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番外編③(輝視点)

ウインナーを食べ尽くした蓮斗と共に、手近な椅子に腰掛けて休憩をする。 「ウインナーって紀元前8世紀頃からあるんだって!それがどのくらい前なのか想像もできないけどさ、そんなに長い間愛されてるウインナーってやっぱり最高だよね!」  得意げに、展示してあったウインナーの歴史掲示板の内容を教えてくれる蓮斗。温かい瞳で彼を見つめながら、輝は相槌の代わりに何度も頷き返す。蓮斗は見ているだけで飽きない。コロコロと変わる表情はいつまでも見つめていられるほどだ。 「今日はありがとう」 「いいんだよ。楽しめたようでよかった」 「うん!お土産屋さんがあったから、そこで色々買ってから帰ろう」  立ち上がった蓮斗に手を引かれる。周りの目など、蓮斗も気にはしていないのだろう。欠けてしまったピースを嵌めるように、前世では過ごせなかった時間を少しずつ取り戻している。もっと時間の流れをゆったりとしたものにできたなら、自身の瞳に蓮斗の姿を一分一秒でも長く刻み込める。けれど、彼と一緒に過ごす時間は、泡のように儚く、すぐに過ぎ去ってしまう。  お土産屋を回りながら、前世でアリステラと共に城下町へと遊びに行った日のことを思い出す。  アリステラのデビュタントがあと一年に迫っていたあの頃。シリルは選択を迫られていた。国王から直々に呼び出され、アリステラとの関係をはっきりとさせるように諭されたのだ。  シリルは未来の国王だ。国を守り、王族の血を後世に残すことが役目。そのため、王太子だけは、必ず女性を王妃として迎えることが定められていた。どれだけアリステラが美しくとも、女性でなければ王妃にはなれず、してやることもできない。 「どうしても離れがたいというのであれば、愛人にして側に置いておけばいい。アリステラは末息子だ。上に二人の兄が居るため、公爵家も惜しみはしないだろう」 「……それは無理です。私は、アリステラを愛しています。純粋で穢のない心優しい彼を愛人になどできません」 「ならば諦めることだ」 「っ、ですが!」 「シリル。お前は次期国王だ。その意味を、立場を、しっかりと考えてみろ」  頭ではわかっている。シリルの立場では、自由に選択することすら難しいということも理解しているつもりだ。それでも諦めきれなかった。だから、シリルから城下町へ一緒に行かないかと誘った。  ウインナー味のお菓子や、燻製チップス、ウインナーの大容量パックなどが並ぶ店内を見て回りながら、輝は目尻を熱くさせる。   楽しそうな蓮斗の表情を見つめていると、城下町での出来事が鮮明に思い出されて、切なくなった。 |「どうかした?」《シリルったら、今日は様子が変だけど。なにかあったの?》 |「昔のことを思い出していたんだ……」《……なにもないよ。アリステラと過ごす時間が凄く好きだと思っていたんだよ》  いつだって|蓮斗《アリステラ》は|輝《シリル》の些細な様子の変化に気がついてくれていた。それなのに、本当のことを伝えられなかったことが悔やまれてしまう。 「俺はね、蓮斗とこうして過ごす時間がなによりも大好きだ。でも、時々そのうちに来るかもしれない別れを想像して怖くなってしまうんだよ」  だからこそ、転生した今は本音を伝えたい。  重いと言われ、付きまとうなと怒られようとも、真っ直ぐに気持ちを伝えられるうちに、できる限り言葉にしよう。  それがきっと、償いにもなると信じているから。 「ふふ、今更そんなこと言ってるわけ?輝って意外と怖がりだよね」  クスクスと蓮斗が笑みをこぼす。その姿があまりにも眩しく目に飛び込んでくる。 「ずーっと一緒だよ。だって、僕達っていわば運命の鎖で繋がれた恋人同士ってやつでしょ!鎖ってところがポイントね!糸は切れちゃうけど、鎖は絶対切れないから」 「……蓮斗はすごいなあ……」 「当たり前でしょ!僕はいつだってスーパーミラクルに凄くて、最高なんだからね!」 「っ、うん。本当にその通りだ」  蓮斗の明るくて、前向きなところに救われている。  資産家の息子、生徒会長、そんな肩書ではなく、輝自身を見てくれる蓮斗のことを好きになった。

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