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#25 タイトスカートでの地下逃亡!〜無敵の脅迫に牙を研ぎ地獄の最上階へ戻る元プリンス〜

「え……せ、セーラ……さん……?」 応接室の凍りつくような静寂の中、剥がれ落ちた硝子の仮面。 最悪の形で己の正体を晒したセーラの瞳には、もはや隠しきれない修羅の炎が燃え盛っていた。 だが、振り上げた拳の落とし所を見つけられないセーラは、呆然とするアーメンガードをその場に置き去りにし、弾かれたように応接室を飛び出して行った。 「ぼ、僕は……お約束通り、お咎めなしでよかったですか?」 「あ、あぁ。君の処分は保留とする。謹慎も終わりだ。明日から出社しなさい」 「ほ、本当ですか……っ! ありがとうございます、ありがとうございます……っ!」 アーメンガードの安堵の声が響く中、セーラは我を忘れて、オフィスフロアの廊下を駆け抜けた。 「な、なんだ!? あの女は……!」 「おい見ろよ、あんな美人、うちの会社にいたっけ!?」 突如として現れた、タイトスカート姿で激走する「謎の絶世の美女」。すれ違う社員たちが次々と振り返り、ざわめきが波のように広がっていく。慣れないハイヒールが脱げそうになるのを必死に堪えながら、セーラは顔を伏せてひたすら走った。 私服は最上階の秘書室に置いたままだったが、あんな修羅場に戻れるわけがない。セーラはそのまま非常階段を駆け下り、自分が唯一身を隠せる場所——いつもの地下の仮眠室へと逃げ込んだ。 セーラはタイトスカート姿のまま、狭い2段ベッドの下段に隠れるように身を埋めると、頭から毛布をすっぽりと被った。 (俺は……なんて無様な……) 毛布の暗闇の中で小さく丸まり、激しい自己嫌悪と羞恥に身を震わせながら、セーラはタイトスカートのポケットを探った。 指先に触れたのは、漆黒のUSBメモリ。ラビニアから「前金」として突き返された、あの父の形見だ。 (……しかし、これの中を見るには……) スマホもPCも没収されている今の自分には、データを確認する術が何もない。暗闇の中でUSBを固く握りしめ、セーラはギリッと奥歯を噛み締めた。 ◇ 深夜。 静まり返ったオフィス。見回りを終えた夜間警備員のベッキーは、仮眠をとろうといつもの仮眠室へやってきた。そこで見たのは、ベッドの上に丸まっている見慣れぬ人影だった。 「あ、あのー、だ、誰ですか!?」 毛布がモゾモゾと動き、中から不機嫌そうな美女の顔が覗く。 「……うるさい。ほっといてくれ」 その聞き覚えのある低い声に、ベッキーはハッと息を呑んだ。 「せ、セーラ……さん!? え、嘘、女装……!?」 セーラが低く唸るように睨みつけると、ベッキーは顔を真っ赤にして視線を泳がせた。 「あ、いや……その……すっごく、似合ってます……。綺麗です……」 赤面しながらのストレートな称賛に、セーラは深くため息をついた。ふてくされたようにベッドに座り直し、ベッキーと向き合った瞬間、ある考えが閃いた。 「ベッキー、お前のスマホを貸してくれないか。この中身を今すぐ確認したい」 「えっ、スマホですか? ……すみません、夜警は社内への持ち込みが禁止されてて、今はロッカーに預けてるんです。手元にはなくて……」 申し訳なさそうに眉を下げるベッキー。 セーラは舌打ちを飲み込み、そのUSBをベッキーの手のひらに押し付けた。 「……なら、頼みがある。非番になって社外に出たら、この中身がどうなっているか見てきてほしい」 「えっ、僕がですか? あんまりそういうの、詳しくないのですが……」 「でも、頼めるのはお前しかいないんだ」 真剣な眼差しで見つめられ、ベッキーはコクンと力強く頷き、USBを制服のポケットへと大切に仕舞い込んだ。 ◇ 翌朝。 地下の薄暗い仮眠室のドアを、遠慮のないノック音が叩いた。 現れたのは、冷ややかな笑みを浮かべたラビニアだった。セーラはまだ、昨日のタイトスカートとブラウス姿のままだ。 「いつまで寝てるんだ、セーラ。もうとっくに始業時刻は過ぎてるぞ」 「うるさい。お前たちの命令はもう聞かない! 支社長秘書ももう終わりだ!」 「ほぅ、そんなこと言える身分なのかね?」 ラビニアはスマホを取り出すと、画面をセーラの目の前に突きつけた。 そこには、昨日応接室でアーメンガードと口移しをさせられているセーラのあられもない姿が、鮮明に写し出されていた。 「これ、社内の裏掲示板に流したらどうなるかなぁ? 『ダイヤモンド◇プリンスの女装趣味』なんて見出しでさ」 「……やめろ!」 セーラは鋭く睨みつけ、低い声で反撃に出た。 「お前だって女装してミンチン支社長の愛人をやってるじゃないか。俺の写真をばら撒くなら、お前のその秘密も全社に言いふらしてやるぞ」 相打ち覚悟の脅迫。しかし、それを聞いたラビニアは、腹を抱えて甲高い高笑いを上げた。 「あははははっ! 別に言えば? どうぞご自由に!」 「……なに?」 ラビニアは笑い涙を拭いながら、狂気を孕んだ冷たい瞳でセーラを見下ろした。 「オレ(・・)にはもう、失うものなんて何もないんだよ。会社での評価も、プライドも、どうだっていい。……でも、お前は違うだろ? その安っぽいエリートのプライドを、まだ大事に守りたいんだろ?」 完全に開き直った「無敵の人」の論理。 ラビニアの歪んだ執着の前では、まともな脅しなど一切通用しなかった。 「それにな、昨日のお前の写真だけじゃないぞ」 ラビニアはさらに一歩近づき、セーラの耳元で悪魔のように囁いた。 「謹慎中のアーメンガードに接触して、荷物の受け渡しをしたロッティー。あいつも共犯として道連れにしてやる。……オレ(・・)の機嫌を損ねない方がいいぞ、セーラ」 (なんのことだ? 謹慎中のアーメンガードにロッティが接触…? 俺の知らないところで何かあったのか……) 「……ほら、早く社長秘書として上へ行けよ。お仕事の時間が始まるぞ?」 ラビニアの勝利宣言。 セーラは屈辱に震えながらも、ふと冷静な思考を取り戻した。 (ここで逆らっても無意味だ。……今はUSBをベッキーに預けてしまったが、秘書室の中枢に戻れば、パソコンなどの機器を使って自分でも中身を確認するチャンスを作れるかもしれない) 「……分かったよ」 セーラはタイトスカートの裾を正し、這い上がるような鋭い光を瞳に宿すと、ラビニアの背中を追って、再び地獄の最上階へと向かうのだった。 つづく — すべてを失い、パンストOL姿でミンチン支社長の専属秘書を勤めることになったセーラ。ラビニアの手によって完璧なメイクを施され、日課となった朝のお茶出しへと向かうが、そこには心まで書き換えられていく恐怖の従属が待ち受けていた。 次回 第三章 #26 スパダリ課長からメイクの上手なパンストOL秘書に転身〜飼い慣らされていく屈辱のお茶出しつ旦〜 「この仕事も、案外悪くないでしょ?」 お楽しみに!

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