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#33 ラビニアの過去 〜暴かれた情事。オフィスで激しく貪り合ってしまったセーラとラビニア〜

ミンチン・コーポレーションの地下にあるサーバー室は、異常な熱気と低周波の唸り声に包まれていた。 「マ、マジでヤバいですって! このままだとシステムが保たない……!」 けたたましく鳴り響くアラート音の中、モニターの異常な数値を前にガートルードが悲鳴を上げた。試作型量子コンピューターの稼働によって、パスワードの総当たり解析が驚異的なスピードで進む一方で、冷却システムは完全に限界を超えていた。 「うるさい! あと少しなんだから出力を落とすな! 全部回しきれ!」 ラビニアがガートルードの肩を掴んで怒鳴りつけた、その瞬間だった。 バチッ! という鋭い破裂音と共に、サーバーラックの一つから火花が散り、真っ黒な煙が勢いよく噴き出した。 「うわぁっ!?」 「ゲホッ、ゴホッ……! な、なに!?」 あっという間に密室に煙が充満していく。換気システムが追いつかず、有害なガスと熱気がラビニアの肺を焼き、視界が急速に奪われていく。 「ゲホッ……ガートルード、早く……」 ラビニアは逃げようと足を踏み出したが、足元にコードに絡まり、床に崩れ落ちてしまった。酸欠で頭がぐらぐらと揺れ、薄れゆく意識の中で、ガートルードが外へ向かって這い出していく影だけが見えた。 (あぁ……ここで死ぬのか……) ◇ 同じ頃、地下の仮眠室。 パンストOL姿のままのセーラはいつもの仮眠室で不貞寝していると、ふと鼻をつく異臭に目を覚ました。 「……焦げ臭い……?」 廊下に出ると、サーバー室の方向から薄暗い煙が漏れ出している。 セーラが慌てて駆けつけると、ドアの隙間から煙がもうもうと吐き出され、その前でガートルードが激しく咳き込みながらうずくまっていた。 「おい、どうした!? 何があった!」 「ゲホッ、ゲホッ……な、中に、まだラビニアさんが……っ!」 「なんだと!?」 セーラは口元をレースのハンカチで覆うと、躊躇なく黒煙の立ち込めるサーバー室の中へと突っ込んでいった。 「ラビニア! どこだ!」 煙で視界が効かない中、床に倒れ伏しているラビニアの姿を見つける。セーラは邪魔なヒールを脱ぎ捨て、意識を失ったラビニアの肩を担ぐようにして抱え込んだ。 セーラは必死に足を踏ん張り、むせ返りながらも煙の巻く部屋からラビニアを引きずり出すようにして救出する。 「……んん……っ」 朦朧とする意識の中、ラビニアは自分を支える腕の必死な力強さと、微かに鼻を掠めた懐かしい体温に包まれながら、深い闇の中へと落ちていった…… ◇ ——それは、熱にうなされるように見る、決して忘れることのできない「過去の悪夢」だった。 『……っ、セーラ、まずいよ……誰か来るって……』 『いいだろ、鍵はかけた。お前だって、こんなに硬くなってるくせに』 かつて二人が付き合っていた、全盛期のオフィスラブの時代。 勤務時間中の小会議室。ブラインドを下ろした薄暗い室内で、セーラはデスクの上にラビニアを押し倒し、熱く激しいキスを交わしていた。 スーツを乱し、セーラの腕に抱え込まれながら、スリルと背徳感に震えるラビニア。深く突き上げられるたびに、声を殺して快楽に溺れた、狂おしいほどに焦熱の蜜月。セーラとの時間は、ラビニアにとって世界で一番幸せな瞬間だった。 しかし、その幸せは突然終わりを告げた。 『……我が社も舐められたものだ。神聖なオフィスで、不純同性愛行為とはな』 ミンチン支社長の冷酷な声。彼のタブレットに映し出されていたのは、小会議室の監視カメラにバッチリと映り込んだ、二人の情事の映像だった。 血の気が引き、絶望に打ち震えるラビニア。この映像が公になれば、「ダイヤモンド◇プリンス」として頂点にいるセーラのキャリアは完全に終わってしまう。 『お前たち二人とも、懲戒免職だ』 『待ってください……っ!』 ラビニアは咄嗟にミンチンの足元に土下座し、涙をボロボロと流しながら叫んだ。 『セーラは関係ありません! 私が無理やり誘ったんです! 弱みを握って、私が彼に無理やりヤらせたんです! だから、セーラだけは……彼だけは許してやってください……っ!』 愛する男を守るための、決死の嘘だった。 その必死な懇願を冷たく見下ろしながら、ミンチンの口元が歪な弧を描いた。結果として、この一件はセーラに知られることなく処理された。だが、セーラを庇った弱みを握られたラビニアは、そこからミンチンの「愛人(ペット)」としての地獄の契約へと引きずり込まれることになった。 『セーラを守りたいなら、お前は私のペットになれ』 超ドエスであるミンチンの(しつけ)は、異常だった。 ホテルの一室で、ラビニアは四つん這いにされ、恐怖に震えていた。 『言うことを聞かない悪い子には、お仕置きが必要だな』 パーンッ!! 『ああっ!』 ミンチンが振り下ろしたペラペラのスリッパが、ラビニアの無防備なお尻を容赦なく叩き据える。 パーンッ! パーンッ!! 『ひぐっ……ごめんなさい……っ!』 『どうした、もっと鳴け。お前はセーラのために身を売ったのだろう?』 屈辱と痛みに泣き叫びながら、事あるごとにスリッパでお尻をペンペンと叩かれる恐怖の調教。それが、今のラビニアの歪んだ人格と、セーラへの狂おしいほどの執着を形成するトラウマとなっていた。 (セーラ……お前のためなら……っ) ◇ 「……気がつきましたか?」 ハッと目を見開くと、そこは真っ白な天井だった。 消毒液の匂いが漂う会社の医務室。ベッドに横たわるラビニアを、産業医|(メディック)が安堵の表情で見下ろしていた。 「ゲホッ…… ワタシ(・・・)は……」 「サーバー室でボヤがあったんです。あなたは煙を吸って倒れていましたが、命に別状はありませんよ」 ラビニアはゆっくりと身を起こし、薄れる記憶を辿った。 炎と煙の中、確かに自分を抱き起こし、救い出してくれた腕の感触があった。あの必死で頼りがいのある熱は、夢の中で見たセーラの体温と酷似していた様な気がした…… 「痛っ」 「あ、動かないでくださいね。尻もちをついた時に少し火に触れたみたいで、お尻を軽く火傷しているんです。全治一週間ってとこですかね」 「……っ……」 お尻に残る、じんじんと爆ぜるような痛みの感覚。それが引き金だった。 脳裏に、あのミンチンに四つん這いにされ、スリッパでペンペンと叩き据えられた屈辱的な記憶が、フラッシュバックする。 ——ワタシ(・・・)は、あの地獄の調教に耐えたのに……なのに、どうしてセーラはワタシ(・・・)を見てくれない…… どれだけ犠牲になっても報われない絶望は、激しい憤怒へと、そして禍々しい復讐の炎へと変わっていくのだった。 つづく — 【次回予告】 セーラを救おうと焦るロッティーが深夜のオフィスでラビニアのデスクを漁るも、その間抜けな姿は防犯カメラに完全記録されていた。USBの行方は分からぬまま、ロッティーが新たな弱みを握られラビニアの軍門に降るという、今後の展開のための伏線全振り回! 次回 #34 【本編スキップ可】〜ロッティー深夜の空回り自爆とラビニアに新たな弱みを握られるだけの説明回〜 「フフ、わざわざ自分から首輪を嵌めにくるとはね……ありがとう、ロッティーくん」 お楽しみに!

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