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第24話
綾太がClairに着いた時には菜帆が言っていた「モデルの子」は居なかった。
聞けば午前中から具合が悪かったらしい。無理をしてClairまで来て、木場のヘアメイクが済んだあとで体調が悪化し、トイレで何度か吐いたのちに座り込んで動かなくなったそうだ。
そんな状態でファッションショーに出るなど無理に決まっている。結局その子の親に連絡して、綾太が着く前に連れて帰られたという。
「風邪かな」
「暑いし食中毒の可能性もあるよね」
Clairの二階では準備万端のモデルらが帰って行った女子高生の心配をしている。
それは勿論気掛かりなことだが親が迎えに来たのだからそちらは保護者に任せて、綾太たちは別のことを考えなければならなかった。
「今からファッションショーに出てくれる女の子とか居るか? つか今何時だよ」
「私、会場に来てる友達当たってみます」
「じゃあ俺も倉本くんに連絡してファッションショー後のステージでの出し物の時間ずらせないか確認してみる。ずらせたらこっちは多少押しても大丈夫だろうし」
木場と菜帆と綾太が向き合って対策を話し合う。
時刻は一時半をとうに過ぎていて、二時開始予定のファッションショーまでもう時間がない。
ファッションショーのあとにはメインステージで行われる生徒らの出し物が待っているから両方の時間が被るのは出来るだけ避けたい。
岳の意思を確認したかった。
けれど岳は空間の一点を見つめて黙ったままでいる。
「男が足んないなら岳の兄ちゃん捕まえて出て貰うんだけどな」
木場の冗談に笑う余裕もなく「今回はレディース物が主ですからね」とこの上なく真面目に返してしまう。
「ここで迷ってても仕方ないんで倉本くんに連絡がてら俺も女の子探して来ます」
どうしよう、どうしようと、皆で輪になって相談しているだけで解決する問題ではない。
綾太が言ってその場を離れようとすると木場が「お前は着替えて準備してろ。俺が探してくる」と代わりを買って出てくれる。
「木場、綾太、待って。俺が出るわ」
「……は?」
綾太と木場の当惑の声が混ざって二階に響く。
「俺が女の子の代わりする。ウィッグあるよな? キャップ被るから目元はそんなゴテゴテにしなくて良い。リップは濃いめで頼む」
「女装すんの? マジで?」
木場の口から漏れた言葉を綾太も脳内に思い浮かべていた。
「マジよ。前もしたことあんだよ、遊びで。そん時は声出すまでバレんかったしイケるって」
明るく言う岳に木場の顔付きも変わり、返事はせずにウィッグの準備を始めた。
当初の予定ではオーバーサイズのトップスにミニスカートを合わせる予定だったが流石に足を出すと男だとはっきり分かってしまうということで細身のパンツに変えて超厚底のシューズを合わせたスタイルでいこうということになった。
「ミニでもおもれぇと思うんだけどな。そりゃ女の子みたいにスラッと綺麗な足にはなんないと思うけど脱毛してっから脛毛ねぇし、ツルッツルのピカッピカで喜んで貰えると思うんだけど」
「どの層が喜ぶんだよ」
最後までミニスカートを穿きたがっていた岳は着替えが終わってもブツブツと言い、木場が吹き出しながらリアクションする。
綾太の頭の中では「ツルッツル」というフレーズが繰り返し流れて一緒に銭湯に行った時のことが思い出されそうになる。
だが今はそんなことを考えている場合ではないので軽く頭を振って煩悩を払う。
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