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僕も先生が好きだから

「どうして僕がここにいることがわかったんですか?」 「同じクラスの図書委員の子から、職員会議がある日の放課後に、いつも夏目先生が本の整理をしていることを教えてもらったんです」 「そうですか……それでわざわざ手伝いにきてくれたの?」 「はい。すみません、いつもお手伝いできなくて」 「そんな! 今まで大変なお仕事していたんだから仕方ないじゃないですか? あんな大舞台をやりきったなんて、本当に立派ですよ! 本の整理くらい、僕一人でできますから」  突然大声をあげた夏目に驚いたのか、宗次郎が目を見開いたあとニッコリと笑った。 「ふふっ。ありがとうございます」 「え? いえ……突然大きな声を出してすみません」 「夏目先生は本当に僕たちのことが好きなんですね?」 「好きって……そんな……」 「僕たちのファンだってバレバレですよ」 「ちょ、ちょっと……本宮君!」  艶っぽい唇を吊り上げる宗次郎が、夏目の指にスルッと自分の指を絡ませてくる。それだけでどんどん鼓動が速くなってしまい、頬が火照り出した。 「先生」  耳元に響く低い声。思わずギュッと目を閉じれば本棚に体を押し付けられて、動きを封じられてしまった。恐る恐る宗次郎を見上げれば、いつもの笑顔は影を潜め、怖いくらいに真剣な顔をしていた。  その艶めかしい表情にゾクゾクッと背中を寒気が走る。子供のように我儘で甘えん坊の大河とは全く違い、宗次郎は本当に高校生なのだろうか……と疑いたくなるほど色っぽい表情をすることがある。その視線に捕らえられてしまうと身動きがとれなくなって、逃げ出すこともできない。夏目は美しい獣に追い詰められた、ちっぽけな兎のようだ。 「先生、この前リビングで大河とキスしていたでしょ?」 「え? なんで、それを……」 「大丈夫。そのことを誰かに言いふらしたりなんてしません。ただ、嫉妬しているだけです」 「嫉妬……?」 「はい。二人がキスしているところを見て、頭に血が上るほど嫉妬しています。僕だって……僕だって……」  意を決したように宗次郎が顔を上げる。いつも冷静沈着な宗次郎が今にも泣き出しそうな顔をしているものだから、夏目の心がざわついた。 「僕だって先生が好きだから」 「……え?」 「僕も先生が好きです」  その言葉を聞いた瞬間、夏目の頭が真っ白になる。今自分が目の前にいる男に言われた言葉が理解できなかった。 (宗次郎が僕のことを好き? 宗次郎が僕のことを……)  思考回路は完全に停止してしまい、呆然と宗次郎を見つめた。

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