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第3章 ラトゥリオとアントス 第6話

 あの日から十五年が過ぎた。  王は、鍛え抜かれた心身をもって自身を制御し続けている。「いつか」「もし、また」という恐れは、常に頭の隅にある。彼自身気付かぬままに、疲労と孤独が積み重なっていたのだろう。「それ」は、突然訪れた。  森の中だった。  大地が揺れた。空間が裂ける。景色が歪む。赤い光が眼前にちらついた。 (なぜっ……抑え込めるか……何としてでもっ……)  そのための方法など見当もつかない。力ずくが効果がないことは身をもって知っている。だが絶望は許されない。もはや一刻の猶予もない――! 「うわっ」  男の声がした。続けてバキッと何かが壊れる音。顔を上げると、誰かが川に落ちたのが見えた。 「こっちへ来いっ」 「わっ」  引っ張り上げ、勢いで後ろへ倒れた。彼も倒れ込んできて、唇が触れた。  暴走が、止まった。 (何……?)  じんわりと、命を吹き込まれる感覚。口づけるたび、世界が正常に戻ろうとするのが分かった。古い文献の記述が頭に浮かぶ。 「力を貸してほしい」  レオが、世界を、ラトゥリオを救ってくれた。

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