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#26 スパダリ課長からメイクの上手なパンストOL秘書に転身〜飼い慣らされていく屈辱のお茶出しつ旦〜
第三章 女装パンストOLの衣食住をかけての攻防 〜ナシ崩しコンプラとセクハラの対価〜
秘書室の奥、豪奢なドレッサーの前。
セーラは再びタイトスカートとブラウスを身に纏い、目を閉じてラビニアのメイクを受けていた。昨日、涙や汗で崩れたアイラインやファンデーションが、冷ややかな指先によって手際よく直されていく。
「いつまでも私がやってあげるってわけにもいかないからね。少しはセーラも、自分でメイクを覚えた方がいいんじゃないの?」
パフで肌を叩きながら、ラビニアが耳元でクスクスと笑いながら囁く。屈辱的な言葉のはずだが、セーラの口からは無意識のうちに、すんなりと返事が漏れていた。
「……うん、そうだね」
「じゃあ、明日から徐々に教えてあげるからね」
「……ありがとう、ラビニア」
言い終わった瞬間、セーラはハッとして目を開けた。
(あれ……? 今、俺……なんでこんなに素直に答えてるんだ?)
敵であり、自分を弄んでいるはずのラビニアに対し、まるで本当の先輩秘書に教えを請うかのような従順な態度をとってしまった。自分の中に芽生え始めている奇妙な違和感に、セーラの背筋に冷たいものが走る。
「はい、完成。今日も完璧な『いい女』だよ。さあ、支社長がお待ちよ。朝のお茶出しに行ってきてね」
メイクを仕上げたラビニアに銀のトレイを渡され、セーラは渋々立ち上がった。
不慣れなハイヒールを響かせて支社長室の重厚なドアを開ける。デスクに座るミンチンは、入ってきたセーラを一瞥するなりサディスティックに口元を歪めた。
「おやセーラ、今日は一段とキレイじゃないか」
セーラは無言のまま、デスクの上にティーカップをドンッと乱暴に置いた。
「なんだ、その態度は。何か文句でもあるのか? 言いたいことがあるなら言ってみろ」
その露骨な挑発に、限界まで抑え込んでいた怒りの導火線に火がつく。
「……よくも昨日は俺を騙したな! ミンチン」
「騙すだなんて、人聞きの悪い……。手違いさ。単なるブッキングのミスだよ。アーメンガード君の処分を伝える時間と、来客の時間がたまたま被っちゃったんだよ」
「嘘をつけ……!」
「本当さ。お前の全盛期を知る『本当の』大物クライアントは、今日これから来る。今度こそ、粗相のないようにお茶を出したまえ」
平然と嘘をつくミンチンに、セーラはギリッと奥歯を噛み締めた。
「……アーメンガードの処分はどうなった」
「もちろん、約束通り保留さ。彼は今日から何事もなかったかのように出社しているよ。彼を救えてよかったじゃないか」
ミンチンが余裕の笑みを浮かべて答えると、セーラの胸の奥に張り詰めていた強烈な緊張の糸が、ふっと緩んだ。
「ああ、よかった……」
アーメンガードが無事だった。その事実がもたらした圧倒的な安堵感が、ミンチンへの激しい憎悪をほんの一瞬だけ上回ってしまった。人質を守り抜けたという安心から、セーラは無意識のうちに深く頭を下げ、口を開いていた。
「……ありがとうございます」
自分が今、何を言ったのか気づいた瞬間、セーラの顔から血の気が引いた。
自尊心をズタズタに引き裂いた張本人に対し、心からの感謝を口にしてしまったのだ。完全なる敗北と従属。ミンチンの口の端が、サディスティックに吊り上がった。
◇
「じゃあ、お茶出し行ってきてね」
ラビニアに銀のトレイを渡され、セーラは応接室へと向かった。
「……失礼いたします」
声を高く細く作り、うやうやしく足を踏み入れる。ソファに座っていたのは、かつて「ダイヤモンド◇プリンス」として華やかな会食を何度も交わした、あの大物クライアントだった。
(バレたら終わりだ……)
心臓が早鐘のように鳴る中、セーラは表情を消し、あくまで「美しい女秘書」として優雅にティーカップをテーブルへ置いた。クライアントはセーラの妖艶な姿をチラリと一瞥したものの、まさかそれがかつての取引相手である御曹司だとは夢にも思わず、すぐにミンチンとの商談へと戻っていった。
無事に応接室を後にし、秘書室へ戻ってきたセーラは、トレイを置いて深々と息を吐き出した。極度の緊張が解け、足の震えが止まらない。
「お疲れ様。ちゃんとできたじゃん、セーラ」
ラビニアが近づいてきて、からかうように、しかしどこか満足げにセーラの肩をポンと叩いた。
「この仕事も、案外悪くないでしょ?」
その言葉に、セーラは反論できなかった。
◇
一方その頃。
非番で社外に出た夜間警備員のベッキーは、カフェの片隅でセーラから預かった漆黒のUSBを自分のスマートフォンに接続していた。
息を呑んで画面を見つめると、システムからの通知がポップアップした。
> ⚠️ 破損したUSBドライブ
> USBドライブをリセット(初期化)する必要があります。今すぐフォーマットしますか?
「えっ……!?」
ベッキーは慌てて画面から手を離した。
「な、なんだこれ!? エラー……? ぼ、僕は何もしてないよ! 壊しちゃったわけじゃないよね!?」
かつてアーメンガードがスマホに挿した時と全く同じエラー表示。ベッキーはパニックになりながら、そっとUSBを引き抜いた。
◇
夕方、17時。
「定時だね。今日はもう帰っていいよ」
ラビニアの言葉に、セーラは小さく会釈をした。
「……お疲れ様です」
自然と口から出た労いの言葉。セーラはそのまま、誰にも見つからないように非常階段を下り、地下の仮眠室へと戻っていった。
タイトスカートとブラウスを脱ぎ捨てる気力もなく、狭いベッドに横たわり、ふて寝する。
(俺は……何をやってるんだ)
感謝の言葉。先輩秘書への素直な返事。お茶出しを終えた達成感。
敵に飼い慣らされ、女としての扱いに順応しつつある自分に、セーラは強烈な違和感と嫌悪感を覚えていた。
(こんなんでいいのか、俺……。いや、でも……)
ここで耐えて中枢にいれば、必ず父の死の真相を探るチャンスは巡ってくる。今はまだ、雌伏の時だ。セーラはそう自分に言い聞かせ、ぎゅっと目を閉じた。
◇
深夜。
仮眠室のドアがそっと開き、ベッキーがやってきた。
「セーラさん、起きてますか……?」
「ああ。どうだった?」
身を起こしたセーラに、ベッキーは申し訳なさそうにUSBを差し出した。
「ごめんなさい……なんか、スマホに繋いだら『破損したドライブ』とか『フォーマットしますか』ってエラーが出ちゃって……僕、怖くて何も見れませんでした」
その報告を聞き、セーラは小さく息を吐いた。
(なるほど……ラビニアが中身を消したわけじゃなく、相変わらずエラーで見られない状態のままだということか)
セーラは綺麗に勘違いしていた。
ラビニアの手によってすでに中身のデータは完全に抜き取られ、わざわざ以前と同じエラーが出る形式(ext4)にフォーマットし直されているという、絶望的な真実に。
「気にするな、お前のせいじゃない。ありがとう、ベッキー」
セーラはUSBを受け取り、再び暗闇の中でそれを固く握りしめた。反撃のカードはまだ生きていると信じ込んだまま、見えない檻の中へとさらに深く沈んでいくのだった。
つづく
—
【次回予告】
秘書専用ロッカールームでセーラに突きつけられたのは、ラビニアのお下がりのブラウス、ストッキング、そして、面積の少ないレースをあしらった女物のパンティだった。
次回
#27「あげるわよ。ワタシ、新しいの買うから」〜鏡の中で艶やかに色づく唇と女装の目覚め〜
「あたりまえでしょ? タイトスカートの下に男物のパンツなんか穿いてたら、ラインが響いてみっともないわよ」
お楽しみに!
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