓮斗のお弁当へと乗せられ始める。うさぎの形のウィンナーが最後に置かれると、まるでウィンナーの楽園に足を運んだかのような、幸せ気分になった。
「あげる。この間食べてしまったからそのお返し」
輝の言葉に蓮斗の気分は急上昇する。この間はウィンナーを食べられてしまって腹が立ったけれど、ここまでされてしまうと許すほかないだろう。
「ふふん♪このウィンナーに免じて許してあげる」
「嬉しいな。沢山作ってきたかいがあったよ」
「え!?輝が作ったの?」
驚いてしまう。彼は眉目秀麗なうえに、料理までできるのか。少しだけ悔しい気持ちになりながら、蓮斗は定番のタコさんウィンナーを口へと運んだ。この瞬間はまさに至福だ。ウィンナーの大食いがあればぜひ参加したい。そのくらい美味しい。
「お味はいかがですか?」
「苦しゅうない!次はもっと食べたいな!」
「承りましたお姫様」
談笑しながらお弁当を食べ進めていく。こんなにも素を出せるのは輝を信じると決めたからだろう。シリルとだってこんな会話はしたことがない。アリステラとシリルは立場に雁字搦めにされて、こんなふうに気持ちを伝え合う機会すら取ることができなかったから。
──アリステラとシリルには圧倒的に会話が足りていなかったのかもしれない。
蓮斗は輝と笑い合いながら強くそう感じた。もっと話をしていれば、もしかしたら結末は違ったのかもしれない。後悔の連続のような日々だった。だから、今こうして幸せを感じられることが嬉しい。
「はい、あげる」
「いいのかい?」
「輝にだけ特別」
あと一個残っていたタコさんウィンナーを差し出すと、輝が素直に口を開けてくれる。そこに、優しくウィンナーを放り込んだ。咀嚼しながら凄く嬉しそうに笑顔を向けてくれた輝を見つめ返す。好きだってなんだか叫びたい気分になった。
「放課後一緒に職員室に行こう。俺からも無実だって証言したいんだ」
「うん。ありがとう」
先程まではあんなに辛い気持ちだったはずだ。けれど今はそんなことはない。それもこれも、強い味方ができたからだろう。
「俺もついていっていいですか?」
扉の開く音がして、顔を上げると真面目な顔をした都城が屋上に入ってくる姿が視界に入ってきた。
「……都城」
「噂を聞いて慌てて来たんだ。一緒に勉強してたし、俺だけはお前が落ち込んでるかもしれないって思ってさ」
蓮斗の隣に腰掛けた都城に、満面の笑みを返す。本当に嬉しいと思ったからだ。やはり意地を張っていたのは蓮斗だけだった。輝も都城も初めから助けるつもりでいてくれたのだ。
「ありがとう二人も」
蓮斗は両サイドにいる二人へと改めてお礼を伝えた。二人が味方でいてくれるのなら、どんなことだろうと乗り越えていける。蓮斗はそう確信していた。
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