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番外編⑤(輝視点)

お土産を買い終えた蓮斗と輝は、会場を出ると宛もなく街の中を歩いていた。 「アリステラのデビュタントの前に、一緒に城下町へ出掛けたときのことを覚えているかい?」 「当たり前でしょ。あの日が、シリルとアリステラにとって最初で最後のデートだったんだから」  目を細め、懐かしむように蓮斗が答えてくれる。あの日のことを彼がどのように思っているのかはわからない。輝もあえて聞くことはしなかった。 「ずっと謝りたかったんだ。結局君との約束は……」  踊ろうと約束した。けれど、結局シリルとアリステラには、その後一度も触れ合う機会は訪れなかった。馬鹿にされていたルキナをシリルが助け、その後ずっと話を聞いてあげていたからだ。  それからもシリルはルキナにばかりかまっていた。 「もういいの!」  けれど、謝罪の言葉を言い終わる前に、蓮斗によって遮られてしまう。口元に人差し指が充てがわれて、輝はそれ以上なにも言うことができなかった。 「アリステラはルキナを許した。それはシリルとの溝も全部含めてのことだよ。だから、もう謝罪はいらない」 「でも……」 「いらないってば。それに、過ぎたことは変えられない。去ってしまったものは戻らない。それなら、今を目一杯楽しむほかないでしょ!」  伸び伸びと両手を大きく広げて、蓮斗は満開の笑顔を見せてくれる。過去のことなど本当に忘れてしまったかのように、晴れやかで清々しい表情だ。 (……俺は君のそういう所が羨ましくて、大好きなんだ)  両手を広げる蓮斗に向かって、勢い良く駆け出して抱きしめた。何度だって胸の中に閉じ込めたい。存在を確かめ合いたい。  輝にとっての蓮斗は、まさに爛々と輝く太陽。 「ちょっ!見られてるよっ、恥ずかしいってば!」 「見られたっていいよ。今君を抱きしめられるのは、この瞬間だけだから」 「っ、わ、わけわかんないし!」  グイグイと胸を押されるけれど、その手に力は込められていない。だから、蓮斗が本気で怒り始めるまでは、抱きしめていよう。  前世ではできなかったことや、伝えられなかったことを少しずつ消化していきたい。そうしていけばきっと、『できなかったこと』よりも『したこと』の方が上回る未来が訪れてくれるはずだから。

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