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僕も……①
蓮斗は日直の仕事のために一人で居残りをしていた。日直日誌に授業内容を書きながら、前世について思考を巡らせる。輝は相変わらず前世の記憶を取り戻してはいないようだ。志乃からの陰湿な嫌がらせも止まっている状態。ただ一つわからないのは、シリルがアリステラに抱いていた感情だった。
(……いっそ前世で嫌いだとはっきり言ってくれていれば、悩むこともなかったのに)
アリステラは冷たくされることはあっても、嫌いだと直接言われたことはない。けれど、アリステラを断罪したのは他でもなくシリルだ。そのときの氷のように冷めた視線を思い出すだけで、身震いが止まらなくなる。
(やめだやめだ!はやく日誌を書いて持っていこ)
考えても謎は深まるばかりなうえに、傷を自らえぐってしまう。それならいっそ、考えないほうがいい。気持ちを切り替えると、日誌へと集中する。
「日直だったんだね」
声に反応して顔を上げると、教室の入り口に輝が立っているのが視界に入る。生徒会の帰りなのかもしれない。教室へと入ってきた輝は蓮斗の後ろに回ると、覆いかぶさるように日誌を覗き込んでくる。急に近づいた距離に、蓮斗の顔は一気に赤みを帯びた。
「近いんだけど……」
「わざとって言ったら怒るかな」
「っ……べつに」
日誌の最後の一行で手が止まる。吐息が耳にかかり、背筋がムズムズしてしまう。頬に唇を寄せられると、蓮斗のキャパはぐんと狭まってしまう。
「綺麗な字だね。ほら、あと一行で終わりだよ」
「書くから離れてよね!」
「うーん……それは嫌だな」
蓮斗の胸元に腕が回されて、後ろから包み込まれる。指先が恥ずかしさと早鐘を打つ心臓のせいで震えていた。集中しようと念じながら書きすすめていく。たっぷりと時間を使い書ききると、手が伸びてきて日誌を閉じた。
そのまま顎を掴まれて後ろを向かせられると、深く濃厚で甘いキスをされる。それを当然のように受け入れてしまっている蓮斗。その自身の感情の変化が案外悪くはない。
「んっ、輝だめっ」
忘れそうになるけれどここは教室だ。誰かに見られたら大変なことになる。それに、キスをされるたびに下半身が少しずつ立ち上がってきていた。口内を舐められると気持ちがよく、与えられる快感は少しずつ下へと降下していく。
「立っちゃったね」
輝が揶揄うように耳元で囁いてきた。蓮斗は羞恥心に任せて輝を睨みつける。なにか文句でも言ってやらなければ気がすまない。
「誰のせいだと思ってるんだよ!変態!アホバ会長!」
「だって仕方ないんだよ」
「なにがだよっ」
「蓮斗のことを見ていると触れたくてたまらなくなるんだ。これでも我慢している方なんだけどな」
「もっと、我慢しろっ!って、ぁん」
喋っている途中でスラックス越しにペニスを刺激されてしまう。そのせいで自然と口から甘い声が漏れ出た。手のひらで転がすように優しく揉まれる。前のめりになり与えられる快楽から逃げようと試みてみた。けれど、これといって意味なさない。それどころか、もっと触れてほしいと強請りそうになる。
輝との触れ合いはいつだって蓮斗を熱くさせる。けれど、今回はいつもの比ではない。いつの間にチャックが下ろされ、下着の隙間からペニスを取り出されてしまう。
「もっ、だめっ」
「耳まで真っ赤だ。ここもピンク色で凄く綺麗だね」
亀頭を手のひらで刺激される。そのたびにカリも擦れて、腰が揺れた。初めて他人から与えられる快感に、耐え切れず全身が小刻みに震えている。
「見られるってっ、ひゃぁ、へん、たいっ」
「大丈夫。死角になっているから誰にも見えないよ」
そういう問題ではない。反論したいが、蓮斗なそんな余裕はあまりなかった。ペニスを扱きながら、腰回りや胸元に手を這わせられる。与えられるすべての感覚が、興奮を少しずつ高ぶらせていく。
「傷はもう消えているね」
その言葉に一瞬思考が停止する。もしかして、暴力を振るわれ、空き教室で倒れていたときのことを言っているのだろうか。あれから随分と期間が経っている。怪我もすっかりなくなってしまっていた。
「あんなの、ぁ、まだ気にしてたのっ?」
「ずっと気になっていたんだ」
「っ、平気だって、んっ、ちょっと!喋ってるときに、手を動かさないでよね!!ッ、あぁ!」
文句を言った瞬間一際強く扱かれて、蓮斗は呆気なく輝の手の中に欲を吐き出してしまった。床が体液で濡れているのが視界に入り、背徳感と羞恥心で脳内が爆発しそうになる。原因である輝は澄まし顔でハンカチを取り出すと、手を拭き始めていた。
「こっっっの、ばっか!」
振り返って輝の胸を拳で何度も叩く。そんな蓮斗の行動を輝はただ笑いながら受け止めていた。
「何度でも叩いていいよ。君の元気な姿を見ると嬉しくなるから」
「意味わかんないからね!」
真っ赤な顔で睨みつける。輝はそんな蓮斗を穏やかさを含む笑みで見つめ返し、小さく「好きだよ」と言葉を贈ってくれた。
大切な人から初めて贈られたその言葉が胸の中に染み込んでくる。前世でずっと求め続けていた言葉だった。だからなのだろうか。嬉しすぎるせいか言葉が形となって出てこない。もしも、シリルがアリステラに一度でいいから、この言葉を送ってくれていたのなら、なにかが変わっていたかもしれない。そう思えるくらいに、心を的確に揺らしてくれる一言だ。
「僕も……」
好きだと伝えようとしたとき、ピーンポーンと放送の音がなった。
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