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第1章 いつもと変わらない日常だったはずなのに……3

「でしたら一ヵ月ごとに決まった額をお支払いする形で、ご勘弁いただけないでしょうか」  僕にとっては身体を売って働くのだけは、なんとしても阻止したかった。でも、ここまで来て逃げることはできない。何より両親と同じ過ちを犯したくなかった。だから地道にコツコツ支払っていこうと思ったのだ。 「悠長だなあ。利子が発生するんだぞ」 「俺らが(かん)(おけ)に入るのを待って踏み倒すつもり?」  傍らに立つ男たちが険のある声で告げる。 「違います。もう少ししたら夏のボーナスが入るんです。大企業に勤めているわけではないし、入社二年目のため微々たるものですが誠意の証として、あるいは借金を死ぬまで払い続ける意思の表れとして受け取っていただきたくて」 「どうやら自分の立場ってもんが、わかってねえらしいな」  柳田さんは立ち上がり、腰をかがめ、座っている僕の顔を顔を(のぞ)き込んできた。  ニコチンと甘ったるいフローラルの香水、相性の悪いフェロモンに鼻が曲がりそうだ。 「おまえに残された道はふたつしかない。臓器を売るか、風俗で働くかだ」 「なんでですか? お金を返せば済む話のはず……手段は、なんだっていいでしょ!?」  お客様がいるのも忘れて、気がついたら、なかば叫ぶように声を荒げていた。心臓がいやな音を立て、身体が勝手に震える。  すると三人の男たちは、まるで弱者がいたぶられる姿を観客として見ている鬼畜なサディストのように、下卑た笑みを浮かべる。 「親に売られてヤクザの商売道具になったんだよ。痛い思いをしたくなきゃアルファの男どもに()び売って、しっぽを振るんだな。どっちを取るかは、もう決まってるも同然だろうが、名刺に書いてある番号に連絡をくれ」とまっすぐ立つ。  いつの間にか置かれていた伝票を手に取る。 「会計は俺が済ませとく。祝い金代わりだ」 「赤ん坊ができても安心しろよ。堕胎のうまい産婦人科を紹介するぜ」 「慣れたら、おれらにもサービスしろよ。全身ザーメンまみれにしてやるからさ!」  そうして男たちのバカ笑いが聞こえ、ベルの小さな音が鳴り、木製のドアが乱暴に閉められた。

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