27 / 29
答え合わせ:フェリの幸せ※R-18
俺とエルは、中央の騎士団詰め所の近くに部屋を借りた。ちいさなワンルームで、日当たりがいい。
家賃も生活費も、全部俺が持ちたかったのに、折半だ。
エルは経済的な苦労をたくさんしたせいか、金銭面ではかなり細かい。逆に俺は大雑把だ。だから、エルのそういうところを尊敬している。
たっぷり愛し合った翌日は大抵、俺の方が早く起きる。先に起きた方が朝食を用意するルールだから、こういう時は渾身の朝食を作っておくのだ。
カリカリに焼いたベーコンに、半熟の目玉焼き。新鮮な野菜を薄くきったパンで挟んで、サンドイッチにする。
冒険者生活を通じて、身の回りのことは大抵こなせるようになった。この点で、俺を放り出した家族たちには感謝している。
……単純に放り出しただけでもないだろうとは、最近、少しずつ分かりだした。
「ん……」
ぺたぺたと小さな足音が聞こえた。まだ寝ぼけまなこのエルが、ベッドから起きだしてこちらへやってくる。
まぶたは少し腫れてむくんでいた。泣かせすぎたか、と思うと、そわそわして落ち着かなくなる。
「おはよ」
エルが背伸びをして、俺の頬にキスをする。エルの唇にキスを返すと、くすぐったそうに笑った。
「朝食はできている。顔を洗ってこい」
「はーい」
時々腰を押さえつつ、エルは洗面所へ向かう。俺は食事を盛り付けて、テーブルに置いた。
今日は二人とも休日だ。だからこそ、昨晩はあまりに盛り上がってしまったんだが。
ぼんやりエルの痴態を思い出している間に、彼が着替えてこちらへ戻ってきた。いくぶんシャッキリした様子で、テーブルに座る。
「おいしそう」
嬉々として食事に手をつける。その大きな一口がかわいくて、頬が緩んだ。
エルはかわいい。出会った時から、ずっと。
冒険者としてそれなりに頑張って、命の危険を何度も経験した。半年経って、ギルとミカがまともではなさそうだと薄々勘づいていた。でも切る理由もなくて、悩んでいた。
そんな時に、エルと出会ったんだ。
「今日はどうする? 買い物でもする?」
「そうだな。食料品を買い出さないと、そろそろ尽きるか」
他愛のない話をしながら、「そうだね」とエルはまたサンドイッチにかぶりつく。
とび色のやわらかいくせっ毛に、大きくて丸い深い黒の瞳。低くて小さな鼻は、愛嬌がある。どこか中性的な顔立ちは、初めて会ったときから、俺を惹きつけてやまない。
一目惚れだった。あの人混みの中で、エルが俺にぶつかってきたことは、俺の人生で、いちばんの幸運だ。
必死で情報をかき集めて、それらしい口説き文句を作った。エルが乗ってくれたとき、どれだけ嬉しかっただろう。
俺をひとりで戦わせない彼に、どれだけ惹かれただろう。
「じゃあ、ご飯を食べたら市場に行こうか」
こうして穏やかな日常をともにできるなんて、あの時の俺が聞いたら、ひっくり返って驚くだろうな。
食事を片付けて、二人で市場に向かう。食料品や雑貨を買い込んだ。
「これもほしい。買っていいか」
「それ、まだ家にあるよ。買わないでおいて」
俺が無駄遣いしようとするのを止めるエルを引き寄せて、「そうだな」と額にキスをする。
「もう。人前で何をやっているんだ」
ぷりぷり怒ってそっぽを向く。それがやっぱりかわいくて、「すまない」と彼の手を引いた。
エルは、鈍感だ。恥ずかしがっていたら、俺の愛情は少しも伝わらない。もっともこれくらいの愛情表現は、まったく大袈裟ではない。もっと熱烈なやつを、はやくしたかった。
「帰るか」
率先して歩き出す俺の腕から、エルがりんごを一個取る。かじりながらくぐもった返事をする彼に、「行儀が悪いぞ」と小言を言った。エルも慣れたもので、「はいはい」と受け流しながら食べる。
彼のことは好きだが、こういうところは直してほしい。とはいえ世の中に完璧な人はいない。完璧じゃないエルが好きだ……。
ぼんやり横顔を眺めている間に、自宅についた。荷物で手がふさがっている俺の代わりに、エルが扉を開けてくれる。
買ったものをおろして、片付ける。エルは杖を一振りして、りんごの食べかすを燃やした。
「おい。それは生ごみで出すと言っているだろう」
「ごめん。いつもの癖で」
冒険者をやっていると、ごみを出すと不都合のある場面が多々ある。ごみを捨てれば魔物に存在を悟られるし、他の冒険者の迷惑にもなる。だから魔術師なんかは、自分のごみを燃やす癖がつきやすいらしい。
それはそれとして、今は都市で暮らしているのだから、都市のルールに従ってもらわなければ困る。
「次は気をつけることだ」
エルは「ん」と頷いて、俺の隣に立った。
狭い部屋だから仕方ない。ちょうど手頃な場所にエルの肩があったので抱いた。エルも体重を預けてくる。
こうなったら、若いカップルがやることなんて、ひとつだろう。少なくとも俺たちには、ひとつしかない。
エルの顔に唇を寄せると、彼が俺の口元へ吸い付いた。そのままキスをする。お互いの身体に手を這わせた。エルの手が、俺のシャツの裾を遠慮がちに引っ張る。
たまらなくなって、シャツの裾から手を入れた。
「……しよう」
俺の誘いに、エルは「ん」と頷いた。照れると俯きがちになるが、俺から目はそらさない。かわいい。
お互いの身体を撫でて、キスをしながら、ベッドへともつれこんだ。俺が自分のシャツのボタンを外している間に、エルはズボンから足を抜く。
こういうとき、エルは上半身の衣服を脱がないことが多い。エロすぎる。それはそれとして、汚すと洗濯が面倒だ。脱がせてやる。エルはされるがままになりながら、俺の身体を触ってきた。
股間のきわどいところにまで指が伸びて、脚の付け根を指がなぞる。
「おい、こら」
焦った声をあげても、エルは笑うだけだ。俺のものは簡単に兆して、エルの手の中に収まる。
「あつい」
甘い声でエルが囁いた。俺はやっとの思いでエルの腕からシャツを抜き、彼を裸にする。
ベッドサイドに置きっぱなしの、香油の瓶を開けた。もう残りが三分の一しかない。
昨晩もたっぷり使ったが、今からもたっぷり使う。いっそストックでも作った方がいいんだろうか。
「きて」
夜の名残が、エルの身体のあちこちにあった。俺が残したキスマークや、まだやわらかい後ろの穴。俺はそのひとつひとつをなぞって、興奮する。エルの息もあがって、俺たちの身体がベッドの上ではずんだ。
「こんな、あかるいのに……」
くふくふとエルが笑う。だから何だ。俺はエルの腰を掴んで引き寄せ、奥をうがった。エルの身体が跳ねて、彼のものがとろとろと精を吐き出す。
俺よりも濡れやすい体質のエルの下腹部は、もうぐちゃぐちゃだ。体液をすくって、彼の勃起したものへ塗りつける。エルは身体をくねらせて、「フェリ」と俺を呼んだ。
「おく、ついて」
「いまは、その気分じゃない」
もー、と彼は軽く俺の腰を蹴って笑った。俺も笑って、「ほら」とエルを引き寄せる。
エルの心臓は、信じられないくらいのはやさで脈打っていた。俺の鼓動も、信じられないくらいはやい。
「きもちいいだろ。これ」
「うん……」
最近、肉付きのよくなってきた腰周りを、掴み直す。エルには言っていないが、ここの手触りがかなり好きだ。やわらかくて、もちもちしていて、吸い付いてくるみたいで。
しばらく、抱き合っているだけの時間を過ごす。だんだんエルのナカが脈打ちはじめた。
「……ふぇり、うごいて。うごい、て」
苦しそうにエルがうめく。「ひ」とか「う」とか、かわいい声をあげながら腰を揺らした。気持ちよくて我慢できないエルはかわいい。
もう少し引っ付いていたかったが、仕方ない。俺は腰を引いて、律動をはじめた。だんだん動きが激しくなる。
エルのナカの締め付けが気持ちいい。俺の腕の中で、好きな人が気持ちよくなっている現実が、俺の頭をいっぱいにした。
「ん、きもち、い……」
エルの背中が反って、気持ちよさを全身で受け止めている。胸に吸い付くと、甲高い嬌声をあげた。男にしては大きい乳輪はやわらかくて、舌で舐めると、面白いくらい反応する。指より、口での愛撫のほうが好きな部位だ。
「ふふ……あかちゃん、みたい」
ただし、その評価は不服だ。俺はお前が気持ちよくなれればいいと思って愛撫しているんだぞ。その言い方はなんだ。
なのに頭を撫でられると、混乱して腰が止まらなくなる。
「あ、も……んっ……はげ、し」
声がさらに上擦って、甘くなる。俺は必死に目の前の肌をしゃぶって、味わった。
もう腰を振って出すことしか考えられない。エルが好きでかわいくて、どうしようもない。
「いく、いっちゃう、いく……っ」
切羽詰まったかわいい声を出す唇に、たまらず噛みついた。そのまま上も下も繋がって、どろどろになりながら交わる。
狭い部屋に、肉と肉のぶつかる激しい音が響いた。
口の中に、くぐもった悲鳴が響く。エルの腰がくんと跳ねて、腹の辺りになまぬるい濡れた感触があった。
キツく締め付けられて、俺も腰を押し付ける。精の詰まった睾丸が持ち上がり、腰の奥から快楽が爆ぜた。
「あつ……」
俺の精を受け止めながら、エルがうめく。ゆっくりと快楽の余韻を味わいながら、俺たちは身体を寄せ合った。体温を分け合うみたいに舌を絡めて、すこしずつ身体を離す。エルのナカからものを引き抜くとき、彼はいつも、少しだけ悶える。その様子が本当に、なんというか。
「エル」
名前を呼ぶと、腕が伸びる。俺の首元へ絡まって、ベッドへと引き寄せた。そのまま、唇が合わさる。
俺たちは大分キスが好きだから、ことあるごとにキスをしていた。
「あ、も……」
どろどろの身体を寄せ合って、シーツを汚す。昨晩のシーツを替える前で助かった。
「……もっかい、する?」
今度はエルから誘われる。俺は返事の代わりに、エルの腰を持ち上げた。
朝からこんなにセックスばかりでいいんだろうか。だけどエルも俺も、この行為が大好きだった。
「しよう」
二つ返事で受ける俺に、エルは嬉しそうに目を細める。
こんなに好きな人といつでもセックスできるだなんて、まったく同棲は最高だ。
俺たちは舌を絡めて、お互いの身体を抱きしめた。言葉で伝えきれないことも、こうしていると、ちゃんと伝わる気すらした。
ともだちにシェアしよう!

