38 / 40
第38話 和合*
「すごく、白い」
詩鸞 の肌をするりと撫でつつ、令雅 が溜め息をつくようにこぼした。その言葉に詩鸞は――照れくささも相まって――むっとくちびるを尖らせる。
「わるかったですね! あなたとちがって、どうせ、なまっ白いですよ。もやしみたいですよ! 仕方ないでしょ、あなたみたいに良いものたくさん食べてないし、わりと勉強漬けで部屋の中にいることも多かったんだから」
令雅を睨 んでつらつら文句を言ったら、相手は困ったように、ちら、と、苦笑した。
「べつにそんなことは言ってない。ただ綺麗だと思っただけで」
衒 いもなくそんなことを口にされ、詩鸞は言葉を失った。
恥ずかしい。居 た堪 れない。
どうしたらいいんだろう、と、思ううちに、令雅が詩鸞の胸に顔を近づけていた。
ちゅ、ちゅ、と、鎖骨から胸元へかけて口づけられ、同時にさらさらとわき腹のあたりを撫でさすられる。
「ぁ……ぁ……」
なんだかぞわぞわする、と、思っていると、ふいに雷 みたいな鋭い感覚が身体を走り抜ける。
「あっ、んっ」
なに、と、思ってたしかめると、なんと、令雅の舌が詩鸞の左の乳首をちろりと舐めていた。
そのまま、つんとした胸の飾りを、口の中に含まれる。ちゅう、と、吸われ、かり、と、甘噛みされ、たまらない快美に詩鸞はふるえた。
令雅は、ちろちろ、と、舌先で乳首を舐め転がしつつ、右胸の乳首を指でいじった。くり、くり、と、摘 んでもてあそばれたかと思うと、指の腹でぐりりとおしつぶされたり、爪で軽く引っかかれたりする。
その度に、ぞくぞくしたり、ぞわぞわしたり、経験したことのない、おかしな感覚が、詩鸞の背筋を脳天まで繰り返し駆け上がっていった。
「っ、や、あん、んぁ、ぁ」
甘い声が漏れてしまう。
それがすこしだけ口惜 しくて、令雅を睨んでも、ちらりと詩鸞のほうをうかがった相手は、目を細めてどこかうれしそうに笑うばかりだった。
頭に来る。腹が立つ。
蹴 っ飛ばしてやりたい衝動に駆られて、つい、足をばたつかせた。
けれども、そんな詩鸞のささやかな反抗など、武人の令雅はものともしなかった。
「っ、ひゃう」
やがてわき腹を撫でた手が、そのまま腰をたどり、太腿まで降りていく。暴れたこちらの足をやさしく掴んで制していた令雅は、それをそのまま、ぐい、と、開かせた。
間 に手が伸び、核心に、節ばった長い指が這う。
「あ、あ、や」
敏感な粘膜を直接こすりあげられて、詩鸞はふるふると頭 を振った。
でも、快感は散らない。むしろ、たまっていく。
令雅の大きな手が、こちらの起 ちあがりかけた花茎を包み込んだとき、詩鸞はくちびるをわななかせ、目に涙を浮かべた。
熱い。
あふれて、こぼれてしまいそうだ。
「んぁ、あ、あん、あ、あぁっ」
「かわいい」
「やぁ、だ、めぇ……そこ、やっ、あんっ、っ、令雅、だめっ」
「詩鸞……詩鸞。なあ、可愛いとは、愛す可しと書くだろう? 大事なものは、大事にできるときに、目一杯だいじにするべきだって……あんたが、そう言ったんだ」
熱っぽく言って、令雅は行為を続けた。
指が背筋を這い下り、尾骨を過ぎて、そのまま、奥にひっそりとひめられた莟 にふれた。まだ固く、つつましやかに閉じたままのそこを、くに、くに、と、こじるように刺激される。
やがて、くぷ、と、令雅の節ばった指が一本が、ゆっくりと中へと入り込んだ。
ぬく、ぬく、と、出し入れされる。はじめは浅いところをやさしく撫でるようにしていたのが、やがて馴染んでくると、ぐぅ、と、奥へと差し込まれた。
「ひぁ、んっ」
令雅の指が腹側の痼 りをかすめたとき、詩鸞の身体は、知らず、びく、と、ふるえていた。
きゅう、きゅう、と、中の令雅の指を無意識に締め付けてしまう。そうすると、目を細めてこちらを見下ろした令雅は、そのふくらんで敏感なところばかりを重点的に刺激した。
指の腹で撫で、爪でやさしく引っ掻 くようにし、時に、ぐ、と、強く押し込んでくる。その度に、詩鸞はひくひくと身をふるわせつつ、あまく喘 いだ。
無意識に、喉が鳴る。
いつの間にか指が増やされ、気づけば三本を呑み込んでいた。すこしばかりの違和感はあっても、嫌悪はない。むしろ身体の奥深くから、際限なく、滾々 と愉楽が湧 いて、そのことが、怖い。
「っ、令雅、もう……っ」
腹の奥が切なく疼 いていた。まるで催促でもするかのように、くわえ込んでいる令雅の指を、きつく締め上げている。同時に腕を伸ばして、令雅の背中をぎゅっと抱いた。
「っ、詩鸞っ」
令雅が掠れた声でこちらを呼ぶ。詩鸞は相手の表情をうかがい見た。熱っぽくこちらを見つめる金茶の眸と視線がからまって、どちらからともなく、深く口づけあった。
「あ……っ」
令雅が指を抜いた。舌を絡めるような接吻を交わした後、詩鸞の足を抱え上げ、ひくつく莟に己の昂りを押し当てる。ぬる、ぬる、と、濡れた先端を、幾度か、ほころんで蜜をこぼすそこに擦 り付けた。
「……れい、が」
掠れ声で呼ぶと、相手がたまらなそうに、切なげに、眉を顰 める。
入り口に押しあてがわれ、そのまま、ぐぅ、と、体重をかけられた。
「あ……あぁ――……っ」
令雅の逞しいものが、詩鸞の身体を深々と貫いた。ずるり、と、這入 り込み、とちゅん、と、奥を突いた。反射的にぎゅっと目を瞑ると、目裏 で、ちかちか、と、光彩が弾けた。
詩鸞は、ぎゅう、と、令雅を抱きしめる。そうすると、身体も、心も、いっぱいに満たされる感じがした。
あたたかい。
きもちいい。
粘膜がうごめいて、令雅の熱い猛りに絡みついた。
「っ、うごいても、いいか」
令雅が詰めた息で訊く。
「……は、い……う、ごいて」
詩鸞は呼吸を乱しながら答えた。
最初は、ゆっくりだった。抜け落ちるぎりぎりまで退かれたあと、咥 えるものがなくなった空虚に切なくひくつく襞 を割りひらき、また、奥まで入り込まれる。ずる、ずく、ずる、ずく、と、詩鸞の口を吸いながら、令雅はゆるゆると抜き差しを繰り返した。
「ん、ん、ぅ、んぁ」
奥を突かれるたびに、生まれた快楽が背筋をのぼっていく。やがて律動は激しくなり、とちゅ、とちゅ、と、容赦なく最奥を突き上げられた。
「あんっ、あ、アッ、アァ、ン」
詩鸞の声がひっくり返ったみたいな高いものになる。甘く掠れた嬌声を上げつつ、詩鸞は令雅に抱きついた。
「れい、が……令雅」
「詩鸞」
名を呼び、呼び返されるだけで、どうしてこんなにも胸が詰まるのだろうか。泣きそうになりながら、詩鸞は思っていた。
「詩鸞……詩鸞。俺は、あんたのこと、まもりたい。あんたを、だいじにしたい……ずっと」
熱っぽく囁 かれる。身体は正直によろこんで、令雅を、きゅう、と、引き絞った。
令雅の昂りが、ぐ、ぐぅ、と、強く奥を突く。容赦のない抽挿に、詩鸞はとろとろと翻弄された。
ゆさゆさと揺さぶられると、ふわふわする。
ちかちかして、くらくらする。
身体がどこまでも高まっていく。まるで鳥になって天高くへと飛翔するようだ、と、そう思った刹那、とちゅん、と、ひときわ奥を突き上げられた。
「ア、ァ――……ッ」
「っ」
令雅がたまらなそうに息を詰めたとき、中が熱い飛沫 に濡れる。その感覚にますます高まって、詩鸞は羽化 昇天 の極みへと階 をかけのぼった。
「ア、アッ、れい、令雅……っ、あつ、い……」
なにこれ、と、詩鸞は涙目になる。
腹の奥が燃えるようだった。
たっぷりと流し込まれている。それが、全身に広がり、足の先、指の爪先と、隅々にまで行きわたるようだ。
どこもかしこも、いっぱいに、満たされていく。
「んあっ、あっ、あ――……っ」
身体を突っ張らせ、それから、くた、と、脱力して、詩鸞ははぁはぁと荒い息をしながら、とろりと令雅を見上げた。
「令、雅……あなた、わたしに、何を……?」
詩鸞が途切れ途切れに問うと、ちいさく笑った令雅は身体を傾けて、詩鸞のくちびるに己のそれを重ねた。
ともだちにシェアしよう!

