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【第9話 推しと推し】図書室での密会

 開校記念日の翌日、大河と宗次郎は久しぶりに登校した。  昨日の二人は、食事以外の時間はずっと部屋に引きこもっていたから、よっぽど疲れていたのだろう。いつも騒がしいだけに心配になってしまった。  ホテルに滞在していた時に溜まってしまった洗濯物がようやく片付いた頃、そっと部屋に近付いてみる。部屋の中は静まり返っているから、もしかしたら寝ているのかもしれない。 「本当によく頑張りました」  二人の部屋に向かってポツリと呟く。夏目が小学校の教員だったら花丸をあげたいくらいだ。そんな二人を誇らしく感じた。  大河と宗次郎が登校した日、学校中が色めきだっている。彼らはまさに注目の的だった。 「見た見た? 久しぶりにモトヤガがいたよ!」 「マジで? 教室覗いてこようかな?」  女子生徒が騒いでいるのを見かける度に、「どこにいても人気者なんだな」と感心してしまう。 「あ、モトヤガだ!」  みんなが熱い視線を向ける先には、大河と宗次郎が渡り廊下を歩いている姿があった。久しぶりに見る二人の制服姿はとても凛々しい。それと同時に、まだ高校生なんだということに驚かされてしまうのだ。自分と違って若くてキラキラと輝いて見えた。 「今日も推しが輝いている……」  惚れ惚れと推したちを眺めながら夏目は呟いた。  その日の放課後、夏目は一人で図書室にいた。ずっと後回しにしていた本の整理をしようと思ったからだ。  本棚は時々整理をしないと、きちんと分類されて置いてある本がグチャグチャになってしまう。しかし、図書委員になったからと言って進んで本棚の整理をしよう、という生徒はなかなかいない。だから図書委員を担当している夏目が、放課後本棚の整理をしているのだ。  元々夏目は読書が好きだったから、定期的に新刊を購入してもらったりもしていた。でも今の時代、紙の本を読む高校生なんて珍しいのかもしれない。 「相変わらずこの本棚高過ぎるだろう……低身長の僕には届かない……!」  足をプルプルと震えさせながら頑張って背伸びをしてみるのだけど、本棚の一番上まではどうやっても届かない。仕方がないと、溜息をつきながら椅子を持ってこようとした時──。 「この本は一番上の棚で大丈夫ですか?」 「え? あ、ありがとう」 「いいえ。僕も図書委員なので手伝いにきました」  そこには優しい笑顔を浮かべた宗次郎がいた。彼は背が高いから、夏目が届かない一番上の棚にも簡単に手が届いてしまう。その逞しい体つきに、同性である夏目もドキドキしてしまった。

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