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番外編①(輝視点)

生徒会室で仕事をしていた輝は、スマホの画面に通知ポップアップが表示されたことに気がついて、手を止めた。 『今度の土曜にウインナーの食べ比べ展があるから行くよ!』  愛しの恋人らしい一方的なメッセージに、思わず笑みを零す。  書類を整理しながら、蓮斗と初めて会ったときのことを思い浮かべた。 実のところ、空き教室で蓮斗と出会う前から、輝は香波蓮斗という存在に気がついてはいたのだ。前髪で顔を隠し、目立たないようにしていたのだろう。けれど、その陰気とも取れる姿が逆に悪目立ちしていたことを、本人は気がついていない。 空き教室で彼に声を掛けたのは、本当にたまたま横たわる彼の姿が視界の端に映ったからだった。優しさなどでは決してない。ただ、生徒会長としての役目だけはまっとうしたかった。 ──本当にそれだけのはずだったのに……。  スケジュール帳を確認しながら、たまたま空いていた土曜日にタコの絵を描く。そのときもか輝の口元は緩んだまま。 蓮斗と出会ってから、デートらしいことをしたことがなかった。そのため、輝も蓮斗と出掛けられることが嬉しい。それに、都城ではなく自分を誘ってくれたことにも、少しの優越感があった。 蓮斗がウインナーをキラキラとした瞳で見つめている姿を想像するだけで、幸せな心地になる。輝の世界は蓮斗一色。だからこそ、彼の願いをできる限り叶えてあげたい。守ってあげたい。 誰にも渡したくなどなかった。   当日、寮に迎えに行くと、ドタドタと部屋の中から足音が聞こえてきた。数秒後に玄関扉が開き、可愛くめかしこんだ蓮斗が顔を出す。どうやら都城は居ないようだ。そのことに少しだけ安堵する。もしかしたら、蓮斗なら都城も誘っているかもしれないと、少しだけ疑っていたからだ。 「おはよー!都城も誘ったんだけど、二人で行ってこいって言われちゃってさ」 「そうだったんだね。都城君にあとでお礼を言っておかないと」 「なんで?」 「二人きりにしてくれたからだよ」  わざと耳元で囁くと、蓮斗がタコのように顔を赤く染めた。その表情の変化が可愛らしくて、輝は笑みばかり浮かべてしまう。 「っ、行くよ!遅れちゃうでしょ」 「そうだね」  自然と指先が絡まる。繋がった手の温もりに輝は少しだけ安堵感を覚えた。蓮斗と手を繋ぐたびに感じてしまう。きっとそれはシリルの記憶が蘇ってくるからなのだろう。  シリルはアリステラの体温を思い出せない。横たわる彼を抱き寄せたときの冷めた温度が脳裏にこびりつき、離れてくれないからだ。だからこそ、蓮斗の体温を感じるたびに、切なさと喜びに心が震えてしまう。

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