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第15話
商店街で文化祭というイベントを提案したが今年の文化祭には間に合わず、プレイベントとして高校と商店街がコラボしたイベントを催そうということになってから数週間で様々な動きがあった。
まずイベント日は七夕祭りと合わせて七月半ばに行う事にした。
開催まで三ヶ月程しかないが学校側には例年文化祭を行っているという知識と経験があるので、準備期間はそのスピード感を持って商店街側を引っ張っていくことにしようという話になった。
学校側の準備としては他にイベント出店を募る為、各部活動に働きかけるチラシ作りをした。
将来的には商店街で文化祭というのが理想にはなるが、今年の校内スケジュールは既に保護者等へ告知済で変更が叶わない為、学校内での文化祭もこれまで通り九月に行われる。本当は各クラスからも参加を募りたかったが、本来の文化祭準備期間を踏まえて断念し、今回は部活動に絞って出店を募る事にした。
勿論、各部活動でも文化祭のみに力を入れたい、二度も準備したくない等の思いもあるだろうからそこは自由参加として可否の連絡を待つ事とした。
あとは学校長の許可を貰い、予算は生徒会に申請――とこの辺はコミュニティ部が動いたので綾太は詳しく把握していないが、それ以外にも予算の面はイベント開催に活用出来る助成金があるようで、その辺は純也の方から商店街側にアドバイスをして貰ったと倉本が話していた。
イベント運営はコミュニティ部が担い、綾太は正式な部員ではないため、商店街側との橋渡し的存在として倉本のサポートをしていた。
その仕事の大部分は打ち合わせである。
昔から在る店はイベントなんて浮ついたものを嫌がるかと最初の説明会は若干緊張したが、そこは流石に皆商売人で人を集めようという目的ならば反対するわけがないと賛成意見が大半を占めた。
中立派は店主が高齢の店舗や積極的にイベントに参加する気がない店舗で「あとは若いもんに任せるよ」というスタンスであった。
「ゆくゆくは我が校の文化祭も商店街で開催したいと考えており、今回はそれが実現可能であるかのプレイベントです。開催まで三ヶ月程ですので無理なくイベント参加出来る店舗に絞って――」
倉本が発言する横で綾太は椅子に座って手元の企画書に目を落とし、時折視線を上げて岳の姿を盗み見る。
長机には先程倉本が読み上げていた「無理なくイベント参加出来る」であろう若手の店主らがずらりと並んでいる。
美容院の木場、バーガーショップの用賀 、コーヒーショップの村上 は彼らの店を利用している事もあり見知った仲であるが、岳の隣に座る明るい茶髪の青年を綾太は知らない。
涼やかな目元で爽やかな好青年に見えるが、こんな人物が冴えない商店街の中を歩いていれば目立つだろうに、綾太はこれまで一度も見掛けたことがなかった。
綾太がチラチラと二人の様子を見ている間に村上が手を挙げて発言をする。
「参加予定の市外のマルシェとイベント日が被っているため、今回は参加を見送りたい」
しかし後学のため、今後も打ち合わせには参加したいという何とも真面目でこちら側からしても喜ばしい内容だった。
倉本と村上が言葉を交わしている最中も綾太は岳と謎の青年の事が気になって頻繁に目を向けてしまう。そして二人が顔を寄せてひそひそと話しているのを見てとうとう我慢出来ずにはっきりとした視線を投げてしまう。
岳は気付いておらず、綾太から見て手前に座る青年の方が視線に気が付いて口端を上げる。笑い掛けられたのか笑われたのか、判断に困る絶妙な笑みだった。
既に本日分の倉本の説明は済み、雑談が許されると方々から好き勝手に会話が始まる。
岳は笑いながら皆の会話に相槌を打っている。そういえば最近はイベント事で動き回って忙しくしていたので岳のああいう笑顔を見ていないなと思い出す。
久し振りに岳と一緒に夕飯か風呂に行きたい。
この後は解散するだけだから誘ってみようかと席を立って岳に近付くと、岳も綾太に気付いて笑みをくれた。
「お前か、がっくんの周りちょろちょろしてんのは」
何処からともなく聞こえて来た声に綾太は足を止めた。幻聴ではなく、がっくんと呼ばれた本人にも届いているのだろう、岳も固まっている。
綾太は二歩ほど下がって、岳の隣に座っている青年の前まで戻る。
「え、俺すか?」
「お前以外に誰かいる?」
青年が立ち上がると、つられるように隣の岳も一緒に立ち上がった。その行動に困惑して綾太の視線が二人の間を行ったり来たりする。
「こっちはなぁ、木場さんから色々聞いてんだよ。がっくんと飯行ったり風呂行ったりしてんだってな? でも勘違いすんなよ。がっくんは誰にでも優しいんだよ! 誰とでも飯食うし、誰とでも風呂入るんだよ! あとお前な、背たけぇのムカつく!」
青年が吠えると岳がすかさず拳で頭を小突く。
「洋臣 っ、お前っ、誰でも良いみたいな言い方すんな! 俺はそんな乱れてねぇよ!」
もう一度岳が青年の肩を叩くとボカッと良い音が鳴る。
岳がそうしてくれるから綾太は特に言い返す必要がなくなってしまい、二人のやり取りをただ眺める。青年が言う通り、身長は綾太の方が高くて、倉本に褒められた時には何とも思わなかったのに今になって高身長を与えてくれた父母に感謝してしまう。
それから冷静になって周りの反応を確かめるが、商店街の関係者はまるでいつもの事のように皆目の前の出来事を気にせず自分たちの会話に夢中になっている。ということは綾太が知らなかっただけで青年は普段から岳に近付く男をこうやって牽制しているのだろうか。
この騒動の一因とも思える木場に目をやると、無関係ですと言わんばかりに目を逸らされた。
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