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9. エルの秘密※R-18

 こうして僕とフェリの、二人きりのパーティーが発足した。  こなした仕事の具合は、上々だ。季節が一巡りする頃には、僕の懐はすっかり潤っていた。 「かんぱーい!」  僕はビールの入ったジョッキを高く持ち上げ、機嫌よく声を上げる。隣のフェリはといえば、それに応じもせずにジュースへ口をつけていた。ノリの悪い子だ。  宵の酒場は、僕たちと同じく仕事帰りの冒険者たちで、ごった返している。 「せっかく高い報酬をもらったのに、その分じゃ、すぐに使い果たすんじゃないか?」  意地の悪いことを言う。だけど、僕たちのコミュニケーションは、これが普通になっていた。  僕は「ちゃんと節約してるから、大丈夫」とジョッキを揺らす。 「それにフェリと組んでから、収入は段違いに上がったんだよ」  高難易度クエストをこなすようになったし、山分けする相手もフェリだけ。当然、僕の懐は、これまでの比じゃないくらい潤った。実際、預金額はかなりのペースで上がっている。もう少しで、最初に立てた目標額を超えるんじゃないだろうか。  その上、毎晩安全な寝床で眠って、お腹いっぱい食べて、ちょっと太ってしまったくらいだ。  野菜のバターソテーに、チーズの山。ごろごろ具材のポトフに、サイコロステーキ。去年までの生活じゃ信じられないくらいのごちそうを、ちょっとした打ち上げで食べられるなんて、やっぱり幸せすぎてめまいがする。  食事を頬張りつつ、酒を喉へ流し込んだ。生きてるって感じ。  フェリは、こちらを呆れたように見ている。だけど、口元はうっすら笑っていた。彼も彼なりに、この食事を楽しんでいるらしい。 「確かに、前より血色はよくなったな」  不意に、フェリの指が僕の頬へ伸びる。指の背で優しく撫でられて、僕は思わずジョッキを机へと置いた。  動揺が伝わったのか伝わっていないのか、フェリの指はすぐに離れる。 「酔ってるだけだよ」  誤魔化すように言って、肉へフォークを突き立てる。口へ放り込むと、濃厚な肉汁が口いっぱいに広がった。  フェリもポトフをつつきながら、「そうか」と歯切れ悪く言う。彼のほうこそ、酔っぱらっていないのに耳が赤い。 「体調は大丈夫? 熱はない?」 「ない。なんだ、いきなり」 「顔が赤いから。もしかして、疲れが出た?」  額に手を当てる。少し熱い気がした。でも彼の平熱はこれくらいかもしれない。 「いいから。お前は酒なんか飲まずに、もっと食えよ。ただでさえ細いんだから、もうちょっと……」  ますます顔を赤くして、フェリが言う。僕は首を傾げながら、ご馳走へ舌鼓を打った。  ジョッキを空ける頃、僕はすっかり酔っぱらって上機嫌になっていた。フェリも食事を終えたらしく、手持無沙汰にメニューを眺めている。 「カップル割か」  なにかブツブツ呟いているけど、気になる子でもいるのだろうか。そんなことより、お会計をしなければ。  僕が財布を引っ張り出すと、「いい」とフェリが手で制した。 「俺、が、払う」  やたらと「俺」のところを強調した言い方だ。いずれにしても僕としては、お金が浮くので助かる。  これは決して、僕が年下にたかっているのではない。雇い主が、下っ端をねぎらうだけだ。 「ありがとーございます」  飲みすぎた。若干、ろれつが怪しい。  フェリは僕の腕を引いて、会計へと向かった。お金を払うときに「カップル割は使えるか」と聞き出したので、僕は目をかっぴらいて叫ぶ。 「店員さんには、敬語をつかえって、ゆったよな!?」 「カップル割は使えますか」  こうしてフェリは割引を使い、会計を終えた。使える割引はちゃんと使えという、僕の教えは守っているらしい。いい子だ。 「歩けるか? まったく……酒に強くないんだから、ジョッキ一杯も飲むなよ」  フェリは呆れたふうだけど、ふらふら歩く僕の腕から手を離さない。  本当に優しくて、いい子だ。僕は感極まって、フェリの身体へ抱き着いた。仕事帰りだから、汗と血のにおいがする。だけどなんでか、酷いにおいだとは思わなかった。 「いいこだね~、フェリ。ほんとに、いいこだ」 「ああ、また始まった」 「強くていい子だ……がんばってるね……」 「弱いお前から見れば、そりゃ強く見えるだろうよ」  うんざりした様子で、「きりきり歩け」と僕を引きはがすフェリ。でも、本当に嫌だったら、とっくに僕とのパーティーなんか解散しているだろう。なんなら、こうやって酔っぱらっている僕を置いていってもいいはずだ。  だけど彼は、そうしない。  そういうところも込みで、かわいい。  気づけばフェリに引きずられて、今晩の宿へと着いていた。  適当に部屋へ転がしておけばいいのに、フェリは毎回、僕をベッドへ寝かせてくれる。そういう親切な行動と裏腹に、さっきみたいな憎まれ口をまだ叩くんだから、難儀な子だ。  きちんとブランケットを僕の肩までかけて、フェリは出ていった。ひとり、ぼんやり天井を眺める。  腰の奥が、落ち着かない。自分の身体を撫でて、シャツの裾に手を突っ込んだ。  魔力が強いと性欲も強い、なんていうのは、もちろん迷信だ。  だからこれは、単に、僕の性欲が強いだけ。  あと、お金のかからない娯楽が、自慰行為だっただけ。 「ん……」  乳首に触れると、もうぷっくりとたっていた。この先の「気持ちよさ」への期待で、胸が高鳴っている。  指先でそっと摘まむ。腰が上擦って、股が開いた。 「ふ、ぅ」  まず胸からいじめるのが、最近のお気に入りだ。昨日までは任務で野宿をしていて、なかなかできなかった。つまり僕は、結構、溜まっている。  隣の部屋にはフェリがいる。万が一にも、こんなところを知られてはいけない。唇を噛んで、声を殺した。  ぴんと膨らんだ乳首を指で撫でて、はじいて、つまんで、押して。ここをいじめるだけで、僕の股間のものはどんどん熱くなっていく。  ちょっと最近いじめすぎたせいで、乳輪が大きくなってきた気がするけど、やめられない。だって、気持ちいいんだもん。  だんだん呼吸が荒くなってきた。僕はズボンをくつろげて、勃起したそこに指を伸ばす。胸をいじめつつ、ここを擦ると、ものすごく気持ちいい。あっという間に、性器がとろとろに濡れはじめる。 「……っぁ」  声が漏れた。慌てて枕へ口元を押し当てる。その拍子で胸元を強くはじいてしまって、ますます腰が跳ねた。手が止まらない。どんどん自分のものを扱く手がはやくなって、力がこもる。  あっという間に手がどろどろになるけれど、僕って濡れやすい体質だったりするんだろうか。ひどい水音が立ってる。  気持ちよくって、身体が熱い。夢見心地で、ひたすら快楽を追った。  僕よりもずっとおっきいひとに、抱きしめられたい。ぎゅーって、押しつぶされるくらいに強く。それからおっきい手で、きもちいいところ、ぜんぶ、なでてほしい。  妄想するだけで、よだれがあふれてくる。キスって、どんな感じなんだろう。心臓がうるさい。片手での愛撫じゃ足りなくて、うつぶせで胸をシーツへこすりつけた。  まだ駆け出しだった頃、連れ込み宿で、絡み合う恋人たちを見たことがある。気持ちよさそうにキスしてた。舌をからませて、すすりあって、あいしあっていた。  きもちいい。もっと、きもちよくなりたい。  フェリとキスしたい。 「あっ……?」  とぷん、と、股間から熱い液体が飛んだ。僕は脱力して、ぼんやり天井を見つめる。  今、何を思った。  よりにもよって、フェリをおかずにしたのか? 僕は。  火照った身体から、一気に熱が引いていく。 「さ、さいてい……! さいあく……!」  大人として失格だ。僕は快楽の余韻に浸る間もなく、備え付けのシャワールームへ駆け込んだ。  冷水で身を清めて、寝間着に着替える。すごすごとベッドへ潜り込んで、目を閉じた。  本当に、どうしてしまったんだろう。  僕は二十四歳の大人。フェリは十九歳……いや、もうちょっとで二十歳だったか。でも、まだ子ども。ガキ。小僧。  そりゃあ、結婚するのが早い連中は、これくらいで子どもを作ったりする。でも少なくとも、僕がエロい目で見ていい相手じゃない。いや、今日だけだったら気の迷いだ。そうに決まっている。  僕は自分にそう言い聞かせて、目を瞑った。

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