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*第34話
「戻るのはやっ。髪の毛乾いてないじゃん」
バスタオルで頭を拭きながらリビングに戻ると岳が冷蔵庫から炭酸飲料と麦茶のペットボトルを取り出して運んでいる最中だった。
「急いでたんで」
「んな急がなくていいって」
岳から麦茶を手渡されて初めて喉の渇きを自覚した。
一気に半分ほど飲んでしまうと「岳さん」と声を掛ける。岳は忙しそうにキッチンとリビングのローテーブルを行き来しながら「んー?」と綾太の方へは目も向けず鼻で返事をくれる。
「あっ、そうだ、準備しとくわっつったけど、綾太昼飯食ってないよな? お祝い用にピザとかチキンとかあるから、それ食っ――」
今更ながらにそんなことを聞かれて、綾太は忙しなく動く岳の足を止めようと彼の腕を掴んで自分の方へと向かす。
「ん、なに?」
「昼飯は食ってないですけど、今はいいです。それより岳さん、俺に会う前に風呂入ってますよね?」
ほぼ決め付けで話して、抱き締めると岳の手が迷いを見せたのちに綾太の背中へと回ってくる。
「だから髪の毛濡れてたんだ」
「んなこといちいち気付くなよ」
「好きだから気付いちゃいますよ。それに岳さんも期待してくれてたんだなってすげぇ嬉しい」
「だぁー! 違ぇよ、期待とか……そんなんじゃ……」
「俺は期待してました。今日、岳さんと先に進めるんだって」
岳の首筋に顔を埋めながら息を吸い込む。体をくっ付け合っていると岳からの鼓動を感じられて心地良い。
「……ピザ温めたのに冷めちゃう」
「あとで俺がやりますから」
即答すると胸の中に居る岳が「あー」とか「うー」とか呻いて、やがて覚悟を決めたみたいに「よし」と呟いた。
「移動するぞ、綾太」
「え、どこに?」
「ベッド」
「ベッ……ド……って、いいんですか」
「やりてぇんだろ」
身も蓋もない言い方に「岳さんとだからですよ!?」と反論するも、スルーされて手を引かれリビングと寝室を繋ぐドアが開かれる。
甘い、岳の香り。
玄関を入った時よりも強く感じられて、くらくらと眩暈を起こす。
「座って」
ちょうど良く言われて、立っていられそうになかった綾太は指示された通りにベッドの上に腰掛ける。
岳はクローゼットを開けて、中を探るとすぐに綾太の元に戻って来た。
「真昼間からなにやってんだと思うけど、ここまで我慢させたのは俺だし、お前もちゃんと約束守って手ぇ出して来なかったからご褒美ということで」
ポイッとベッドの上に何かが放られた。綾太は目で追って、シーツの上に視線をやる。
転がっていたのはコンドームの箱とローションのボトルだった。
「一応確認だけど、綾太お前ゲイじゃないよな」
「……ゲイかどうかは考えたことないです。でも岳さんのことは好きです」
「男同士がケツ使うのは知ってる?」
「ネットで色々見たので分かります」
「今になって聞くのもずるいとは思うんだけどそういうのって抵抗ない? 挿れないで触り合いってのでも……」
「岳さんがやなら無理強いはしたくないです」
「お前はどうしたいの?」
「俺は……岳さんのこと抱きたいです」
「うん。いいよ」
その場で岳がパーカーを脱いで床に放る。
それを見て綾太も着ていたスウェットを脱いでTシャツ姿になる。寝室にも暖房が効いてあって寒くはない。それもあってか岳は勢いが良く、そのままパーカーの下に着用していたロンTも脱いでしまいそうで、綾太は彼の腕を押さえて制止する。
「俺、したいです。脱がせたい」
岳が頷いてベッドに上がってくる。綾太もベッド下に下ろしてあった足をシーツの上に持って来て、岳の方へと寄る。
一度軽くキスをした。水族館でした以来、二度目の口付けだった。
鼻息が荒くならないよう努めて浅く鼻で息をする。
「舌」
「え?」
「べえして」
僅かに唇が離れると岳が舌を出せと言う。素直に上下の唇の間から舌先を覗かすと岳がちゅうっと吸い付いてくる。
「ふっ、ぅ」
どちらの呼吸音か判断の付かない息が二人の間に立ち昇る。
舌同士が触れ合うとぴりぴりとした痺れが脳内まで響く。理性で何とか抑え付けていた欲望が綾太の中で暴れ出す。
「岳さ……っ」
両肩を掴んで岳をシーツの上に押し倒す。小さく呻き声が聞こえたが、岳がストップをかけないので綾太は彼が身に着けているロンTを捲り上げて脇から中へと手を差し入れた。
「りょ、ぁ」
手の平に吸い付くほど滑らかな肌を上下に撫でて綾太は上から岳に口付けを落とす。今度は岳に言われるまでもなく自ら舌を差し入れ、彼の舌先を追い掛けて口内を探る。
「ん、っ、は、あ……んぁっ、むね、や、ぁ」
手で岳の片胸を覆って柔らかな皮膚を揉み込み周囲の皮膚とは感触の違う胸の飾りに触れると指の腹ですりすりと弄る。
「岳さんの胸見たい」
腹辺りまで中途半端に捲り上がったロンTを胸元まで引き上げ、次は両手で岳の胸を揉む。
「は、ぺたんこ触ってもおもろくなくね」
「全然。興奮してやばいです」
瞬きを忘れていたようで瞼を一度閉じると目の奥がじんと痛む。再び目を開け、岳の胸元に顔を近付ける。
「岳さん、綺麗」
恍惚とした声色で呟くと、片方の乳首に舌を這わせる。
「う、あ、ぁ、りょ、た、待っ、ぁ」
唾液でべちゃべちゃにしてもう片方の乳首は指で捏ねる。硬く芯を持つと唇で引っ張るみたいに愛撫をする。
「おまっ、綾太っ、引っ張んなぁ、ぁ」
「すんませ、可愛くてつい……乳首ガチガチ、気持ちい?」
「気持ち良いに決まってんだろ、うあぁ」
指で弄っていた方の乳首も唇で食んで舌で転がす。
岳は両膝を擦り合わせたそうにしているが両足の間に綾太の体があるためにそれが叶わず、先程から彼の足が体にぶつかってくる。
「可愛いです、岳さん……下も触って良いですか」
「……良いけど……ほんと、初めてなの、お前」
「正真正銘童貞です」
胸を張ることではないが事実であるから言い放つと岳が穿いているズボンのボタンを外してチャックを下ろす。
腰を上げてと頼む前に岳が尻を浮かせてくれるのでズボンを引き下げる。現れた下着の中心部分が盛り上がって先走りの汁が布に染みていた。
岳が勃起をしている。
その事実を目の当たりにして感動が湧き上がってくる。と同時に少し前から変化を起こし狭い場所で窮屈そうにしていた綾太の股間が痛み出す。
「俺も、ちょっと……」
岳のズボンを取り去ってしまったあとで、綾太も下半身を楽にしたくてスウェットパンツだけでもと引き下げた。
「うわっ、めっちゃ勃ってんじゃん」
ボクサーパンツの上からでも分かるほどに隆起したものを見て岳が声を上げる。
「岳さんだって勃ってるでしょ。一緒です」
「俺はいんだよ、ゲイだから。てか、綾太……でかいな」
「銭湯で見てるじゃないですか……それに比べたことないから分かんないす」
下着越しに岳の先端に触れて染みが拡がっていくのを見る。
僅かに口をへの字にしていると岳がそれに気付いて「ごめん」と謝ってくる。
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