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#31 「この格好のままで、しない?」〜女装姿のまま交わされる倒錯の誘惑!〜
ミンチン・コーポレーションの地下仮眠室。
セーラはタイトスカートのまま、かつて寝泊まりしていた2段ベッドに身を投げ出し、堂々とサボりを決め込んでいた。
「呆れたね。まさかこんなところでサボっているとは」
入り口に立っていたのは、男物のスーツを完璧に着こなしたラビニアだった。
「せっかく支社長からまともな社員寮をあてがわれたっていうのに、わざわざこんな昔の寝床に戻ってきて昼寝かい?」
「……真面目に働いたって、給料が上がるわけじゃないし。ていうか、そもそも一銭ももらってないしな」
不敵に笑い返し、セーラはゆっくりと上体を起こした。
昼寝でよれたメイクを直すため、セーラは手元のポーチからコンパクトを取り出すと、手慣れた手つきでパフを滑らせ始めた。
その様子をじっと見ていたラビニアが、ふっと鼻で笑った。
「随分と上手くなったな。板についてるじゃないか」
セーラはコンパクトの鏡越しにラビニアを見返し、ルージュを引きながら答える。
「この『女という仮面』は、落ちぶれた俺の素性を隠すにはうってつけさ……」
コンパクトをパチンと閉じ、セーラは言葉を継いだ。
「おかげで今のこのふざけた生活にも、すっかり順応できたってわけだ。その点については、感謝してるよ」
セーラは殊勝な声でそう答えた。
「……珍しいな。お前が感謝とか言って」
毒気を抜かれたようにラビニアが呟く。セーラは何も答えず、ラビニアの顔をしばらくじっと見つめて黙り込んだ。
張り詰めた沈黙。数秒後、その無言の視線に耐えられなくなったラビニアが、ふいっと顔を背けて頬を赤らめた。
「な、なんだよ……」
「ラビニア……今夜、飲みに行かないか?」
突然の誘いに、ラビニアは耳の先まで赤くして声を上ずらせた。
「な、何言ってんだよ……//// 」
動揺を隠すように腕を組み、わざとらしく視線を泳がせる。
「ど、どうせ金なんて持ってないんだろ。お、オレ が奢ってやるよ。たまには面白いしな」
悪態をつきながらも、ラビニアの顔には嬉しさを隠そうとする必死の強がりと照れが浮かんでいた。だが、セーラの瞳の奥には冷たい光が宿っていた。
(……失われたUSBのデータを取り戻すには、懐に飛び込むしかない)
◇
夕刻のオフィスエントランス。
待ち合わせ場所に指定した大理石の柱の陰で、セーラはいつものパンストOL姿で壁に背を預けていた。
そこに、コツ、コツ、と硬いヒールの音を響かせて近づいてくる影——
「おまたせ❤︎」
セーラは我が目を疑った。そこに現れたラビニアは、昼間の男物スーツではなく、完璧なメイクアップとドレスアップを施した「女装姿の彼」だった。流れるようなロングヘアのウィッグに、ボディラインを強調したドレス——
驚愕して言葉を失うセーラに対し、ラビニアは妖艶に微笑んでみせた。
「どう? 合わせた方がいいかなって。ドレスコード、みたいな?」
セーラは小さくため息をついたが、そのまま二人で夜の街へと歩き出した。
セーラが指定したのは、かつてアーメンガードと訪れたことのある大衆的なパブだった。ガヤガヤと騒がしい店内のカウンター席に、場違いなほど着飾った「美女」二人が並んで座る。
「あんた、パブなんて行く人だったっけ? 昔は高級ラウンジしか知らなかったくせに」
安いエールビールのグラスを傾けながら、ラビニアが面白そうにからかう。
「色々変わったんだよ、お互いにな」
セーラは酒を煽りながら、一体どうやってあのUSBの情報を引き出すか、見当もつかずにいた。核心に近づく糸口さえ掴めぬまま、ただただ時間とアルコールだけが消費されていく。
やがて酒が回ってきたのか、ラビニアの様子が少しずつ変わり始めた。熱っぽい視線が、セーラの横顔にねっとりと絡みつく。
「ねえ、セーラ……」
ラビニアは限界まで距離を詰め、セーラの耳元で甘く、そして歪んだ声で囁いた。
「久しぶりに、うち来ない?」
唐突な誘いに、セーラはグラスを傾けたままぴたりと動きを止めた。
「今はもう昔の『俺たち』じゃないよね……『ワタシ(・・・)たち』だよね」
ラビニアの手が、セーラのタイトスカートの太ももにそっと這い上がる。
「……この格好のままで、しない?」
それは、倒錯した未練と執着が入り混じった、狂気じみた誘惑——。かつて自分を支配していた完璧な男が、今は自分と同じように女の格好をして隣にいる。その事実が、ラビニアの歪んだ欲望に火をつけた。
一瞬、セーラの脳裏に「ここでラビニアを再び抱けば、失われたUSBの情報を取り戻せるかもしれない」という冷酷な計算がよぎった。
だが——。
「……触るな」
次の瞬間、セーラは男としての、そして元「頂点」としての絶対的なプライドを爆発させ、ラビニアの手を冷たく撥ね退けた。
「っ……! あんた、何様のつもり……!」
拒絶されたラビニアの顔が屈辱に歪む。
「どうせ一文無しのくせに! 今夜だって、結局ワタシ の奢りになるんでしょ!?」
ラビニアが乱暴に財布を取り出そうとしたその時。
——ドンッ!!!
カウンターに、分厚い札束が激しい音を立てて叩きつけられた。ミンチンから「小遣い」として握らされていた現金だった。
「お前に奢られる理由はない」
セーラは釣りは要らないとばかりに札束を置いたまま、ヒールを翻して一人でパブを飛び出した。
夜のロンドンの冷たい風が、火照った頬を打つ。 失われたUSBデータの手がかりは得られなかった。だが、胸の奥底で燻る「男」としての矜持だけは、誰にも、ラビニアにさえも決して売り渡すつもりはなかった。
つづく
—
【次回予告】
セーラに無残にも拒絶され、プライドを粉々に砕かれたラビニア。怒りと屈辱の矛先として目をつけたのは、情報システム部の居残りインターン、ガートルードだった。完璧にドレスアップした姿のまま連れ込んだホテルのベッドルーム。その妖艶な手つきに翻弄され、純情な青年は抗う術もなく快楽の波に飲み込まれていく。
次回
#32 欲望渦巻くホテルの密室!〜着衣のまま一方的に攻め立てるラビニアと賢者タイムの悪だくみ〜
「目詰まりしてるんでしょ? 今、解消してあげる♡」
お楽しみに!
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