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記憶の真偽②

「都城~ミーティングするってよ」  そこまで考えたとき、都城に男子生徒が声をかけてきた。瞬間、思考が停止する。 「まじ?ごめん、部活のミーティングするらしい。行くわ」 「えっ、ちょっ!都城!?」  止める暇もなく、部活仲間と一緒に去っていく都城に不安げな瞳を向けてしまう。そんな蓮斗の様子を見ていた輝が、「俺と二人きりは嫌?」と尋ねてきた。顔ごと視線を輝へ向ければ、浮かべられた困り顔に辿り着く。その表情の意味を蓮斗は上手く察することができない。 「……嫌とかじゃない。けど……」 「けど?」 「ん~……」  どうしても口篭ってしまう。 『前世の記憶があるなら教えろ』とはっきり伝えることもできるだろう。けれど、もしも輝がシリルのときのように冷たくなってしまったら……。そんなタラレバを浮かべてしまい、一歩先に進もうと足を上げようとするも、後ろに下がってしまうような心持ちにばかりなってしまう。 「なにかしてしまったかな?」 「……もしも……」 「うん」 「本当にもしもだけど……。僕がずーっと昔のことを覚えていて、そのときすっごく悲しいことが起こって、今もそれを忘れられないとしたら……その原因を作った人がすごく、ものすっごく僕にとって大事な人だったとして……その人に再会できたなら、輝はなんて声をかける?」 「……蓮斗はまだその人のことを好きなの?」  蓮斗はゆるりと首を振ってみせた。シリルのことを愛していたのはアリステラであって蓮斗ではないから。 「僕は今の|その人《輝》のことが好きなんだ。|昔の彼《シリル》のことを好きだと思っていた時期はとうの昔に過ぎ去ってしまったから」 「それなら、気づかないふりをしてもいいんじゃないかな。蓮斗にとって辛いと思う過去を無理矢理思い出す必要も、引っ張りだす意味もないでしょう」  輝の言葉が一線を引いてくる。そのことが悲しかった。まるで、アリステラとシリルの過去をなかったことにでもしたいかのような言い方だったからだ。蓮斗は流れ出しそうな涙を必死に耐えながら、席を立つ。 腹が立ってしかたなかった。必死に絞り出した勇気を否定されたような気さえする。 ──僕は輝にどう答えてほしかった?  自身に問いかけてみても答えは出ない。ただ、はっきりと言えるのは、輝がくれた言葉は蓮斗の求めるものではなかったということ。  席を立ち上がった衝撃で、目の前に置かれていたグラスが倒れてしまう。零れた水が蓮斗の制服を濡らし、輝が慌てた様子で布巾を貰いに厨房へと向かってくれた。その背を見つめながら、いつも置いてけぼりにされていたアリステラの記憶を思い出す。  「っ、輝の馬鹿野郎!!」  気がついたら人目も気にせず、彼の背に思いっきり叫び声を浴びせていた。立ち止まり振り返った輝が、瞳をまんまるにさせているのが見える。その視線から逃れるように、蓮斗は濡れたままその場を駆け出す。  片付けをしないといけないだとか、注目を浴びてしまったとか、そういうことを今は考えることができない。  教室に駆け込むと、荷物を手に持ち寮へと足早に帰る。まだ授業は残っている。輝も置いてけぼりにしてしまった。 (くそっ、くそくそ!僕のバカっ!輝だって悪いんだっ。僕はこんなに悩んでるのにっ!)  輝は前世の記憶を持っているし、覚えているはずだ。ますますわからなくなる。シリルはアリステラのことを嫌っていた。その証拠に常に冷たく当たられていたから。けれど、輝は真逆だ。顔を合わせるたびに蓮斗へとちょっかいをかけてくる。まるで風邪でも引いてしまいそうな温度差。そのせいで本心がわからなくなる。 「あぁ~~もうっ!」  頭を抱えながら寮への道を進んでいく。蓮斗の頭の中は大混乱状態だった。

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