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番外編②(輝視点)

 ウインナー展の会場に着くと、デカデカとウインナーの看板が建っていて驚く。それを蓮斗はこれでもかというほどに瞳を輝かせながら見ていた。今にも涎を垂らし、かぶりつきそうな勢いだ。  何十種類ものウインナーの販売所や、試食コーナーが設営されており、会場は大盛り上がり。 「輝見て!あんなに大きなウインナー初めて見たよ!!あれは白い!あっ、あれっていつも食べるやつかな!?」 「落ち着いて。一つずつ見て回ろうね」  興奮する蓮斗の手をしっかりと握っておく。放っておくとはぐれてしまいそうだ。  時々、男同士で手を繋いでいる姿を、他人に物珍しそうに見られるけれど、輝は気にならなかった。シリルとアリステラの産まれ育った国では、同性同士の恋愛は一般的だったうえに、婚姻まで認められていたから。  それに、躊躇して後悔するよりも、この一瞬を思うままに動き大切にしたい。 「輝、あーん」 「ん?あぁ」  蓮斗が試食のウインナーを口元に運んでくれる。言われるがまま口を開けて咀嚼すると、嬉しそうに満面の笑みを見せてくれた。今すぐにでも抱きしめてしまいたい。そう思ってしまうくらいに、蓮斗は魅力的だ。  輝が蓮斗を好きになるきっかけとなったのは、やはり出会ったあの瞬間。手を振り払われたとき、前世の記憶を思い出したことも理由の一つなのかもしれない。けれど、なによりも、蓮斗の前向きで自分の意志をしっかりと持っている姿に惹かれていった。  それなのに時々、すごく弱々しくも見えるときがあって目が離せない。元気で、明るくて、笑顔がすごく可愛らしい。  この気持ちが本当に輝自身のものなのか、初めは確信が持てなかった。アリステラにそっくりな蓮斗。そんな彼のことを好きになったのは、シリルの影響ではないのか?  悩んでも答えは出ず、迷惑だと思われていることは承知で、何度も蓮斗に会いに行った。そのたびに気持ちは増していく。 「なにぼーっとしてるの?ほら、行くよ!」  手を引かれて歩みだす。  アリステラはいつもシリルの後ろに付いてきてくれていた。けれど、蓮斗はこうやって輝の手を引いてくれる。彼はアリステラではない。自分の気持ちがはっきりとしたのは、蓮斗に前世の記憶のことを打ち明けたときだった。 「次はどこに行くの?」 「ホワイトソーセージのとこ!ほら、もたもたしないでよね!」 「はいはい。はしゃぎすぎて転ばないでね」  駆け足の蓮斗を見守りながら、輝も後ろを付いていく。  こんな風に愛する人と過ごせる時間がくることなど、想像もしていなかった。どれだけ望んでもシリルにはそのささやかな夢を叶える手段がなかったからだ。  二つ年上の腹違いの兄──アルフィーは、国王と愛人であるメイドの間にできた子。その後に王妃がシリルを産むと、周りの期待は正当な血筋であるシリルへと向けられることとなった。  また、アルフィーは元来自由な質のため、成人を迎えると城を飛び出し、年に一度帰ってくるか来ないかという状態だったのだ。  そのせいもありシリルの王位継承はほぼ確定している未来だった。 (兄様のことが羨ましかったよ……)  輝は優しいけれど自由すぎるアルフィーの顔を思い浮かべながら、微かに笑みをこぼす。あの自由さがシリルの道を狭めていた。そのことをアルフィーも自覚はしていただろう。けれど、シリルは恨むことはしなかった。兄の自由さは、危うい立場故のものだと理解していたから。  アリステラに惹かれたのは、それも要因なのかもしれない。  目の前をピョコピョコと跳ねる黒髪を撫でると、ブラウンのアーモンドアイが輝の姿を映し出す。その数秒後には頬に赤が差し、また一瞬後に頬が膨らむ。 「突然なにするんだよ」 「はしゃいでる蓮斗があまりにも可愛いから」 「っ、そういうのやめてよね」  照れ隠しなのだろう。強気に返されて、愛おしさに胸が苦しくなった。  今でこそ伸び伸びとしている蓮斗だけれど、前世ではとても大変な立場にいたことを知っている。  公爵子息であるアリステラは、常に周りの見本とならなければならず、一つの過ちで他人の数倍非難されてしまう。美しい容姿のせいで、令嬢達から妬まれていることもあった。子息であるにもかかわらず、令嬢のように蝶よ花よと育てられたアリステラ。  その中性的な危うさは周りを魅了し、時には自身でも気づかないうちに敵を作ってしまう。  |柵《しがらみ》ばかりの自分と似ている。だから、まるで惹かれ合うことが当然のように、お互いがお互いのことをすぐに意識し始めた。 ──なに者よりも愛おしくて、時に危うい彼を俺が守っていこう。  そう心に決めたのは十歳くらいの頃だったろうか……。今思えば、あの頃は王太子であるという意味をなに一つ理解できていなかったのだ。  

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