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第38話 和合*

「すごく、白い」  詩鸞(しらん)の肌をするりと撫でつつ、令雅(れいが)が溜め息をつくようにこぼした。その言葉に詩鸞は――照れくささも相まって――むっとくちびるを尖らせる。 「わるかったですね! あなたとちがって、どうせ、なまっ白いですよ。もやしみたいですよ! 仕方ないでしょ、あなたみたいに良いものたくさん食べてないし、わりと勉強漬けで部屋の中にいることも多かったんだから」  令雅を(にら)んでつらつら文句を言ったら、相手は困ったように、ちら、と、苦笑した。 「べつにそんなことは言ってない。ただ綺麗だと思っただけで」  (てら)いもなくそんなことを口にされ、詩鸞は言葉を失った。  恥ずかしい。()(たま)れない。  どうしたらいいんだろう、と、思ううちに、令雅が詩鸞の胸に顔を近づけていた。  ちゅ、ちゅ、と、鎖骨から胸元へかけて口づけられ、同時にさらさらとわき腹のあたりを撫でさすられる。 「ぁ……ぁ……」  なんだかぞわぞわする、と、思っていると、ふいに(いかづち)みたいな鋭い感覚が身体を走り抜ける。 「あっ、んっ」  なに、と、思ってたしかめると、なんと、令雅の舌が詩鸞の左の乳首をちろりと舐めていた。  そのまま、つんとした胸の飾りを、口の中に含まれる。ちゅう、と、吸われ、かり、と、甘噛みされ、たまらない快美に詩鸞はふるえた。  令雅は、ちろちろ、と、舌先で乳首を舐め転がしつつ、右胸の乳首を指でいじった。くり、くり、と、(つま)んでもてあそばれたかと思うと、指の腹でぐりりとおしつぶされたり、爪で軽く引っかかれたりする。  その度に、ぞくぞくしたり、ぞわぞわしたり、経験したことのない、おかしな感覚が、詩鸞の背筋を脳天まで繰り返し駆け上がっていった。 「っ、や、あん、んぁ、ぁ」  甘い声が漏れてしまう。  それがすこしだけ口惜(くや)しくて、令雅を睨んでも、ちらりと詩鸞のほうをうかがった相手は、目を細めてどこかうれしそうに笑うばかりだった。  頭に来る。腹が立つ。  ()っ飛ばしてやりたい衝動に駆られて、つい、足をばたつかせた。  けれども、そんな詩鸞のささやかな反抗など、武人の令雅はものともしなかった。 「っ、ひゃう」  やがてわき腹を撫でた手が、そのまま腰をたどり、太腿まで降りていく。暴れたこちらの足をやさしく掴んで制していた令雅は、それをそのまま、ぐい、と、開かせた。  (あわい)に手が伸び、核心に、節ばった長い指が這う。 「あ、あ、や」  敏感な粘膜を直接こすりあげられて、詩鸞はふるふると(かぶり)を振った。  でも、快感は散らない。むしろ、たまっていく。  令雅の大きな手が、こちらの()ちあがりかけた花茎を包み込んだとき、詩鸞はくちびるをわななかせ、目に涙を浮かべた。  熱い。  あふれて、こぼれてしまいそうだ。 「んぁ、あ、あん、あ、あぁっ」 「かわいい」 「やぁ、だ、めぇ……そこ、やっ、あんっ、っ、令雅、だめっ」 「詩鸞……詩鸞。なあ、可愛いとは、愛す可しと書くだろう? 大事なものは、大事にできるときに、目一杯だいじにするべきだって……あんたが、そう言ったんだ」  熱っぽく言って、令雅は行為を続けた。  指が背筋を這い下り、尾骨を過ぎて、そのまま、奥にひっそりとひめられた(つぼみ)にふれた。まだ固く、つつましやかに閉じたままのそこを、くに、くに、と、こじるように刺激される。  やがて、くぷ、と、令雅の節ばった指が一本が、ゆっくりと中へと入り込んだ。  ぬく、ぬく、と、出し入れされる。はじめは浅いところをやさしく撫でるようにしていたのが、やがて馴染んでくると、ぐぅ、と、奥へと差し込まれた。 「ひぁ、んっ」  令雅の指が腹側の(しこ)りをかすめたとき、詩鸞の身体は、知らず、びく、と、ふるえていた。  きゅう、きゅう、と、中の令雅の指を無意識に締め付けてしまう。そうすると、目を細めてこちらを見下ろした令雅は、そのふくらんで敏感なところばかりを重点的に刺激した。  指の腹で撫で、爪でやさしく引っ()くようにし、時に、ぐ、と、強く押し込んでくる。その度に、詩鸞はひくひくと身をふるわせつつ、あまく(あえ)いだ。  無意識に、喉が鳴る。  いつの間にか指が増やされ、気づけば三本を呑み込んでいた。すこしばかりの違和感はあっても、嫌悪はない。むしろ身体の奥深くから、際限なく、滾々(こんこん)と愉楽が()いて、そのことが、怖い。 「っ、令雅、もう……っ」  腹の奥が切なく(うず)いていた。まるで催促でもするかのように、くわえ込んでいる令雅の指を、きつく締め上げている。同時に腕を伸ばして、令雅の背中をぎゅっと抱いた。 「っ、詩鸞っ」  令雅が掠れた声でこちらを呼ぶ。詩鸞は相手の表情をうかがい見た。熱っぽくこちらを見つめる金茶の眸と視線がからまって、どちらからともなく、深く口づけあった。 「あ……っ」  令雅が指を抜いた。舌を絡めるような接吻を交わした後、詩鸞の足を抱え上げ、ひくつく莟に己の昂りを押し当てる。ぬる、ぬる、と、濡れた先端を、幾度か、ほころんで蜜をこぼすそこに(こす)り付けた。 「……れい、が」  掠れ声で呼ぶと、相手がたまらなそうに、切なげに、眉を(しか)める。  入り口に押しあてがわれ、そのまま、ぐぅ、と、体重をかけられた。 「あ……あぁ――……っ」  令雅の逞しいものが、詩鸞の身体を深々と貫いた。ずるり、と、這入(はい)り込み、とちゅん、と、奥を突いた。反射的にぎゅっと目を瞑ると、目裏(まなうら)で、ちかちか、と、光彩が弾けた。  詩鸞は、ぎゅう、と、令雅を抱きしめる。そうすると、身体も、心も、いっぱいに満たされる感じがした。  あたたかい。  きもちいい。  粘膜がうごめいて、令雅の熱い猛りに絡みついた。 「っ、うごいても、いいか」  令雅が詰めた息で訊く。 「……は、い……う、ごいて」  詩鸞は呼吸を乱しながら答えた。  最初は、ゆっくりだった。抜け落ちるぎりぎりまで退かれたあと、(くわ)えるものがなくなった空虚に切なくひくつく(ひだ)を割りひらき、また、奥まで入り込まれる。ずる、ずく、ずる、ずく、と、詩鸞の口を吸いながら、令雅はゆるゆると抜き差しを繰り返した。 「ん、ん、ぅ、んぁ」  奥を突かれるたびに、生まれた快楽が背筋をのぼっていく。やがて律動は激しくなり、とちゅ、とちゅ、と、容赦なく最奥を突き上げられた。 「あんっ、あ、アッ、アァ、ン」  詩鸞の声がひっくり返ったみたいな高いものになる。甘く掠れた嬌声を上げつつ、詩鸞は令雅に抱きついた。 「れい、が……令雅」 「詩鸞」  名を呼び、呼び返されるだけで、どうしてこんなにも胸が詰まるのだろうか。泣きそうになりながら、詩鸞は思っていた。 「詩鸞……詩鸞。俺は、あんたのこと、まもりたい。あんたを、だいじにしたい……ずっと」  熱っぽく(ささや)かれる。身体は正直によろこんで、令雅を、きゅう、と、引き絞った。  令雅の昂りが、ぐ、ぐぅ、と、強く奥を突く。容赦のない抽挿に、詩鸞はとろとろと翻弄された。  ゆさゆさと揺さぶられると、ふわふわする。  ちかちかして、くらくらする。  身体がどこまでも高まっていく。まるで鳥になって天高くへと飛翔するようだ、と、そう思った刹那、とちゅん、と、ひときわ奥を突き上げられた。 「ア、ァ――……ッ」 「っ」  令雅がたまらなそうに息を詰めたとき、中が熱い飛沫(しぶき)に濡れる。その感覚にますます高まって、詩鸞は羽化(うか)昇天(しょうてん)の極みへと(きざはし)をかけのぼった。 「ア、アッ、れい、令雅……っ、あつ、い……」  なにこれ、と、詩鸞は涙目になる。  腹の奥が燃えるようだった。  たっぷりと流し込まれている。それが、全身に広がり、足の先、指の爪先と、隅々にまで行きわたるようだ。  どこもかしこも、いっぱいに、満たされていく。 「んあっ、あっ、あ――……っ」  身体を突っ張らせ、それから、くた、と、脱力して、詩鸞ははぁはぁと荒い息をしながら、とろりと令雅を見上げた。 「令、雅……あなた、わたしに、何を……?」  詩鸞が途切れ途切れに問うと、ちいさく笑った令雅は身体を傾けて、詩鸞のくちびるに己のそれを重ねた。

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