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正面衝突①
昼休み、輝が教室まで迎えに来てくれた。一緒に生徒会室まで向かうためだ。クラスメイト達がざわついていたが、今更輝との関係を隠す気もないため、堂々と隣に並び廊下を進み始めた。
生徒会室は四階の一番端に位置している。他の教室とは少し違う造りをしているようで、両開き扉になっているようだ。中にいる人に知らせるようにノックをした輝が、先に生徒会室へと入る。蓮斗も少し緊張しつつ後ろをついていく。
「あれ?今日のぶんの仕事は終わっていたはずじゃなかった?」
一人で仕事をしていた志乃が、笑顔のまま顔を上げる。そうして、輝の後ろに蓮斗が居ることに気がつくと、途端笑みに影が差したのがわかった。その表情の変化に蓮斗は苦笑いが漏れそうになる。
「どうして生徒会のメンバーでもない彼がここにいるの?」
「志乃に話したいことがあるから連れてきたんだ」
「……そう。聞くよ」
席から立ち上がった志乃が蓮斗へと近づいてくる。輝は蓮斗の隣に並び、志乃の動向を伺っているようだった。前世がシリルである輝は、志乃がルキナであることを既に察しているのだろう。
蓮斗は力強く前へと一歩を踏み出し、自分から志乃へと近づき返す。考えてみると、アリステラだった頃から、こうして|彼《彼女》と面と向かってきちんと話をしたことはなかった。結局はアリステラも逃げていたのかもしれない。シリルがルキナを選んだのだという事実を受け入れられなかった。いや、始まってすらいなかった恋の終わりを受け止めきれなかっただけだ。
|輝《シリル》の本音を聞いた今は更に後悔ばかりが募っている。もっと早くこうして話をしていれば、あんな結末にはならなかったのかもしれないと。
「僕は輝のことが好きだ」
「……それで?そんなことをあえて僕に伝える理由はなにかな」
志乃の冷ややかさを帯びた瞳に見つめられることが、前までは少しだけ怖かった。彼には決して敵わない。それなら自分の平穏のために逃げたほうがいい。蓮斗はそう思いながらも、ずっと本当の自分の気持ちがどこに向かっているのかを手探りしていたのだ。
「吉澤先輩……いや、志乃。僕は、あんたには負けない。昔みたいに後悔するのは真っ平ごめんだ。だから、輝が好きなこの気持ちを捨てたりなんてしないし、あんたからの嫌がらせに屈したりなんてしない」
蓮斗の平穏な生活の中に輝は必要不可欠だ。誰かに止めろと言われて、止まれる気持ちではない。今世こそは大切な人たちと生きていく。もう、決めたことだ。
「輝は?君は彼のことが好きなの?その様子だと前世の記憶はあるんでしょう?」
「あぁ、そうだね。俺は蓮斗のことを愛してる」
輝が質問に答えた瞬間、志乃が隣にあった卓上に思い切り拳を叩きつけた。鈍い音が響いて、生徒会室内に静寂が訪れる。肩を震わせながらゆっくりと顔を上げた志乃は、血走った目を蓮斗と輝に向けてきた。
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