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お別れ③

あれだけのことをされても、やはり蓮斗は志乃のことを完全には嫌いになれなかった。だから、今後彼が人生をしっかりとやり直せることを祈っている。輝や都城にはお人好しだと言われるのかもしれないけれど、本気でそう願う。 「あんだけのことされて嫌いじゃないとか、ドMなわけ?」 「失礼だな!こんなに可愛い僕のどこがそう見えるわけ!?」 「いや、わけわかんないから」  突っ込みを入れられて、蓮斗は膨らませていた頬を緩めた。  もっと早く腹を割って話せていればよかった。こんな風に冗談を言い合って、放課後には一緒にご飯を食べる。そんな当たり前の未来も夢見てしまいたくなるから。  けれど、後悔は先には立たない。だから、一分一秒が大事なのだと痛いほどに理解させられた。 「これからどうするの?」 「……決めてない。僕の両親はそこそこ大きな病院を経営しているんだ。今回のことで相当怒っていて、親戚の家に追いやられることになったよ」 「……そうなんだね」 「自業自得だって笑わないわけ?周りは皆笑ってたよ」  悲しげな表情を浮かべる志乃へ、蓮斗は横に首を振ってみせた。 「笑わないよ。その苦しさを僕も知っているから」  だからこそ、掛ける言葉を探してしまう。志乃を相手にすると、いつもお喋りなはずの蓮斗は言葉が見つけられなくなる。  それでも「頑張れ」だとか「君なら大丈夫」などという軽い言葉を贈ることはできなかった。 「いつだって顔を上げて堂々としていればいいんだよ。志乃は悪いことをしたけど、後悔していないのならうつむくのは似合わない」  だからこの言葉を贈ることにした。  受け売りだけれど、この言葉はきっと志乃の背を押してくれるはずだ。 「やっぱり僕、君のこと嫌いだよ」  そう言って志乃は微かに笑ってくれた。その顔はいつもの作り笑いではなく、素の表情なのだとわかる。  すぐに表情を消した志乃に「ばいばい」とだけ伝えて、部屋を出る。ゆっくりと廊下を進みながら、なにもかもが終わった事実を噛み締めた。 

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