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悪足掻き②

「大っっ嫌いだよ!!君なんか消えてしまえばいい!」 「っ、消えたりなんかしない!ていうか、なんでそんなに嫌われてるのかわからないんだけど!沢山嫌なことされて迷惑してるのは僕なのにさ!」  叫ぶ志乃に合わせるように蓮斗も声を荒らげる。その瞬間、志乃が身体を横に回転させて、次は蓮斗が組み敷かれる番になった。 「うるさい!うるさいうるさいうるさい!お前なんかに僕の気持ちなんてわかるわけないんだ!生まれつき恵まれてるお前に、貧乏男爵家に生まれたというだけで馬鹿にされてきた|僕《ルキナ》の気持ちがわかるわけがない!!呑気にぬるま湯のような人生を生きてきた綺麗なお前に、領地のために泥だけになり、ときには身体まで差し出してきた僕の苦しみがわかってたまるもんか!!」 「っ、そんなの教えられてないんだからわかるわけないだろ!それに、アリステラだって大変だったんだ!公爵子息として貴族の模範になれるように努力していたし、変な噂を流されたりしても気にしてないふりをしたりしてっ、沢山!たっっくさん傷ついてきたんだよ!」 「そんなの可愛いものじゃないか!っ、そういう脳天気なところがムカつくんだ。羨ましかったんだ!歯痒かったんだ!だからっ、だから奪ってやったんだよ!!お前が手に入れるはずだった全部を、ありとあらゆる方法を使って僕が手に入れたんだ!それのなにが悪いんだっ。僕だって……私だって幸せになる権利はあるはずじゃないか……」  目尻に涙を浮かべながらルキナは気持ちを蓮斗へとぶつける。間違っていると否定することは簡単だろう。実際に蓮斗はルキナのやり方に賛同などできない。  自身の幸せのために他人を落とすやり方を許すことなどできないからだ。けれど、志乃もやり直そうとしているのだということはわかる。与えられた二度目の人生を、自分が納得できる形で歩んでいきたいと藻掻いている。それが蓮斗に伝わってくるからこそ、かける言葉がなかなかみつからなかった。 「アリステラはルキナのせいで死んだんだ。教会で祈りを捧げながら……まだ二十代だった。あんたは自分のためなら他人の人生なんてどうでもいいわけ?」 「……当たり前だろ。他人のことなんか気にしていられないよ。それで地獄に落ちようとも、僕は自分の欲しいものはすべて手に入れてやる」 「その結果、ルキナは罪を暴かれてすべてを失ったのに?」 「次は失敗なんてしないさ」  志乃は不敵な笑みを浮かべながらゆっくりと身体を起こした。蓮斗は床に寝転んだまま、眉を寄せる。  強気な態度を崩してはいないものの、外には志乃の仲間が待機している。それに、今の彼は時限爆弾のように、少し刺激すると爆発してしまう危うさを有している。だからといってこのままなにもせず引き伸ばしても、状況は変わらないままだろう。むしろ悪くなってしまう可能性が高い。  無意識のうちに輝の顔が頭の中に浮かぶ。身体を起こしながら、常にポケットに入れているボールペンに触れる。そうすると、心が穏やかさを取り戻していく。

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