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悪足掻き①

今日もいつも通り登校して、お昼には輝と共にタコさんウィンナーの入ったお弁当を味わう予定だった。けれど、それは寮からの登校途中に現れた志乃の存在によって叶わなくなってしまった。  複数人の大柄の男子生徒と共に目の前に現れた志乃は、薄暗く淀んだ瞳を蓮斗へと向けてくる。 「なにか用?早く行かないと授業が始まっちゃうんだけど」 「生徒会室で話したときに思ったんだよ。僕のお願いを聞いてもらえないなら、二人が離れるようにもう一度仕向けたらいいんだってね」 「いじめ作戦もカンニング事件のときも失敗したのに、今度はなにをするつもり?」 「簡単な話だよ。君が一生部屋から出たくなくなるくらい苦しめてやればいいんだから」  志乃が指示をすると、男子生徒達が一斉に動き出した。咄嗟に逃げようとした蓮斗だったが、複数の手に羽交い締めにされてしまい身動きが取れなくなってしまう。抵抗するも、力では敵わずそのまま道を外れた場所へと引きずられていく。  しばらく林の中を進んでいると、古びた倉庫のような場所へと辿り着いた。転がっている古い備品を見て、使われなくなった体育倉庫かもしれないと当たりをつける。鍵は開いているのか、鈍い音をたてながら扉が動く。 「痛っ」  乱暴に倉庫へと投げ捨てられた蓮斗の目の前に、志乃が仁王立ちした。 「皆少し席を外していてもらえるかな」 「へいへい」  男子生徒達が外へと出ていく。わざわざ二人きりになったことを警戒しつつ、立ち上がろうと、コンクリートの地面に付いていた手に力を込めた。しかし、足で肩を踏まれ、前髪を乱雑に掴まれたことで動けなくなってしまう。志乃の冷めた視線が突き刺さる。 「動かないでね。君は一生僕より格下じゃないといけないんだからさ」 「汚い足を退けてよね。それに、僕はいつだって一番最高に輝いてるんだ」  睨み返しながら言い返すと、足に乗る体重が増す。痛みを感じて眉をしかめると、蓮斗のその表情に少しだけ満足したのか、志乃が口元に薄暗く笑みを浮かべた。 「そうやって強気でいられるのも今のうちだよ」 「なんでもあんたの思う通りになるとは限らないだろ」 「っ、そういう生意気な所は本当に変わらないね!」  肩を力一杯蹴られて尻餅をつく。追い打ちをかけるように腹めがけて飛んできた足を、蓮斗は咄嗟に掴んで止めた。バランスを崩した志乃の身体が後ろへと倒れる。それに乗じるように、蓮斗は志乃の上へと覆い被さる。  砂埃が舞い、視界を曇らせる。咳き込んだ志乃が、「退いて!」と大声を上げながら蓮斗の胸を押す。けれど、体重を乗せている蓮斗はビクトもしなかった。 「僕のことがそんなに嫌いなわけ?」  頭に血が登っている志乃とは真逆に、蓮斗は冷静に尋ねる。ずっとわからなかった。どうして志乃(ルキナ)蓮斗(アリステラ)をこんなにも嫌っているのだろうか。  蓮斗が志乃のことをさほど嫌ってはいないため、尚更だ。  たしかに志乃へは何度も苛立ちを感じた。けれど、嫌いにはなれない。それは、蓮斗の瞳に映る彼の姿が、まるで前世という鎖に雁字搦めにされた子供のように映ってしまうからだ。ルキナと志乃は別人だ。もちろん蓮斗もアリステラも、輝だって。  そのことに気づいてほしい。未来へと向かって広がっている選択を自分自身で狭めないでほしいのだ。

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