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溢れ出した想い
放課後、突然大河からメールが届く。「なんで学校でメールなんて送ってくるんだ……」冷や冷しながら送られてきたメールをこっそりと読んで、更に度肝を抜かれてしまった。
『屋上に来て。来てくれないなら職員室まで迎えに行く』
あまりにも自分勝手な文章に思わず眉を顰める。なぜなら夏目はまだ勤務中なのだ。それに学校でこっそり会っていることが誰かに見つかったら……血の気がスッと引いていく。今の夏目にはバレたらまずいことが多すぎる。
懲戒免職……最悪のシナリオが頭に浮かんだ。
『なぁ来ないの? 職員室に迎えに行こうか?』
夏目の気持ちを煽るかのように届くメール。
「迎えに来られてたまるかよ!」
小さく舌打ちをしながら屋上へと向かった。
もうすぐ下校時刻が近付いている校内は、昼間に比べて静まり返っている。生徒のいない学校っていうものはこんなにも静かなのか、と少しだけ寂しさを感じた。空が少しずつ赤く染まり昼間はあんなに暑かったのに、今は風がひんやりと心地いい。
屋上の扉を開けた瞬間、強い風が吹いて夏目の癖毛をサラサラと揺らした。
「気持ちいい」
思わず目を細める。普段屋上にくる機会なんてほとんどない夏目にとって、そこはとても新鮮な場所に感じられた。
「夏目……」
「わっ!」
突然背後から抱き締められた夏目は思わず大声を上げた。
「ふふっ。本当に来てくれんだ。ありがとう」
耳元で大河の低い声がした。嬉しそうに笑いながら夏目をギュッと抱き締めてくる。「来いって言ったのは大河だろう?」そう言い返してやろうかと思ったが、夏目はその言葉を呑み込んだ。振り返った視線の先には、幸せそうに微笑む大河がいたから。そんな顔を見てしまえば怒る気すら失せてしまった。
逆に見慣れない大河の制服姿を見て、ときめきを隠し切れない。
「超嬉しい」
「こら大河、離れなさい。誰かに見られたらどうするんですか?」
「嫌だ。離れない」
「大河……」
「絶対に離れない」
まるで子供のように駄々を捏ねる大河。夏目の首筋に顔を埋めて抱き締める腕に力を込めた。
仕方ない……夏目は諦めて溜息をつく。大河が一度甘えん坊モードに入ってしまえば、何を言っても無駄だ。まさに馬の耳に念仏……。気が済むまで甘えさせてやるしかない。
「今日渡り廊下を歩いている時、夏目がずっと俺の方を見てた」
「み、見てません!」
「嘘だ。最近の夏目は、俺のことをずっと目で追っていることに気付いている? それとも無意識なの?」
気付かれていた……夏目の顔が一瞬で林檎のように真っ赤になる。大河の顔を見ることもできずに思わず俯いた。心臓がドキドキとうるさい。
「照れることないよ。俺だって夏目のことずっと目で追ってるもん。夏目のことが気になって仕方がないんだ」
「え?」
「夏目、可愛い。家に帰れば夏目に会えるってわかってるのに、放課後まで我慢できなかった」
優しい声色に誘われるかのように恐る恐る振り返れば、優しい顔をした大河と視線が絡み合う。
「夏目を独り占めできたらな……」
顎を囚われて強引に上を向かされる。大河の温かな吐息が頬にかかって、唇が押し当てられる。チュッと啄まれてから更に深く重なっていった。大河のキスは気持ちよくて、頭の中がボーッとしてくる。膝がかくかくと震えて崩れ落ちそうだ。
大河のキスを夢中で受け止めながら、心の中のカップから大河への想いが溢れ出したのを感じた。
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