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#27「あげるわよ。ワタシ、新しいの買うから」〜鏡の中で艶やかに色づく唇と女装の目覚め〜
翌朝。小雨がぱらつくロンドンの朝。 ミンチン・コーポレーションの豪奢なエントランスへと向けて、ロッティーはいつものように足早に歩いていた。
「……ロッティー」
不意に背後から声をかけられ、振り返ると、そこには謹慎明けで出社してきたアーメンガードが立っていた。少しやつれた顔をして、周囲を警戒しながら声を潜めている。
「アーメンガードさん……! よかった、出社できたんですね」
「ああ、なんとかな。……それより、頼んでおいた例のものは、ちゃんとセーラさんに渡せたか?」
アーメンガードの問いかけに対し、ロッティーは泣きそうな顔で首を横に振った。
「だめだったんです。……会社に入るや否や、まるで僕があのUSBを持っていることを知っていたかのように、ラビニアさんに待ち伏せされて……奪われてしまいました」
「なっ……奪われた!?」
アーメンガードは愕然と目を見開いたが、すぐにハッと息を呑み、自身の顔を覆った。
「……そうか。俺が会社支給のスマホを使ったのがまずかったんだ。位置情報も、通話のログも……すべて会社のシステムに筒抜けだったんだ。俺たち、最初から手のひらの上で泳がされてたんだよ……っ」
二人の間に、重く冷たい絶望が降り積もる。 セーラを救う唯一の手がかりだと思い込んでいたUSBは敵の手に渡り、自分たちの行動は完全に監視されている。
「ごめんなさい、アーメンガードさん……僕がもっと気をつけていれば……」 「いや、俺の落ち度だ。……これ以上の接触は危険だ。セーラさんには申し訳ないが、俺たちはもう動かない方がいい」
一期一会の張り詰めた緊張感の中、二人は絶望を共有し、これ以上の接触を避けるように、少しだけ時間をずらしてエントランスへと歩き出していった。
◇
最上階、秘書室の奥。
豪奢なドレッサーの前に座らされたセーラは、今朝もラビニアの手によって「女」へと作り変えられていた。
「今日も完璧な『いい女』にしなきゃね」
ラビニアは後ろからセーラをすっぽりと抱き込むように顔を寄せ、鏡越しに艶然と微笑んだ。ラビニアの腕の中に閉じ込められた状態で、セーラの唇にリップグロスがゆっくりと引かれていく。
「ん……っ」
「ほら、筆を持ってみて。下唇のこの部分は、自分で少しぽってりとなるように塗るの。やってごらん」
「……っ」
「早く。綺麗にできないと、支社長に怒られちゃうよ?」
急かされ、セーラは屈辱に震える指でリップブラシを受け取り、言われた通りに自身の唇を艶やかに彩った。
鏡の中で、自分の唇が女らしく色づいていく。それを見たラビニアは満足げにセーラの頬に触れた。
「そうそう、上手じゃない。ほら、可愛いでしょう? 練習すればもっと上手くなるわよ。明日も教えてあげるからね」
『明日も』——その一言が、セーラの胸を重く抉る。この地獄のような女装が、終わりのない「継続的な義務」として日常の風景に組み込まれようとしている。メイクが終わると、ラビニアはセーラが着ているブラウスをジロリと見た。
「ちょっとセーラ、あなた昨日からずっと同じブラウス着てるの? 汗臭い秘書なんて最低だよ。こっちに来なさい」
腕を引かれて連れて行かれたのは、役員と秘書専用のロッカールームだった。
「脱いだものはここのカゴに出しておけば、業者がクリーニングしてアイロンまでかけて戻してくれるから。……で、今日の着替えはこれね」
ラビニアがロッカーから取り出し、押し付けてきたのは、ひらひらとしたリボンタイのブラウスと、新品のストッキング、そして——面積の少ない、レースをあしらった女物のパンティだった。
「なっ……! こんな下着まで……!」
「あたりまえでしょ? タイトスカートの下に男物のパンツなんか穿いてたら、ラインが響いてみっともないわよ。……全部ワタシ のお下がりだけど、あげるわよ。ワタシ 、新しいの買うから」
惜しげもなく押し付けられる私物の数々。 提供される快適なクリーニング環境と引き換えに、自分の身体がどんどんラビニアの私物で覆い尽くされていく。それはまるで、所有印 を刻み込まれているような強烈な羞恥だった。
「……ありがとう」
拒絶したいのに、抗う術を持たないセーラは、屈辱に唇を噛み締めながら、小さく礼を言ってしまった。
ラビニアが去り、ロッカールームで一人着替えを始めたセーラは、自らの古い下着を脱ぎ捨てながら激しい自己嫌悪に襲われた。何日も穿き続けてガビガビになり、ほのかに匂う男物のパンツ。それに比べれば、目の前にあるラビニアのお下がり の女物パンティとはいえ、正直ありがたいとさえ思ってしまう自分がいた。
しかし、いざその薄い生地に脚を通そうとした瞬間、強烈なためらいが指先を止めさせた。新品ならまだしも、これは他人が身に付けていた中古の女物下着なのだ。だが、脱ぎ捨てたあの汚れたパンツに今更戻るわけにはいかない。
屈辱に耐えて腰まで引き上げると、肌に触れるシルクの感触が全身を駆け抜けた。まるで自分の中で新しい世界が開花してしまったかのような異常な背徳感——。セーラの股間は抗うことなく激しく反応 ♂し、熱く大きく膨らみ始めてしまう。
ところが、このレースのパンティはあまりにもタイトで、男の熱を収めるテントを張ることを許さない。その圧倒的な面積の小ささゆえに、行き場を失い張り詰めた肉棒は、へその下にょきっと無残に溢れ出てしまうのだった。
◇
支社長室。
完璧な女装姿に身を包んだセーラは、優雅な足取りでミンチンのデスクへと近づき、静かにティーカップを置いた。
「ご苦労。……ところで、セーラ。秘書室のお前のデスクの端末は使えてるのか?」
葉巻の煙を吐き出しながら、ミンチンがふと尋ねてくる。
「……いいえ、俺の……ワタシ のIDでは、ログインできません」
「それじゃ、仕事に不便だろう」
ミンチンは自身の端末を操作すると、にやりと笑みを浮かべた。
「よし。これで、お前の社員証とIDでもログインできるように権限を付与してやった」
(権限が……戻った!)
セーラの瞳に、微かな希望の光が宿る。これで端末が使えれば、外部と連絡を取り、社内の情報にアクセスして反撃の糸口が掴めるかもしれない。
「……ありがとうございます」
深々と頭を下げた、その瞬間だった。
「んっ……!?」
ミンチンの分厚い手が、タイトスカートに包まれたセーラの腰からお尻にかけて、ねっとりと撫で回すように這い上がってきた。
「あっ……いやんっ……!」
過敏になっていた身体がびくりと跳ね、セーラの口から、自分でも信じられないほど甘く、可愛らしい女のような悲鳴が漏れてしまった。
「はははっ、いい声で鳴くじゃないか、新米秘書くん」
ミンチンはサディスティックに笑い、手を離す。
(俺は……今、なんて声を……っ!)
男としての尊厳を粉々に砕かれたような自己嫌悪。しかし、セーラは恥辱に身を震わせながらも、権限を与えられた代償として抗うことができず、ただもう一度「……ありがとうございます」と頭を下げることしかできなかった。
◇
支社長室から逃げるように退室し、秘書室の自分のデスクに戻ったセーラは、震える手で自身の社員証を端末にかざした。
ピピッ、と音が鳴り、画面が切り替わる。ログインに成功したのだ。
セーラはポケットから例の「USB」を取り出し、周囲の目を気にしながら素早くポートへと差し込んだ。
しかし——。
>⚠️ 破損したUSBドライブ USBドライブをリセット(初期化)する必要があります。今すぐフォーマットしますか?
「……くそっ、やっぱりだめか」
昨夜、ベッキーが試した時と同じエラー表示。 セーラは舌打ちを噛み殺し、気を取り直してネットワークの権限を確認した。社内のデータベースや、外部へのメールサーバーへアクセスしようと試みる。
——だが、画面には「アクセス権限がありません」の文字が冷酷に表示されるだけだった。さらに、社内チャットツールやメールソフトのアイコンすらすべてグレーアウトしている。
「なんだこれ……外部への通信が一切遮断されている。まるでスタンドアローン環境じゃないか……!?」
そこからさらにシステム内を探っていくと、ようやくアクセスできるアプリケーションが見つかった。だが、それは「ミンチンのスケジュール管理ツール」と「会議室の予約システム」の2つだけだった。
自分が与えられたのは「反撃の道具」などではない。 ただミンチンの予定を正確に管理し、彼を補佐し、決して裏切らないように監視下に置かれた「便利なペット用端末」でしかなかった。
(俺は……完全に檻の中に閉じ込められたのか……)
逃げ場のない現実を突きつけられ、誰にも助けを求めることもできない完全な孤立。
セーラは電源の落ちた黒いモニターに映る、見知らぬ「美しい女秘書」の姿を見つめながら、デスクの上で膝を抱え、ただ静かに絶望の底へと沈んでいくのだった。
つづく
—
【次回予告】
地下の粗末な食事に限界を迎えていたセーラの肉体。そこにミンチン支社長から差し伸べられたのは、かつての御曹司の舌を狂わせるあまりにも甘い罠だった。
次回
#28 煌めくシャンデリアの高級レストランで堪能する極上のディナー!〜餌付けされていく背徳の晩餐〜
「だめ……//// やめてください。運転手さんが見てるし……っ」
お楽しみに!
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